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4-36 青葉リゾートでのひと時、2日目⑤

2017/10/13 固有名詞を修正

 宗司と優が海から上がってきた。その姿はまさに歴戦の勇者。2人の手には海女さんが収穫を入れるネットのようなものが携えられていた。中にはサザエやアワビのような海産物が詰め込まれているようだ。


「なかなか豊かな漁場だったな、次は魚やエビを取りに行くか」


「とりあえず、昼はこれで妥協する。しかし、止まっているものを取るのは易し過ぎる」


 普通に海水浴しに来たのに、いつの間にか漁をすることが目的になっていた2人。まぁ、本人たちが楽しければいいのだろう。まさか素潜りで取りに行くとは思わなかったのだが……。


「これはまた随分と取ってきたねぇ、今から昼の準備をするから楽しみにしてな」


「お前さんたち大したもんじゃい。これだけ取れれば、いつでも漁師に就職できるぞい」


 玄次郎と妙子が宗司たちの収穫物を見て、しきりに感心していた。それにしても、優の食への探求心は恐るべきものがある。それに、宗司が合わさると、もはや手が付けられない。



 妙子が玄次郎に指示を出し、コテージの近くに手慣れた手つきでバーベキューセットを組み立てていく。網焼き用の網が3枚、石を竈状に組んで鉄板が2枚、下が砂に近い土なので火事の心配もない。


 セットが終わると玄次郎が炭に火の準備を始めた。いつの時代もこういう過酷な仕事は男の役目だ。妙子婆はコテージ内で食材の下準備のようだ。橙花と蒼花も手伝いに行った。仕事柄、手伝わずにはいられないのだろう。


 作業中の玄次郎の横顔はいつもの好々爺ではなく、真剣で厳つい職人の顔だった。そして、ものの30分で5か所に煌々と炭の赤が瞬く。凄く手際が良い。いつもこうなら格好いいのだが、ダメな時とのギャップがすさまじいのが残念である。それも含めて玄次郎の魅力なのかもしれないのだが。



 その隣で不可解な行動をしたのは宗司だ。宗司はなぜか子供用のビニールプールを取り出すと、自慢の肺活量で膨らませ始めた。いったい何をするつもりなのか……。


 膨らませ作業は一瞬で終わり、今度はプールに海水を満たしていく。海までバケツ両手に一人バケツリレーを行うと、これまたあっという間に海水のプールが出来上がった。これはまさか……。


 宗司が優に合図を送ると、優が先ほど取れた収穫物を浅瀬から引き揚げて、プールに放つ。食のためならここまでするか……まさかの簡易生け簀である。電池式のブクブクまで用意して設置している周到さだった。一通りの作業を終え、宗司と優は非常に満足そうな顔をしていた。



 リリが、プールの中に佇む貝類を不思議そうな顔で見つめていた。ビニールプールの縁に顎と前足を載せてのぞき込むような格好になっているリリはとても愛らしい。自分が見たこともない生物に興味深々なのか、しっぽがやや小刻みにパタパタと揺れている。


「本格的ですね、まさか生け簀まで準備してるとは誰も思いませんよ」


「やるからにはトコトンやらんとな! 本当は魚やエビも生け捕りしてくるつもりだったのだがな! 数を確保するのを優先したから、今回は時間的に無理だった!」


「明日は魚を釣る。止まっている的を撃つのは簡単すぎ」


 この2人は海に何を求めているのか。もはや漁師といっても過言ではない。


「うわ~、凄い数だね! でも、これ誰が捌くの? やり方わからないよ。優はわかる?」


「問題ない。私が調べてこないわけがない。任せろ」


 凄まじく男前なセリフで優が無い胸を張る。見た目は明らかに小学生だが、中身は別物である。頼もしい。


「嬢ちゃん、大丈夫じゃわい、儂が教えてやろう。こんなの目をつぶっていたって捌けるわい。生きが良いうちに手早くやるのがコツじゃぞ」


 珍しく玄次郎が年の功を発揮した。自称、海の男の面目躍如である。



 妙子たちがコテージから食材を運んできた。どうやら下準備が終わったようだ。


 カットされた野菜、きのこ、肉、串焼きなど、バーベキューでは定番の食材だが、外で集まってワイワイ焼いて食べると特別なことがなくても美味しいものである。


「肉と串焼きには下味がついてるから、焼いたらそのまま食べれるよ! あと、ワンちゃん用に塩なしの肉もあるから、そっちを焼いてあげておくれ。さぁ、爺、焼くよ!」


「イエッサー! マム! 玄次郎、肉を焼かせて頂きます!」


 玄爺が背筋を伸ばして敬礼する。どこの軍隊か。


 思い思いに自分の食べたいものを網に乗せて焼いていく。優が早速、サザエとアワビで網を1枚占有したようだ。鉄板は妙子と玄次郎が1枚ずつ担当。どうやらステーキなどの鉄板料理を作るようだ。


 先ほどまで生け簀プールを見ていたはずのリリがいつの間にか司の足元にやってきていた。ウズウズ、ウロウロ、肉の焼ける匂いにつられて待ちきれなくなったようだ。

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