本当は怖くない逆ハー童話
シンデレラのパロディです。※ただし子供向けに改編された方。
シーン飛び飛び、セリフのみ、キャラ崩壊注意。
~屋敷内広間~
「ぐうぅ……何が悲しくてこんなビラビラのドレスなんぞ」
「我慢なさっテ、ヤンお姉様。
ホラ、ガニ股はみっとモなくてヨ」
「逆にピ・グーちゃんは何かに目覚めてしまったようざます」
「ゼニスお母様だっテ、天辺ハゲに縦ロールだナんて斬新ですワ」
「やるからには中途半端はよろしくないと思ってのことざます」
「楽しそうでいいなお前らッ!
おら早くイッカ……じゃない、イチデレラのとこに行くぞ!
こんな茶番、さっさと終わらせてやるっ」
「長女が反抗期のようざます」
「キっと更年期障害を患っていラっしゃるのヨ」
「まだそんな齢じゃねぇわ!」
~屋敷内廊下~
「ああーっ! 出たわね!
よってたかって一人を弄る、嫉妬戦隊カマレンジャー!
ムキマッチョレッド!
ハゲチャビンブルー!
ブッヒィィグリーン!」
「初っ端から主人公のイメージをブチ壊すなッ!」
「ヤンお姉様に言えタ台詞じゃアりませんワ」
「ところで、イチデレラ。
イジメる……とは具体的に何をすれば良いのざます?」
「え? そうねぇ。
おい、ビッチ。ドレス新調したんだけどこれに合うアクセ欲しいからお前ちょっと体で稼いで来いよ、得意だろ?
とかそんな感じかなぁ」
「この義妹、怖ぁ!」
「イチデレラ。ソれはイジメの範囲を大キく超えた虐待とイう名の何かではなくテ?」
「取り返しがつかなくなるざます」
「うーん、じゃあ無難に……。
掃除させといてこれみよがしに窓の桟を指で拭って埃つけて、掃除もろくに出来ないなんてこの娘どういう躾けを受けてきたのかしら恥ずかしい!
とかそういう方向で?」
「それではただの嫁姑戦争ざます」
「でも、さっきのよりは随分マシだぞ」
「マた変なこトを言い出さない内にコの辺で手を打ちましょウ」
~屋敷内玄関~
「イチデレラ。
私達はお城の舞踏会に行って来るざます。留守番を頼んだざます」
「オーキードーキー!
家中に罠をしかけて泥棒の脳天に火炎放射を喰らわせてやるわ!」
「この義妹、怖ぁ!
いや、その前に俺は行きたくないと何度も!」
「観念なサいナ、ヤンお姉様。
ホラ、パフスリーブがマッチョ感を増幅させテいてトても素敵デしてヨ」
「ウルサい褒めてるつもりかッ!
大体、お前も何だ!
肩の大きく開いた谷間チラ見せドレスだとか気持ち悪いんだよ!!」
「まったくとんだ悪辣わがまま娘ざます。
これ以上グダグダ言うようならピ・グーちゃんにお姫様抱っこしてもらって無理やり連行するざますよ!」
「●REC!」
「おいイチデレラ何か知らんが止めろ!
あーもぉ、分かった行くよ!
行けばいいんだろうがチクショウ!」
「お姉様がヤケクソにオなリですワ。
さテ、では無事に話もツいたところデ出発イたしましょウ」
「いってらっしゃいませ、お義母様、お義姉様ー」
~屋敷内イチデレラ自室~
「やっと行ったか………………よし。
魔女フェロモニー、そこにいるのは分かってるのよ!
大人しく出てこないと、実体化した肉体を貪るぞ!」
「それはイヤァーーーッ!」
「はい捕獲!」
「ひぃぃぃ! 一瞬にして高手小手縛り!」
「良い子は真似しないでね!」
「成人未満と純真な魂の持ち主は検索禁止も追加で!
ていうか、魔女相手に何してくれてるのよ!
後で酷いんだからね!」
「くっくっく。
この童話四天王が一人イチデレラ様の主人公補正に敵うとでも思っているのかね?」
「もーヤダこの女ーッ! 勝手な設定作り・ダメ・絶対!
