4-56 とある古狼の休日②
ヴォルフたちのお話はここまでで、次回から司たちに戻ります(*´ω`*)
ヴォルフたちがイソギンチャクのような植物を観察していると、近づいてくる大きな狼に気づいたのか、僅かに震えたと思ったら我先にと逃げ出し始めた。まさに蜘蛛の子散らすである。
「ヴォルフ、どうします? 気づかれたようですが……」
「まぁ、森の中と違って身体を隠すような障害物がまるでないからな……それにしてもこれは食べられるのか? 匂いは……可もなく不可もなくというところだが」
ヴォルフの疑問も尤もである。
「では、試しに一匹捕まえて食べてみますか?」
「いや待て、今少し思ったのだが……プラちゃんに似ていないか? サイズは全く違うのだが、何となく雰囲気が似ている気がする」
「ああ、そう言われればそうですね。しかし、そうなると、アレを捕まえるのは気が引けますね……プラちゃんたちは我々の仲間ですし」
彼らにとっては既にプラちゃんは仲間、大樹様を一緒に護衛する同志である。その仲間の一族かもしれない種を狩るのは気が引ける。
「うむ……娘がいれば、色々とわかるのだが、司と出かけているからな……」
「あー、リリちゃんがいれば話が通じますからね~。我々にはさっぱりですが」
そうこうしている間に、イソギンチャクのような植物たちは逃げていく。とはいっても、移動速度は早くないため、ヴォルフたちが本気で追いかければ、ものの数秒で追いてしまいそうなのだが。
「悩んでいてもしょうがないな、1匹ずつ捕まえて、屋敷に戻ってプラちゃんたちに見せてみよう。そうすればわかるだろう」
「わかりました」
ヴォルフたちはそれぞれ1匹ずつ口に咥えると、もと来た道を戻っていく。しばらくイソギンチャクのような植物はジタバタと暴れるが、逃げられないと悟るとクッタリと諦めたようだ。
「あら? ヴォルフ、随分と戻ってくるのが早かったですね」
屋敷に戻ると、留守番係のルーヴがヴォルフに声をかける。
「ちょっと気になるものを見つけてな、切り上げて戻ってきた。2陣に引き継ぎをして、私たちの後に捜索にでているよ」
そういうヴォルフの近くをチョコチョコと歩くものがいた。先ほど捕まえてきたイソギンチャクのような植物だ。運ばれている時は諦めたようにクッタリとしていたが、どうやら食べられるわけではないことがわかると、恐る恐るだが動き始めたのだ。
「なんか……プラちゃんみたいな植物ですね」
「ルーヴもそう思うか? 私もそう思ったから2匹だけ連れてきた。プラちゃんに見せてみようかと思ってな」
「あなたたち、こっちへいらっしゃい」
ヴォルフとルーヴはチビプラ(仮)たちを大樹様のもとに誘導する。大樹様の側には、いつものようにプラちゃんが3匹、まるで騎士のように侍っていた。もう見慣れた日常の光景だ。
ヴォルフは大樹様に挨拶をすると、プラちゃんたちにチビプラを会わせる。チビプラを見たプラちゃんは枝の1本を細く伸ばして接触すると、そのまましばらく動かなくなった。彼らにしかわからないような交信をしているのだろう。
その後の反応は劇的だった。2匹のチビプラは大樹様の近くまで歩いて行くと、頭を垂れるように傾けて、頭についていたまつぼっくりのような果実を地面にぽとりと落とす。落ちた果実はみるみるうちに土に吸収されてすぐに見えなくなった。
何かの儀式を終えたチビプラたちはその場で土に座り込むと、まったりと過ごし始めた。先ほどの行動は、彼らなりの大樹様に対する挨拶だったのだろうか? プラちゃんの仲間に認められるための行動なのかもしれない。
「よくわからないが、やはりプラちゃんたちに近い種族だったようだな。ここで暮らすなら兎神に伝えておくか」
「ええ、そうですね。何やら嬉しそうな波動が伝わってきますね。どうやら、ここが気に入ったようです」
こうして、司の知らないところでプラントエリアに新たな仲間が追加された。名称は後から相談して決めるのだろうが、このままチビプラと呼ばれそうな気がしないでもない。




