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4-46 青葉リゾートでのひと時、3日目②

 司がリリの散歩をしている頃、澪たちの部屋では夜更かしした結果なのか、舞が宗司の数時間遅れで起床した。ちなみに詠美、澪、優はまだ寝ていて起きる気配すらない。


「いけません……寝坊しました」


 現在の時刻は6時40分。いつもなら宗司とトレーニングをしている時間のはずだったのだが、目が覚めて時計を確認した舞は盛大にため息をついた。昨日のアレが尾を引いているのか、どことなく元気のない舞である。


「まさか、日課のトレーニングを寝過ごすなんて……後で、宗司兄に謝らないと」


 その宗司はまったく気にしておらず、むしろバカンスをエンジョイしていることを喜んでいるのだが、それを舞が知る由もない。


 寝過ごしたことをいつまでも落ち込んでいてもしょうがないので、舞は身だしなみを整えるべく部屋を出て行った。恐らくお風呂にでも向かったのだろう。


 その様子を薄目を開けて見ていた澪は、部屋の扉が閉まる音を聞くと、再び目を閉じて惰眠を貪るのだった。……また寝るんかい。



 舞が起き出して約20分後、司とリリが散歩を終えて屋敷に帰ってきた。途中で合流した宗司も一緒だ。リリは司に抱っこしてもらっていて、腕の中で少しウトウトしていた。ボルゾイハウスから帰ってくる間、司と宗司が話をしていて暇だったからだろう。散歩に満足したというのもあるが。


「さて、この後は食事だな! その前に私は汗を流してくるが、司はどうする?」


「朝の散歩で汗をかいていますから、俺も一緒に行きますよ。リリは結構縦横無尽に走るんで、ついてくのが大変なんですよ」


「ははは! 元気で結構なことじゃないか! それじゃ行くか」


 お風呂に入ると相談したタイミングでリリがしっかりと覚醒した。司に出会った頃、風雨にさらされてドロドロになった身体をお風呂で洗ってもらってからというもの、リリは司と一緒に入るお風呂が大好きなのだ。そして、温かくて気持ちよかった記憶も強烈に残っている。


 司たちがお風呂に向かうと、丁度舞と鉢合わせた。顔を見るとやや紅葉していて、髪も濡れていることから湯上り直後だということが推測できる。


「おお、妹よ、おはよう!」


「舞、おはよう」


 リリも片足をあげて、わふっとあいさつする。声を出さないのは正解だが、犬を装うつもりなら、人間っぽい行動は控えたほうがいい気もする。それに、ここは澪の別荘なのである。どこで誰が見ているのかわからない。注意をされたし。


「…………おはようございます」


 しかし、舞は司たちの顔をちらりと確認すると、顔を伏せたままあいさつをしてすぐに立ち去ってしまった。やや小走りで去っていく後ろ姿を呆然と見送る2人と1匹。いつものように頭を撫でてもらえると思っていたリリは余計にポカーンとしていた。


「いつもよりもさらに素っ気無い気がする……私は舞に何か怒られることでもしたのだろうか。司は何か心当たりはあるか?」


「あるわけないじゃないですか。確かに、何かいつもと違いましたね。変なものでも食べたんですかね?」


 司……その答えはないだろう。それがあり得るのは優くらいのものである。リリも司たちの話を聞いて舞の反応がいつもと違うことがわかったのか、首を傾げてクエスチョンマークを浮かべていた。とても可愛い。


「まぁ、考えていてもわからんから、風呂に入ってしまおう。司、後で舞にそれとなく聞いておいてくれ。あの状態の舞に私が話しかけると、大体ろくな結果にならないからな。私は原因がわかった段階で対処することにしよう」


「いやいや、何で俺に押し付けるんです? 聞いても教えてくれなかったらどうするんですか? もし……もし仮にですよ? 女の子特有の原因だったらどうするんですか? 聞いたら、超気まずくなるじゃないですか」


「もしそうだとしたら、私が聞いた瞬間にぼこぼこにされるじゃないか! 司が聞けば、舞は許してくれるんじゃないか? ははは! 適材適所というやつだ!」


 ははは、ではない。そして、適材適所の使い方も微妙に違う。


「まぁ、それでも心配なので、それとなく聞いておきますよ。でも、もしかしたら教えてくれないかもしれないので、期待はしないでくださいよ?」


「さすがは司だな! では、風呂に行くか」


 とりあえず、先の問題を棚上げした2人と1匹は朝食前のお風呂に入るのであった。難しい顔をしていた司も、リリがウキウキしてお風呂に向かうのを見て顔を綻ばせた。まぁ、なんとかなるか、今はそんな気分でもいいだろう。

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