これだから二次創作は嫌いなのよぉーッ!」
「それは薄い本のことか……薄い本のことかぁああああああ!」
「話が進まないから止めて!」
「そうね」
「よし! 魔女の次はネズミよ!
我が忠実なるフレンドにして、この世の全てを貪り喰らいし悪食の王。
今こそ我の求めに応え、混沌と共に闇より出でよ!
サモン、タマチュウ!!」
「うむ」
「タマチュウ普通に歩いてドアから入ってきたぁーッ!
えーっ、あの悪魔召喚みたいな演出は何だったの!?」
「さぁ、タマチュウ。今です!」
「呼ばれて飛び出てチュチュチュチュー。
タマチュウ元気でチュウ」
「こらぁーーっ!
なんつー仕込みしてんのよ、このバカデレラ!
アンタこの小説丸ごと抹消されたいわけ!?」
「思い付いたからやった。今は反省している」
「嘘だッ!」
「まぁ、そんなことは良いから魔女様。
早く不思議な力でスーパーガールに変身させて下さいな」
「魔女のお手並み拝見チュウ」
「きぃぃ、ふんぞり返ってんじゃないわよ憎たらしい!
ていうか、縄ほどいてよっ!」
「で、女神さ……じゃなかった魔女様。
これ何ですか」
「ミニチュア空中元素変異固定装置。
これを身に付けて変身後の姿を思い浮かべるだけでアラ不思議って代物よ。
で、注意なんだけど……そんなに充電保たないから0時の鐘が鳴り終わる前には帰ってきた方が良いわよ」
「まさかの充電式……っ」
「魔女よ、我の分は無いでチュウ?」
「アンタは自力でどうとでもなるでしょうが」
「落胆でチュウ。これが噂に聞く人種差別というヤツでチュウ」
「あーっ、ヒードいんだ! ヒドいんだーっ!
上ー司に言ってやろーっ!」
「小学生みたいに囃し立てないでよ!」
「ゲージマックス!
イチデレラ、スーパーメタモルフォーっゼ!」
「第二形態突入でチュウ」
「って、ちょっと待ったぁ!
何その蛍光ピンクの特攻服とアホみたいに尖ったグラサンは!?
しかも、背中の御意見無用と袖の貴腐人上等の刺繍が半端なくダサいわ!
アンタ城に何しに行くか分かってんの!?」
「王子の心臓を奪いに」
「それまさか物理じゃないでしょうね!?」
「ははっ、面白いことをおっしゃる。
ガチのブッ込みん時は戦闘服着用と書いてドレスアップと読むんですよ、常識でしょう」
「そんな常識は世界中どこを探しても存在しない!」
「やだ、この人頭固い」
「って、ひぃぃ!
いつの間にか白馬に変身終了してるタマまでバッチリがっつりデコられてるぅぅ!
で、電飾熱くないの!?」
「問題ないウマ」
「語尾!」
「しゃあ! とにかく、準備完了!
城へ一直線よ!
首洗って待っちゃりゃあ王子様あああ!」
「ひひーんウマ」
「ちょっ、バカぁ!
なんで直接馬に跨がっちゃってるの!?
せっかく用意したカボチャが……いや、だから待ッこらぁーーッ!」
「ぱからっぱからっウマ」
「でーでーでーん、でででででで、でーんでっででーん♪」
「暴れる気満々!?」
~王城上空~
「ききーっウマ」
「っかぁー、迷った迷ったぁ!
まさかお城がヘビースモーカーズフォレストの真下にありやがるとは、さしもの私でも予想の範囲外!
出来松博士の論文を読んでいなければ即死だったわ!
時間も結構経っちゃってるし、こっからは巻きで行くわよタマちゃん!
レッツラゴー!」
「そぉーらぁーをぉー駆ぁける白ぅ馬ぁーーウマ」
~王城城内舞踏会会場~
「ぱらりらぱらりらーウマ」
「ッらぁああ! 王子っつーのはどこのどいつ様じゃああ!
魂ぁよこしやがれぇ!」
「ブッ! 何だあの場違いな人間は」
「舞踏会と武道会を間違えテでもいるんじゃアりませンの?」
「何にせよ、あんなおかしな女すぐ警備の者に追い出されるざます」
「次期王国ヘぇーーッド!
