4-47 青葉リゾートでのひと時、3日目③
2017/10/13 固有名詞を修正
司たちがお風呂から上がる頃には、他のメンバーもちらほらと起き出してきていた。とはいっても、リリの散歩終了時点で寝ていたのは詠美、澪、優だけであったのだが。
司がリリを連れて食堂に向かうと、各自が朝食タイムの真っ最中だった。
「ううううう、眠い……なんでこんなにも眠いの……」
「あの時間まで起きていればそうなりますよね~。私も同じなので人の事は言えませんけど~。今日はちょっと眠いです~」
「もぐもぐ。私はいつ寝ても、ご飯の時間になると自動で目が覚める」
3人とも夜更かしをしていたのだろうか。詠美は相変わらず眠そうだ。澪は口では眠いとは言っているがそこまででもなさそうだ。優はご飯の時間になると起きるらしい。犬猫か。
「この2人おかしいよ~。舞~、舞も眠いでしょ? 眠いよね? 眠いって言って!」
「私は、今日は寝坊してしまうくらい寝たので眠くないですね」
「おかしい……同じくらいの時間に寝たのに私だけ睡眠格差が……」
それは体質や習慣の問題だろう。落ち込んでいる詠美は放っておいて良いとして、舞はそれなりに普通の状態に戻ったように見える。
今日も肉マシマシの朝食を息も絶え絶えで食べ終えた司。先に食べ終わったリリが、お肉を羨ましそうに横目で見ていたのもいつも通りの光景であった。
一方、リリの朝食は橙花が栄養バランスとカロリーを緻密に計算して、丹精込めて作った特製ドッグフードとサラダ等。司が食べていたものと比べると圧倒的に手間がかかっているし、高価な逸品である。もちろんだが、味も申し分ない。
「うっぷ……」
「うむ、今日も美味かった。流石だな」
宗司は生き生きとしているが、司はまるでリビングデッドのようだ。お腹が減って死にそうならまだわかるが、食べ過ぎてグロッキーとはこれ如何に。リリもご飯をお腹いっぱい食べて気分が良さそうだ。歩くその後ろ姿はスキップしているように軽やかに見える。
「さて~、今日は妙子婆様が船を出してくれるので、クルージングに出ますよ~。島の北側、私有地の地下にちょっとした観光スポットがあるんですよ~」
「へ~、それは楽しみ! 何があるのかな?」
「それは行ってみてのお楽しみです~(舞ちゃんのためにも、できるだけドラマチックでスリリングな体験が必要ですからね~、情報を妙子婆様の耳にも入れておけばそれとなく行動してくれるでしょう。旅にアクシデントは付き物です~。ぐふふふ)」
澪がだいぶもったいぶっているが、それほどに自信があるのだろう。そして、何か悪巧みでもしているのか、とても悪い顔をしている。
「舞、体調でも悪いのか? 元気ないように見えるぞ」
「え? いつもと特に変わりませんけど……私、そんなに変ですか?」
「まぁ、いつもと違うことは確かだな。体調が悪くないなら問題ないんだけど、何かあったらすぐに言ってくれよ? 舞が元気ないと心配するからな」
「わかりました(私に元気がないと、心配……してくれるんですね。いえいえ、ダメです。自分でも原因が解っていますが、出来る限り、いつもと同じように振る舞わなければ。もう少し時間があれば、心の整理もつきそうですし……)」
司が尋ねてみるが、舞から聞けたのは玉虫色の回答だった。リリも舞の事が心配なのか、足元をウロウロとしている。いつもならピョンと抱っこをしてもらうのに、それすら躊躇しているようだ。
「リリ、おいで」
足元のリリに気づいたのか、舞が呼ぶとすぐにリリは飛びついた。これでやっと構ってもらえると思ったのか、喜びを体現するかのように舞の顔をペロペロと舐める。リリにとっては、舞も大切な家族の1人である。家族に元気がないと心配してしまうのだ。
「あはは、くすぐったいですよ。リリもありがとう」
舞の笑顔が見られるようになって司も安心したようだ。まだちょっと反応が変だが、この状態が特に悪い印象には思えない。それならあとは時間が解決してくれるだろうとでも思ったのだろう。
そして……その様子を遠くから盗み見している存在があった。言わずと知れた宗司である。ストーカーか。舞の笑顔が見られた時点で宗司も安心したように微笑んでいるのだが、絵面的にはとても不気味であった。
「ささ、それでは各自準備をして玄関に集合しましょう~。全員が揃い次第、出発しますよ~。妙子婆様と玄爺は船着き場で合流するそうですので~」
舞と司とリリが戯れている間に、澪は妙子に電話で連絡を取っていたようだ。さて、今日はどういう一日になるのだろうか。




