4-41 とある夜中のガールズトーク②
詠美の発言で澪と優の視線が舞に集まる。この2人も舞が変なことには気づいていたのだろう。ただ、聞くタイミングを伺っていたように見える。
急に話を振られて、全員から見つめられた舞はキョトンとしていた。何を言われているのかわからない、舞のそんな様子を見て、詠美はため息をついた。
「いや、これはかなり重傷だわ……」
澪は昼の出来事を知っているからか、何が原因かはわかっているようだ。いつものことだが、優は何を考えているのかよくわからない。
「で? 舞は一体どうしちゃったのかな? あんたがそんなに長時間ぼーっとしているなんて絶対におかしいでしょ。昼に何があったのさ?」
「何って、別に何もありませんでしたよ? 飲み物を買いに行った時に、チャラそうな男に私がナンパされたくらいでしょうか?」
「ナ、ナンパ? そ、それで、その男たちどうしたの? まさか……怒り狂って殴り殺して砂浜に埋めたんじゃないよね? 身内から犯罪者でないよね? 大丈夫だよね?」
詠美は自分の友達のことを何だと思っているのか。宗司でもあるまいし、舞がそんなことをするわけがない。まぁ、あの時、リリと司が止めていなければ、2人をボコボコにするくらいはしていそうであったのだが。
「エイミーは私を何だと思っているんですか。そんなこと……しないに決まっているじゃないですか? 私、これまでそんなことしてませんよね?」
「なんで疑問形……そこはきっぱりと否定しようよ……でも、舞ならいつかそれくらいのことをしそうで怖いよ? まぁ、舞を選んでナンパするんだから、相手の自業自得なんだろうけどさ」
「まぁまぁ~今はそんなことよりも、舞ちゃんが何を気にしているのかを聞きましょうよ~。あの舞ちゃんが悩んでいるんですから、よっぽどの事なんだと思いますよ~」
「舞が悩むなんて一大事。解決するには、きっとおいしい食べ物が必要。明日は頑張って魚を取る。宗司には甲殻類を頼もう。これで万事オッケー」
澪以外のコメントが酷い。優に至ってはそもそも思考回路がおかしい。舞という人間はそんなに単純ではないはずだ。きっと、それで解決するのは優だけである。まぁ、気分転換という観点から考えれば、時として正解の1つでもあるのだが。
「それで、ナンパされてどうなったのさ? 舞が告られた相手をボコるのなんて珍しいことじゃないでしょ? それが今の変なテンションになるの? わからないんだけど」
「そうですよね~、この中では、告白される回数が一番多いのは舞ちゃんですからね~。結果としては1人も成就した試しがありませんし、即断るものだから、百人切りの舞なんて言われてるのが面白いんですけど~」
「舞に許嫁ができたってクラスでバラした時に、周りの有象無象がピーチクパーチク囀ってた。告白する勇気もない脇役のくせにうるさいから、授業中に考え事に集中できなかった」
意外にも舞は告白されている回数が多いらしい。いや、優さん、授業中は先生の話を聞きましょうよ。頑張って授業をしている先生が可愛そうです。
確かに、舞の外見はあの母親あの宗司の妹だけあってかなり整っている。凛の面影が強いため、着物を着て黙って座っていれば、大和撫子のようだ。種目は偏るが、運動神経は凄まじく良い。成績は並みだが、決して悪くはない。口は少し悪いが、基本的に澪程の腹黒い部分はないし、男女分け隔てなく接するのもポイントが高い。意外と憧れている男子は多いのかもしれない。
「別に大したことはありませんでしたよ。今回はナンパされたときに、司さんが助けてくれたので、撃退もしていませんし。後から澪も来てくれましたから大事にはなりませんでした」
「うん? 何か面白そうな話の展開になってきたよ? 司さんが助けてくれたの? あれ? それってもしかして、途中で飲み物買いに行った時の話?」
「そうですね~、エイミーが宗司さんとキャッキャウフフで桃色オーラを出していた時ですね~。私は後から連絡もらって向かったんですけど、司さんが舞ちゃんを守ってくれてましたね~。割と格好良かったです~」
「あの時のエイミーは見ていたら胸やけがしそうだった。今でも思い出すと、口から砂糖を吐きそう。司は良いやつ。料理もできる。舞がいらなくなったら、私がもらう」
あの時、あの場所に居なかった詠美は宗司とうまくやっていたようだ。それにしても優がそういうのだからよっぽどの雰囲気だったのだろう。清く正しい読者の皆様のためにも詳しく描写することは差し控えさせて頂こう。
「みんな、私に対して酷くない? で、それでそれで? それだけで舞がこうなっちゃうわけないよね? 他にも、何かあったんでしょ?」
この4人の夜は長そうだ。




