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5-6 4人目は誰?

 門の前にいるのは兎神、橙花、蒼花。そこまでは良い、いつもの見送りメンバーだ。しかし、今回は、さらにもう1人、いるはずのない4人目がいた。


「宗司兄、少し遅いですよ。司さん、リリ、おはようございます」


 まさかの舞の登場である。


 前回の遠征同様に特殊服が装備されており、大きなリュックサックが背負われている。いつの間に先回りしていたのだろうか? 何をどう見ても行く気満々である。


 宗司の顔は特に変化が見られない。事前に打ち合わせていたのだろう。兎神たちも同じ、驚いているのは司だけである。リリも一瞬驚いていたが、


「舞さん!」


 素早く舞に飛びつくと、一緒に行けて嬉しいという気持ちを表現した。この辺の切り替えの速さは流石である。


「リリ、今回もよろしくお願いしますね」


「はい! 一緒に頑張りましょう!」


 早速、女性陣だけで結束する1人と1匹。1足す1が2にならないところが女性の強さである。そして、奇しくも男2女2? のバランスの良いチームとなった。


「いやいやいやいや! 舞はダメだろ? 遊びに行くわけじゃないんだぞ? 第一、家には何て言ってきているんだ? まさか、黙ってきているわけじゃないよな?」


「ダメですか? お仕事なのは理解しています。チームリーダーの司さんの指示を守るつもりでいますし。家にはちゃんと話してあります。お母様はお土産をよろしくと言ってました」


 完璧な回答ではあるが、司が今求めていたのはそういう答えではなかった。


「宗司さんも何か言ってくださいよ。知っていたんですか?」


「ん? 私は別に構わんぞ? それに舞と2人のほうが、道中の護衛も野営も楽だからな!」


 宗司は肯定派だった。しかも、考え方が合理的すぎて説得のしようがない。


「司さん……舞さん、行っちゃ、ダメなんですか?」


 リリがうるうるした目で訴えてきた。舞と一緒に行きたいオーラが全身から滲みだしている。さらに、司の援軍のはずの家令3人も何も言わないことから、彼らも肯定なのだろう。もはや、孤立無援状態である。


「はぁ……わかったよ。その代わり、無茶はしないと約束してくれ。もし、舞が怪我とかしたら困るからな」


「私の心配を……してくれているんですよね?」


「当たり前だろう。どこの世界に、好き好んで危ないかもしれないところに女の子を連れて行くやつがいる? 正直、心配で心配で落ち着かない」


「ふふふ」


 舞は司の言葉を聞いて嬉しそうだが、司の心の中は舞とはちょっと違う。司が心配しているのは、もし舞に何かあった時に宗司や凛から何をされるかわからないと思っているからだ。最悪の場合は切腹ものだろう。尤も、舞を見捨てるような思考や行動をするかと言ったら、司は絶対にしないのだけれども。


 司は不安そうな顔をしているが、心の中は悟りの境地である。ただでさえ未知の不安を内包している仕事なのに、まさかの舞の乱入で危険度がうなぎ上りだからだ。逆に考えないようにでもしないとやっていられない。


「兎神、橙花、蒼花、行ってくるよ……」


「「「お気をつけて、行ってらっしゃいませ」」」


 例によって3人に見送られて門を潜る。先ほどまでと打って変わった空気感に、気が引き締まる。何か月ぶりかの別の世界である。



 リリが元の3メートルほどの大きさに戻り、久しぶりの変身を慣らす様に大きく伸びをしてから、ぴょんぴょんとウォーミングアップを始めた。


「さて、移動についてだが、どうせなら司はトレーニングをしながら行こう。私が先導するから、2人はついてくるように。舞は疲れたら言いなさい。私が荷物を持つから、リリちゃんに乗せてもらえばいい」


 宗司がいきなり訳のわからないことを言い出した。約20キロの荷物を担いで耐久マラソンは……いつもやらされている宗司(推定100キロ)を担いで倒れるまで走るよりは難易度が軽いのか? 何か基準がおかしくなっている気がする。


「みんなで競争ですね! 負けません!」


「ははは、お手柔らかにな! リリちゃんに全力出されたら、人間の我々に勝てるわけないからな!」


 リリだけがとても楽しそうである。いや、宗司も楽しそうか。ちなみに司と舞は無表情である。きっと、こんな時までトレーニングしなくてもいいじゃないか、とか思っているに違いない。


「さぁ、行くぞ!」


 リリと宗司が僅かに先行して、それを司と舞が追従する。リリは司たちと久しぶりに全力で駆けっこができてご満悦だ。時々、司たちの近くに来ては、じゃれつくように周りをくるくると走り、嬉しさをアピールしている。可愛いものである。


 ただ、残念なことに、リリを愛でるだけの心の余裕が司たちにはひと欠片もなかった。

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