地竜
この後、エドワード達はオークを協力して倒した後、小休憩とばかりにその場に座り込む。
オルファはというと、倒したオークを回収して回る。
オークは皮も使えるし、肉はとても美味しいので需要が高いため、良い値段で売れるのだ。
護衛達には良い小遣いになる。
だが、何かオカシイ。
ゴブリンやオークがあれだけ暴れようが、オルファの魔法が炸裂しようが、森なのだから何か生き物が居るはずなのに、何も居ないのだ。
そう、鳥の鳴き声が聞こえないどころか、蜘蛛の巣に蜘蛛がいない。
「前にもこんな事あったっけ? あの時、何があったっけ?」
そう呟きつつ首を捻りながら、エドワード達のところに戻ってきたオルファに、
「オルファ殿、どうかされましたか?」
護衛達の指揮官である、ダニーが聞いてくる。
中年に差し掛かる年齢だろうと思われるが、その分経験が豊富そうな、大柄な男である。
「ああ、ダニー殿。いえね、森が静かすぎるんですよ。倒したゴブリンやオーク以外の生き物を見ないんですよ。虫さえも」
と言ったオルファに、
「え? 虫すらも?」
と声を裏返して聞き返したダニー。
「そうなんてすよ。普通なら蜘蛛や鳥くらい居るでしょう? 蜘蛛の巣に蜘蛛が居ないんですよね。」
「もしやゴブリンやオークは我々に向かって来ていたのではなく、逃げて来ていた?」
「可能性が無くはないのですが、それほどの大物がこの森に居ますかね?」
「私の父親が昔この森で、小さな地竜を見たと言っていたのですが、もう30年も前ですし」
「30年前からなら、まだ居る可能性はありますね……」
「オルファ殿、何が嫌な予感がするのですが」
ダニーの顔が、若干青くなる。
「奇遇ですね。ダニーさんの話を聞いて、私も思い出したことがあるですよ。国にいた頃、戦闘中に森林戦になったことがありましてね。ついでに食糧でも狩ろうとおもったのに、何も生き物が居なかったんですよ。一匹を除いて。他の生き物はその一匹に怯えて逃げてたんですよね」
「その一匹とは?」
「地竜でしたね。それも大型化した地竜でしてね。数十年に一度、地竜が脱皮する前に、イライラして手当たり次第に生き物に攻撃することがあるんだと、団長に聞かされたんですよ。その時の鳴き声には特徴がありましてね……」
GYAUOOUOMz!!!!
「そうそう、あんな声だったで……す?」
鳴き声の方に振り向いたオルファとダニー。
それなりに太い木に体を擦り付けながら、ゆっくり歩く物体が。
「でででっ、でたああっ!」
ダニーが驚愕の声を発し、
「ダニーさん、全員連れて避難を! アイツは私が押さえますから!」
とオルファが告げる。
「オルファ殿も逃げましょう!」
「脚力はアイツの方が早いですから、誰かが妨害しないと追いつかれて食われますよ!」
「オルファ殿、その当時の話に戻りが、その時の地竜は……どうなりました?」
「団員達と倒しましたよ」
「あれも倒せますか?」
「あの時の地竜よりデカいですけど、まあなんとかなるでしょう。さあ! 早く行ってください!」
「ご武運を! みんな立て! 地竜だっ! 逃げるぞっ!」
混乱する護衛やエドワード達を引き連れ、走り出すダニー。
それを追おうとする地竜に、
「てめえはコッチだ!」
そう叫んだオルファは、地竜の横っ腹に飛び蹴りを喰らわせるのだった。