いるのは分かってんだ!
正々堂々タイマン来いやぁーッ!
こちとら童話姫組ヘッドじゃあああ!
相手にとって不足はねぇゼぇーーッ!」
「そもそも何で王宮内に入れたんだあの不審者」
「一部の参加者が委縮しテいるワ。
モしや、今が王子様ゲットのチャンス?」
「しかし、あの娘どこかで見た様な気もするざますね……」
「おらぁ、どうしたどうしたぁーッ!
ビビッてんのかコラぁあ!」
「あのっ! お、お待ち下さい!」
「あぁん、誰だぁ?」
「僕が……僕が王子のユーリウスですっ」
「うほっ。な、なんて可憐な王子様」
「あぁ、ワイルドな人。
僕は一目で貴女に夢中になってしまいました。
どうか、この卑しい僕めに貴女様と最初にダンスを踊る栄誉をお与えください」
「喜んで……ポッ」
『ウッソぉぉおおおん!?』
~城下町貴族街~
「……ゆえに、我はこの鉄板仕込みのカカトの潰れたローファーの持ち主である乙女を捜索している。
我こそはという者あらば、近くば寄って履いてみよ」
「話の仕様上しょうがないこととは言え面倒臭いな。
あー、じゃあまず俺から……」
「チェンジ。
履かせるまでもない、珍種黒毛ビッグフットは大人しく雪山に帰るが良い」
「おい! この使者クソだぞ!」
「まぁまぁ、ヤンちゃん。落ち着くざます。
では、次はこの私が挑戦するざます。いそいそ」
「お待ちクださイ、ゼニスお母様」
「あら、なんざましょ」
「スでに娘を二人も産んデいるバかりか、現在進行形でお義父様の妻でアるお母様が、王子の妃としテ名乗りを上げルなど、ドう考えてモおかしイのではナくテ?
年齢を考えテも、コこは弁えルべきダと思うのデすが?」
「うひぃ!
ぴ、ピ・グーちゃんが、友人が次々に片付いていく中なぜか一人取り残されて大焦りで婚活するけれど逆にギラギラしすぎで男性に引かれてしまい結局またロンリーな肉食三十路干物女の目をしているざます!
恐ろしい……一体どれだけ役に入り込んでいるというのざますか!」
「お母様、あとで本家童話の方の次女に謝っとけよ」
「クっ! なんテ小さな靴ナの!?」
「まぁ、俺たちからすりゃ女の靴が小さいのは当然なんだがな」
「不合格。……老女よ、屋敷の女はこれで全部か」
「老女とは失敬な。私はまだまだ現役ざます」
「聞きたかないわ、そんな話」
「オ、オりませんワ!
我が家にハもう女はオりません!
早ク! 早クお帰りにナって!」
「む、不審な。よもや誰ぞ隠しているのでは……?」
「イえ、マさかそんナっ」
「待って!
私にも……私にもその靴を履かせて下さいッ!」
「げえっ、イチデレラ!」
「銅鑼も鳴っていないのに出てくるんじゃないざます!」
「なんだ、まだいるのではないか。
さぁ、娘。靴を履け」
「はいっ!」
「止めルんダッ!
イチデレラにソの靴を履かせルなーーーッ!」
「いいや! 限界だ! 履くね!」
スポォオオッ
「なんとピッタリ。
この者こそ王子の探し求めていた乙女に違いない」
「ふはーっははは! 正義は勝つ!」
「そ、そンな! ソんナ!
ヤッダーバァアァァァァアアアアッ!」
「……なぁ、もう帰っていいか」
「あとは魔女の人のナレーションで終わりざます。
もう少しの辛抱ざます」
「えっ、私!?
ナレーションとか聞いてないんですけど!!
あ、え、と、とりあえず、あの、普通でいいのよね?
えー、おほんっ」
こうしてイチデレラは王子様と結婚し、末永く幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。
「ちょっ、ちょっと待って下さいっ。
ラストの結婚シーンまで省かれちゃうと、僕の出番があんまりにも少な……」
めでたし、めでたし。
「あぁっ……」
「ドンマイ」
「ざます」




