4-31 青葉リゾートでのひと時、1日目③
青葉家で夕食を頂いてから、一行は広間に集まって雑談を楽しむ。
「え~~~!? 姿を見かけないと思ったら、舞たちだけでボルゾイの赤ちゃん見に行ってたの!? ずるいずるい!」
「我々は仲間ではないのか、我々は裏切られたのか、ワレワレハーワレワレハー」
「優、そんな棒読みで言われても……まだ生まれたばかりだったので~、あまりたくさんの人には会わせられなかったんです~。母犬が警戒しますから~。でも、司さんとリリちゃんだけ誘うと、舞ちゃんに失礼かと思ったので~、4人で行ったんですよ~」
「う~、ならしょうがないかぁ。はぁ、子犬みたかったなぁ……舞、どうだった? 可愛かった?」
「3匹とも可愛かったですね。まだ足腰もしっかり成長していないようでヨチヨチ歩きで、リリを頑張って追っかけている姿は微笑ましかったです。大型種だけあって手足はもう結構大きいですけど、顔はまだあどけなくて、円らな瞳がぱっちりでしたね」
「散歩の時とか会うのは成犬ばかりで、子犬に会ったのは初めてだったけど、リリはちゃんとお姉さんらしく相手してくれたし、子犬たちもすぐリリの友達になってくれて嬉しいよ。でも、まさか力尽きるまで追いかけっこするとは思わなかったけどな」
あの時の光景を思い浮かべているのか、司が苦笑している。リリは夕ご飯を食べて既におねむタイムに突入しており、司の膝の上でくるりと丸くなって目を閉じている。耳だけちゃんと立っており、こちらの話を聞いているようだったけれど。
「うううう、いいなぁ。うちも犬飼いたいんだけど、父さんがアレルギーだから無理なんだ。せめて可愛い姿を見て満足するしかないのが辛い……」
「うちは猫飼ってる」
「へぇ、優は猫派なんですね」
詠美の話を聞いたリリが、司の膝の上からもぞもぞと動き出して、ぴょいんとジャンプして詠美の膝に移動する。なんという空気の読めるワンコなのか。いや、厳密には犬ではないのだが、それを知っているのは司たちだけである。
「わわわ、リリちゃん……撫でさせてくれるの? ありがとう」
今までしょんぼりしていた詠美の顔が、ぱぁぁぁっと明るくなった。リリのナイスフォローである。
「わぁ、フワフワのモフモフ~。毛並みツヤツヤしてるね。毎日ブラッシングしてもらってるのかな? それにしても、リリちゃんって何の犬種なのかな……見たことないよね。可愛いから別にいいんだけどさ」
「ふむ……うん? むう? 無念、私の記憶にもない」
リリは眠いにも関わらず、嫌な顔ひとつせずに詠美に撫でられている。優はリリの犬種を確認しようとしたが、わからなかったようだ。当たり前である、リリは地球外生命体なのだから種類がわかるわけがないのだ。
「そ、それよりも明日は何をするんだ?」
「そ、そそそ、そうですね。何をしましょうかね? 澪?」
そして、すごく焦る司と舞、わざとらしく会話の内容を変えようと試みる。優は頭が良いから少しのきっかけで真実に行きつきかねない。内心はヒヤヒヤものである。しかし、2人とも大根役者がすぎる……客観的に見たら怪しさ満載としか思えない。
「? そうですね~、明日は妙子婆様が食事を用意してくれるみたいなので、昼はビーチでバーベキューをします~。なので、気温が高ければ午前は海水浴しませんか~? 午後はまた海水浴か、シュノーケリングをしましょ~」
「じゃ、この後、水着のチェックですかね? そういえば、確認しませんでしたけど、優は水着持ってきたんですか?」
「私、日光を浴びると灰になる」
「あなたはどこのヴァンパイアですか、意味がわかりませんよ。エイミーは……後で回収しましょうか、たぶん大丈夫でしょう」
詠美はリリを撫でながら夢の世界に旅立っていた。幸せそうな顔をしているので、きっと自分の家で犬を飼っているイメージを膨らませているのだろう。妄想ともいうが。
「優ちゃんは水着持ってきてなくても、うちで用意しますから問題ないですよ~。というか、仮にもリゾートなんですから、水着は色々なものを売ってます~」
「ちっ、わざと忘れたのに意味がなかった」
海に遊びにきて水着をわざと忘れてくる優は一体何を考えているのか……。
「優ちゃん、海には美味しいものがたくさんいますよ? 自分で取ったら、お昼のバーベキューで食べ放題ですよ? 釣り竿でも銛でも貸しますし、自由にやってもいいのですよ?」
「シャキーン! 宗司と相談してくる。ふははは」
あっという間に優が消えていった。言うように宗司と話に言ったのだろう。2人が本気を出したら漁になりそうな気がする。海産資源が枯渇しないことを祈るばかりである。
「澪は、優の使い方がうまいですね~」
「まぁ、付き合いが長いですから~。それよりも……」
こうして一行のバカンス1日目の夜は静かに更けていくのだった。




