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4-38 青葉リゾートでのひと時、2日目⑦

 リリが走ってきて舞に飛びつく。舞はそれを予想していたかのように、綺麗にリリを胸にキャッチした。リリの行動で、先ほどまで荒んでいた舞の心が少しスッキリしたようだ。


「いきなり何をするのかな? それに用があるのは彼女にであって、君じゃないんだけど? 俺たちに用が無ければ、あっちに行ってくれないかな?」


 金髪1号が地面から復活して宣う。そもそも地面に転がしただけなのだから、復活も何もないのだが。金髪2号のほうはやや嫌な顔をしていた。


「いやいや、こんなに迷惑そうな顔をしているのに無理やりはダメだろ。それに断ってただろ? それなのに連れて行こうとするなんて、ちょっとどうかと思うけどな」


 司の言うことは正論なのだろうが、そんなことを考えている連中がナンパなどするわけがない。こういう輩は、基本的に自分の欲求を満たすことが最優先なのだ。


「ハァ? 俺たちが声をかけてやってるのに嫌がってるわけがないだろ? お前こそ何様だよ。部外者はどけよ」


 少し喧嘩慣れしているのか、司に掴みかかろうとした。そういえば、身体もそれなりに引き締まっている。一般的に、というレベルでだが。


「まぁまぁ、お前たちの事を思って言ってやっているんだ。素直に聞いておけ」


 伸ばしてきた腕を掴んで固定する司。宗司の指導でかなりの筋肉があるので、一度捕まれてしまうと、そう簡単には振りほどけない。


 正直な話、リリにお願いして宥めてもらっているが、舞がいつ爆発して金髪たちを叩きのめすか内心ではヒヤヒヤものだった。仮にそうなったら面倒事は避けられない。司としては意地でもこの2人には穏便にお引き取り願わなければならないのだ。


「腕が……お、おい、離せよ!?」


 ただ掴んで固定しているだけで、別に握りつぶそうというわけでもないのに金髪1号が2号に助けを求める。この時点で、周りの人が何事かと思ってざわざわとし始めていた。


「この野郎!」


 金髪2号が司に向かって殴りかかる。殴っても殴られても面倒くさいことになるのは目に見えているので、2号の腕も掴んで止める。左手で1号を、右手で2号を掴んでいる格好になる。


 1号と2号は片手が空いているので必然的に殴ろうとして来るが……前に来る力を利用して2人をくるりと砂場に前転させる。2回も地面に転がされているほうからしてみれば、おちょくられているとしか思えないだろう。


「お前! 俺が誰か、わかっているのか!?」 


「いや、初対面なんだから知るわけないだろ。バカなのか?」


 金髪1号が怒り心頭で顔を真っ赤にして怒鳴り散らすが、司にそんなことがわかるわけがない。


「お前たち! 何を揉めている!? それ以上やるなら強制退去だぞ!」


 騒動を聞きつけたのか、警備員と思われる格好をした人たちが集まってきた。どうやら、この島で問題を起こした人は強制退去となるようだ。


「おい! 俺は真谷グループの長男だぞ! 突っかかってきたのはアイツだ! 2回も暴力を振るわれたんだぞ!」


 金髪1号がこれ幸いにと出鱈目な主張をし始めた。


「君、本当かね?」


「いえ、私の連れが彼らにナンパされて困っていたので助けただけですよ。正当防衛はしましたが、暴力は振るった覚えがありません。特にケガもしていないでしょう?」


「私が彼らに絡まれたのを助けてくれただけです。何も悪くはありません」


 礼儀正しく、落ち着いた雰囲気で説明する司たちと、怒鳴って喚き散らす金髪たち、どちらに非があるのかは一目瞭然だ。さらにあいつらが悪い、あっちが悪いと外野からも司たちに援護が飛ぶ。しかし、警備員の人たちは困った顔をして、


「よりにもよって、真谷グループか……困ったな」


 真谷グループとやらは有名な企業なのか、警備員の人たちもどう処理をするか悩んでいるようだった。


「舞ちゃんたち、どうかしたんですか~?」


 澪が現れた。


「! 澪お嬢様! まさか……この方たちは、お知り合いですか!?」


 警備員の人たちも真谷グループの長男(笑)という金髪1号も驚愕。流石に、この島の持ち主の家系である澪の顔は周知されているようだった。


「ええ、私が今回ご招待しているVIPの2人です~。まさか、何か問題でもありましたか? もし、VIPに何かあれば警備体制を見直さないといけませんから~」


 澪がVIPを強調して伝えると、警備員たちがものすごく動揺し始めた。顔から冷や汗がダラダラと流れている。


「いえ、その、あちらにいらっしゃる真谷グループの長男様と少し何かあったようで……」


「ふむふむ~、わかりました~。ちょっとお待ちくださいね」


 澪はそう言うとどこかへ電話をし始めた。この時点で、金髪1号と2号の顔は真っ青になって震えているのだが、誰もその様子を気にするものはいない。警備員も皆、自分の事でいっぱいいっぱいなのだ。


 澪が電話をかけて5分後、顎鬚を綺麗に切りそろえたダンディな男が走って現れた。しかし、恰好はサーファーそのものである。顔は般若のような形相でギャップが凄まじい……。


「この…………バカ者がぁぁぁ!!!」


 そして、周囲の空間が震えるような怒鳴り声と共に鉄拳が振り下ろされた。

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