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5-15 不思議な山を登る旅③

 司を不意打ちで吹き飛ばしたペンギンのような生き物は、コアラのように司に引っ付いたまま離れなくなってしまった。


 そして、今、司の前には不思議そうな顔をしている宗司と舞、不満そうな顔をしているリリがいた。前者は生き物への興味、後者は司を独占されている嫉妬だろう。


「さすがは司だな。初対面でここまで懐かれるとは……」


「そう言えば、リリも拾った当初から凄い懐いてましたよね。澪の別荘にいたボルゾイたちもそうでしたし。司さんには動物に懐かれる才能があるのでしょうか? とても羨ましいです……」


「むむむむむ……」


 司が身体から離そうとしても離れようとしないし、無理に剥がそうとするとピィィィィィと悲鳴をあげてしがみ付くものだから剥がすに剥がせなくなってしまった。さらに、こんな小さい身体のどこにこんな力があるのかわからないくらいの強さでコアラ状態を維持している。


 司にくっついた引っ付き虫を見て、刻一刻と不機嫌になっていくリリ。その様子を見て、冷や汗が背中をダラダラと滝の様に流れ落ちる司。このままでは非常にマズイ。


「丁度いいから、一旦ここで休憩にしよう。小休止しながら、少し話し合おう。まぁ、司は最悪そのままで行くことになるかもしれん。様子を見る限り、すでに手遅れな気がするしな」


「リリ、こっちへいらっしゃい。あなたもおやつにしましょうね。…………ほらほら、リリはお姉さんなんだから、そんな顔はしないの。ね?」


 舞のナイスリカバリーで少しだけ気分が上向いたリリだったが、司も軽食をとろうと手にナッツを取り出した時、事件は起こった。


 それまでずっとコアラ状態だったペンギン? が目にもとまらぬ速さで司の手からナッツをかすめ取ったのだ。周りが唖然とする中、あっという間にポリポリと咀嚼して飲み込み、ピィピィと喜んだような声をあげたものだから……


「むっかぁぁぁ! あなた! いつまで司さんにくっついている気ですか!?」


 リリが噴火した。


 それからしばらくの間、わふわふぴぃぴぃと2匹にしかわからないようなやり取りをし始めたものだから、司にとっては堪らない。辛うじて、自分の耳を抑えて、リリたちが落ち着くのを耐え忍ぶしかなかったのだった。




 リリたちが落ち着いたのは10分後だった。2匹の話し合いで、何かしらの落としどころが決まったようだが、ペンギン? は司から離れようとはしておらず、コアラ状態のままだ。しかし、リリのほうは、不満はあるものの、当初の怒りは霧散して落ち着いているようだった。


「司さん、おつかれさまです」


 予期せず、2匹の言い合いの渦中に巻き込まれた司はグロッキー状態だった。話している内容がわからないのだから、余計に心労が募ったのだろう。舞の労いにも苦笑で返すくらいの元気しかなかった。


「で、結局どうなったのだ?」


 成り行きを見守っていた宗司も何がどうなったのかがわからない。3人が内容を把握するためには、リリが話してくれるのを待つしかないのだ。


「えーと、この子は、この山に住んでいる鳥さんの子供だそうです」


(はて? この山に鳥なんて住んでいたか? それにこんな面白い姿の鳥ならば、一度見たら忘れるわけがないのだけどな)


 リリがペンギン? と話した内容を説明し始めた。普通ならば、狼と鳥で会話が成立するわけがないのだが、リリにはどんな生物とも意思疎通ができる能力のようなものが備わっている節がある。大樹様やプラちゃんなどは言葉すらなくとも会話が成り立つほどだ。


「何日か前までは母鳥と暮らしていたのですけど、あることで喧嘩して家出したそうです」


 何やら話がきな臭くなってきた。こういう場合、本鳥以外には理解できないような理由で、巻き込まれる側にとっては迷惑極まりないことが多い。


「物心ついた時から母鳥と兄弟たちと暮らしていて、ふとした時に疑問に思ったそうです。何で自分には父鳥がいないのかと。そこで母鳥に尋ねると、父鳥はいないと返ってきたそうです。この子は思いました、そんなバカなと。しかし、不思議なことに兄弟は誰もそれを疑問に思わないし、母鳥もこの子は何を言っているんだろう? みたいな態度だったそうです。自分は何か間違ったことを聞いたのだろうか? 少し悩みましたが、母鳥に聞いてダメなら、父鳥を自分で探すことにしました」


 この時点で嫌な予感しかしない司は、苦笑も消えて完全に真顔だった。そんな司の胸に、ぴゅいぴゅいと嬉しそうに鳴きながら自分の頭部を擦り付けるペンギンのような生き物。まるで自分の匂いをつけようとする猫のマーキングのような行動だった。


「母鳥にそれを伝えたところ、凄く怒られたので、母鳥の目を盗んで家出をすることにしました。しかし、この子にとって巣の外は未知の世界、右も左もわかりません。当てもなく彷徨っていましたが、周りも暗くなり、自分を遠巻きに見ているような怖い気配も感じます。そんな生活を何日か過ごして、ついに来た道も分からなくなり、お腹も空き、歩くのにも疲れて蹲って鳴いていました」


 そして、リリの語る物語はクライマックスへ。既にオチが見えてきた気がするが……

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