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4-30 青葉リゾートでのひと時、1日目②

 部屋に荷物を置いて、広間に集まり、お茶を飲んで休憩した後、先ほど澪に声をかけられた司と舞とリリは、澪に連れられて移動していた。


「澪、どこへ行くんです? しかも、私たちだけでなんて」


「まだ秘密です~。行けばすぐわかりますよ~」


 随分ともったいぶるからとても気になる……。



 別荘から外に出て、歩くことしばし、ログハウスが見えてきた。どうやら目的地はあそこのようだ。近づくにつれて、リリの耳がぴくぴくと反応している。


「ここはさっきのボルゾイたちのお家です~」


 ログハウスには人間用の扉のほかに犬が通り抜けれるように透明の防塵シートで覆われた犬穴が開いていた。ボルゾイたちは普段ここから出入りをするようだ。


 澪が扉を開けて中に入る。司、舞、リリも後に続く。


 ログハウスの中にはボルゾイたちが5匹ほど、家に入ってきたモノたちを見つめていたが、それが澪だとわかると一斉にくつろぎだした。


「へ~、賢い子たちだな。全部で5匹なのか? あれ? でもリーダーっぽいやつが見当たらないな」


「この部屋には5匹ですけど、隣にもう少しいるはずです~。そっちを見に来たんです~」


 澪と隣の部屋に向かうと、入ってすぐのところにリーダーがいた。そして、部屋の奥にいたのは……


「わぁ~、子犬がいますよ! 澪、あれボルゾイの子犬ですよね?」


 声は弾んでいるが、相手をびっくりさせないように小声で話す舞。


 奥にいたのはリーダーの番と思われる母犬。そして、母犬にじゃれつく3匹の子犬。サイズはリリよりも少し小さいくらい。まだ生まれて1か月くらいだろうか。手足の長さはさすが大型種のボルゾイだが、まだ身体が丸々としていて可愛らしい。


「少し子供を見せてくださいね~」


 澪が声をかけると、リーダーがノシノシと番のほうへ案内してくれた。


 近づいてくる気配を感じたのか、子犬たちは一瞬びくっとなったが、自分の父親がいることで安心したようで、また母犬にじゃれつき始めた。母犬は全く動じていない、落ち着いたものだ。


「かわいいでしょう~、先月ちょうど生まれたんですよ~。本当は見せる予定がなかったんですけど、リリちゃんが仲良くしているのを見て、会わせてみようかな~って」


「澪ちゃん、ありがとな。ほら、リリ、このボルゾイたちの子供だってさ」


 リリは、ほぼ常に自分より大きい動物と触れ合ってきた。それが今回に限っては逆。初めて見る自分よりも小さい生き物。近づくのすらおっかなびっくりだったのもしょうがないことだろう。近づいていいのか悪いのか踏ん切りがつかず、1メートル手前くらいでオロオロしていた。


「こんなにビクビクしているリリを初めてみたな……」


「しょうがなくありません? リリだってまだ子供ですし、それにこんなに小さな子犬と触れ合うこと自体が初めてでしょうし」


「確かに散歩するときも会うのは成犬だったからなぁ、あとはもっとデカいやつとか」


 リリは意を決したのか、少しずつにじり寄っていくと、ふんふんと子犬たちの匂いを嗅ぎ始めた。子犬たちも初めて見る、自分と同じくらいの生物に興味津々だ。ボルゾイの番は子供たちとリリの交流を見守っていた。


 一通り匂いの確認が終わったのか、リリが挨拶代わりにペロリと舐めたのを皮切りに、子犬たちがリリにじゃれついてきた。同じくらいの毛玉にもみくちゃにされて舐められたり、甘噛みされたり、のしかかられたりと随分と激しい。


 わんわんきゃんきゃんと子供らしい触れ合いを微笑ましく感じる。


「やっぱり~、リリちゃんとは相性よさそうですね~。この子たちもまったく怯えませんし、すぐに仲良くなっちゃいました~」


 リリが堪らなくなって逃げようとすると3匹の子犬たちがヨロヨロと追いかける。どうやらまだ足腰は十分に育っていないようだが、一生懸命に追いつこうとしている。リリもそれがわかっているのか無理に距離を取ったりせず、追いつかれてはもみくちゃに、逃げて追いつかれてはもみくちゃにを繰り返していた。実に面倒見のいいお姉さんである。


 そんなことを10分ほど続けていたら、子犬たちは遊び疲れてしまったのか、その場で電池切れになって寝始めてしまった。それを見た母犬は1匹ずつ子犬を銜えると寝床に戻して、自分もすぐそばに横になった。


「いや~、いいものを見させてもらいました~。司さん、時々でかまいませんので、リリちゃんを連れてたまにここへ遊びに来ていただけますか~?」


「? もちろん、それくらいはいいぞ。リリの朝の散歩ついでによればいいだけだしな」


「旅行中なのに、ありがとうございます~」


 リリも少し疲れたのか、司の足元に帰ってきて身体を擦り付ける。これは、リリが甘えたくなった時にする仕草で抱っこして~という合図だ。すぐに気づいて司がリリを抱き上げると、満足そうにくるりと丸くなった。


「リリ、偉かったな、さすがお姉さんだ」


 司が褒めると、リリは照れたのか、腕の中でしばらくもぞもぞとしていた。


「う~ん、これを見ると、私も犬を飼いたくなっちゃいますね~」


「もし舞ちゃんが飼う気があれば、言ってくれればボルゾイの子供を譲りますよ~」


「そう? 今度、お母様に相談してみようかな」


 舞は割と真剣に考えているようだった。

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