4-52 旅にアクシデントはお約束?③
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リリが見つけてきた物……者? それは、ずんぐりむっくりしたモコモコの何か、だった。しかも、複数匹。見た目は白と茶の毛玉である。
「「食料をわけて頂いて、ありがとうございます」」
「「「「「ありがとー」」」」」
司たちの前で謎の生命体が一斉に頭を下げる。バスケットボールくらいの大きさが2匹、ソフトボールくらいの大きさが5匹。とはいっても、丸い生物のため、頭を下げているらしい? としかわからない。
見つけたリリが言うには、洞穴の中で迷子になっており、食べ物もなく飢えていたそうで、先ほどまでリリのおやつ用に橙花が携帯していたナッツを貪るように食べていた。相当お腹が減っていたようで、500グラム2パックがあっという間に消え去った。
「お腹、いっぱいになりましたか?」
「ええ、とても助かりました。最初、あなたを見た時は、ああ、もう終わりだ……と思いましたけど、まさか助けに来てくれたとは。大変な失礼を」
「それはいいのです。声が聞こえたから、助けるのが当たり前なのです」
そう言いながら、うんうんと頷くリリ。リリは既に子犬の形態に戻っており、バスケットボール毛玉とほぼ同じ大きさだ。それにしても、子犬と毛玉が会話している光景は非常にシュールだ。
急に飛び出していって、謎の毛玉を7つ回収してきたリリ。当事者の話を聞く限り、毛玉は危ないところであり、それを助けたらしいとわかった司は怒るに怒れない。
「リリ……今回は事情が事情だから許すけど、急に飛び出していくから心配したよ。できれば、飛び出していく前に教えてほしい」
「そうですよ、リリが飛び出していった時、司さんの慌てっぷりは見ていられませんでした。次からはちゃんと教えてくださいね?」
「はい……ごめんなさい」
今回こそ怒られはしなかったものの、司や舞の言うこともわかるリリは、2人に窘められてシューンとした。
「私たちのために、申し訳ない……」
リリがシューンとしたら、大小の毛玉も一緒にシューンとなった。なんだろう……この空気は。これでは司のほうがいじめているみたいな構図になってしまっている。
「はい! 反省は終わり! 澪、すまないが屋敷に戻ってくれるか? この毛玉? たちを受け入れる準備をしないといけないから」
「え? ええ、そうですね。妙子婆様、お願いできますか?」
「お、おおう、了解」
澪の頭は既に許容量を超えていた。リリだけなら珍しい狼ということで、まだわかる、いや大きくなったりしゃべったりすることに納得はできないが、そういうものだということにしよう。しかし、この謎の毛玉は何なのか。
「見たこともない生き物? うーん、興味深い……やはり、司の近くにいると退屈しなさそう。……舞、司を私にくれない?」
優は優で変な方向に順応しており、小さいほうの毛玉の1匹を指で突いて観察していた。突かれた毛玉はくすぐったいのかプルプルしている。それにしても、何度も言うが司は物ではない。
港に着くと謎の毛玉を説得して、屋敷までリュックの中に入っていてもらう。ぬいぐるみだと言い張れば何とかなりそうだが、万が一のことを考えての対処だ。
「あれ? 澪お嬢様、お昼はホテルのご予定ではありませんでしたか?」
「ええ、ちょっと急用があったので、一旦戻ってきました」
「ああ、澪、俺たちと舞で詳しいことを聞いておくから、みんなを連れて食事に行ってきてくれよ。俺は家にも連絡しないといけないから、こっちで適当に食べるし」
「いえ、ゲストを差し置いてそういうわけにもいきませんよ~。ホテルのほうには後日行くと連絡しておきますから、屋敷で何か用意をさせます~。優、そういうわけですから今日は我慢してくださいね~」
「仕方なし、楽しみは明日に持ち越し。宗司、決戦は明日」
「ははは、望むところよ! 明日に向けて英気を養わんとな!」
宗司と優はビュッフェに何を求めているのか。いや、フードファイターにしかわからない世界があるのだろう、おそらくきっと。
割り当てられた部屋に戻ってきた司。今部屋にいるメンバーは司、舞、リリ、橙花、蒼花の5人だ。リュックを床に降ろして口を開くと、中から毛玉がぽろぽろと飛び出してくる。
「ぷはぁ、自分で歩けずに、揺ら揺らと運ばれる気分というものは初めてでしたが、奇妙な感覚ですな」
「「「「「おもしろかったー」」」」」
毛玉の癖にどうやって歩くのか、ツッコミどころ満載の親毛玉の発言だが今はスルーだ。子毛玉は面白かったらしい。興奮冷めやらぬ状態なのか、ぽよんぽよんと上下している。
「さて、ここなら話しても問題ない。お前たちは何であそこにいたんだ?」
「そうですな。正直、私たちにも何が何だかわからないのですが、まずは何から話せばいいのか……」
父親と思われる親毛玉が自分たちに起こったことをぽつりぽつりと話し始めた。




