4-40 とある夜中のガールズトーク①
ビーチに戻った3人と1匹は、先ほどのイベントが何事もなかったかのように楽しそうに遊んでいた。詠美たちも舞たちの様子を特に気にすることもなく、バカンスを満喫しているようだった。
澪は顔に出ないタイプだし、リリは舞に撫でられていただけ、舞はちょっと違和感あるもののいつもと変わらないように見える。しかし、問題なのは司だ。もともと隠し事があまりできない性格をしているので、何かの拍子に宗司に伝わると事である。
「はははは! 遅かったではないか! 舞も無事そうだし、司に任せても安心だな!」
「まぁ、俺がやばいと思うのは宗司さんと剛さんくらいですよ」
「そんなことではいかんぞ! 私程度を倒せんようでは舞が守れないじゃないか! これは帰ったら特別メニューだな!」
いつも通り受け答えはしているものの、司は内心で冷や汗ものだった。それよりも特別メニューとはこれ如何に。唯々、恐怖しかないのだが……。
ところ変わって2日目の夜。舞たちの部屋。つまりはガールズトーク真っ最中である。
「それでね、今日は宗司さんと一緒に串焼きを焼いて食べたんだけど、宗司さんって物凄い量を食べるんだね。焼いても焼いても全部美味しそうに食べてくれるから嬉しくなっちゃって、途中からは宗司さんが食べるのを見てるだけになっちゃったよ。何か、口いっぱいに食べ物を詰め込んでいるハムスターを見ている感じ? 楽しかったぁ」
詠美は詠美で宗司と仲良くやっていたようだ。恋愛要素は微塵にも感じられない展開なのだが……本人が楽しければ問題ないのだろう。
「へ~私がいない間に結構いい感じになっていたんですね~。で、エイミーは宗司さんのどこが好きなんですか~? 確かに頼りがいもありますし、お顔の作りも良いんですけど、私にとってはどこまで行っても幼馴染のお兄さんって感じなんですよね~」
「どこがって言われても困るんだけど……」
「私にとって宗司は戦友。同じ釜の飯を食った者同士。そこに恋愛感情はない」
澪にとっては舞の兄以外の何者でもなさそうだ。優は考え方がおかしい。しかし、司と剛にはそれなりの気があるようなので、彼女は彼女なりの基準があるのだろう。残念ながら宗司は対象外のようだが。
澪の問いかけに詠美は真剣に考えているようだ。それにしても、舞はこのガールズトークが始まってから一言も発言していない。一体、どうしてしまったというのか。
「宗司さんの良さって色々あるけど、一番なのは、あの純粋さだと思うんだよね。自分の信念に忠実っていうか、一本気っていうか、どんな時にも真っすぐ前しか見てない。不安なことも、心配なこともあるだろうけど、顔には全く出さなくて、いつも自身満々で、でもそんな様子が見ていて嫌じゃなくて、周りを明るく元気にしてくれる」
「勿論、宗司さんにも大変な時期はあったよね? 当時の私は宗司さんに会えなく辛いって思ってただけだけど、少したってから真実を聞いて、何で私は宗司さんが一番つらかった時に力になれなかったんだろう、何で自分の事しか考えてなかったんだろうって凄く後悔した」
「どんな方法を使ったのかわからないけど、自分で半身不随を克服して……あれからちょっと性格は変わっちゃったけどね。私だったら、そんな状況になったら絶望して何もかも投げ出したかもしれない。でもそんな辛いことがあっても、宗司さんは諦めなかった」
「きっと凄く辛かったと思うし、壮絶な体験をしたんだろうと思う。でも、そんなことは微塵にも出さなくて、いつも真っすぐで純粋な眼差しで。顔つきはもうすっかり大人びて格好良くなったけど、たまに子供みたいな笑顔で笑う。たぶん、そんな姿に憧れて、惹かれたんだと思う」
「宗司さんから見たらみんな同じに見えるのかもしれないのが残念だけど、私の事を女の子扱いしてくれる。それに家族は絶対に守る人でしょ? 頼りがいがあるから一緒に居ると凄く安心できるのもポイントかな?」
澪の何気ない質問から、凄くまともな回答が返ってきた。普段、体育会系であまり深く考えていなさそうな詠美が、宗司の事をここまで真剣に考えていたとは驚きである。てっきり、なんとなくフィーリングが合うから? 程度に感じていた澪には青天の霹靂であっただろう。その証拠に、珍しく口を開けてポカーンとしている。
「エイミーがそこまで考えていたなんて正直言って驚きです~。私、今まで近所のお兄さんに一目ぼれしたんだろうなって思っていました~」
そういうことは、思っていても口に出すなし。
「私は気づいていた。エイミーが宗司の事を真剣に考えていることに」
優は本当に気付いていたのか!? おおよそ恋愛とは真逆にいる人の口から出た言葉とは思えない。きっと何かの間違いだろう。
「で、舞はさっきから何考えてるのさ? あんた、今日の昼くらいからおかしいよ?」
詠美も舞の変化に気づいていたようだ。




