今後への自覚
ブリーがいなくなって・・。
ブリーの結婚式が終わってから、朝晩の冷え込みが厳しくなってきた。
「なんだか家の中が静かになっちゃったなぁ…。」
ブリーが1人いないだけでこんなに静かになるとは思ってもみなかった。
たまの土日にデビ兄が帰って来るぐらいで、大抵は父様と母様とエミリーの3人で夕食を取ることになる。
今夜も静かな晩餐だ。
そう言えば、ミズ・クレマーもいないんだった。
「母様、ミズ・クレマーはどうしてるの?」
「ミズ・クレマーは、もうすぐ結婚されるようよ。今は、キャサリンの下宿の方にたまに行って基本的な家事だけ教えていただいているけど、結婚されるとそういうお仕事も頼めないかもしれないわねぇ。」
「そうなるとエミリーの家庭教師はどうするんだい?」
「それなのよ。あなたの知り合いにどなたか気の利いた娘さんはいないかしら。」
「うーん、心当たりがないなぁ。母さまに尋ねてみたらどうだ?」
「そうね。また電話してみます。」
おばあ様に家庭教師を紹介してもらうのか…いい人だといいけど。
夕食も終わりに近づいた頃、タナー夫人が遠慮がちに顔を覗かせた。
「旦那様、お食事がお済でしたらピートが話があるそうなんですけど…。」
庭師のピートがこんな時間に何の用事だろう。
「今日は早引けしてジム爺さんの見舞いに行ったんじゃなかったか? だいぶ悪いのか?」
「そのようです。」
「そうか。私はもう済んだから失礼するよ。」
父様は私達にそう言って、タナー夫人と一緒に食事室を出て行った。
「母様、ジム爺さんのお見舞いって、ジム爺さんは病気だったの?」
「ええ、この夏にカビィが亡くなって大分ふさぎ込んでいたからねぇ。肺炎だそうだけど、生きる気力がないからどうしようもないって、ドクター・クランクがおっしゃってたわ。こうしてはいられないわね。多分これから出かけることになりそうだわ。用意をしておかないと…。」
母様は、食事をするのを止めて部屋の方へ外出の準備をしに行った。
エミリーが1人でポツンと食事を続けていると、父様が戻って来た。
「母様は外出の準備をしに行ったよ。」エミリーがそう伝えると、父様はホッとした顔をした。
そして真面目な顔になって、ほんど食事が終わっているエミリーのお皿を見た。
「エミリーも出かける準備をしなさい。お前はこれから公爵家に嫁ぐ身だ。領主夫妻として領民にどう接していくのかを見ておきなさい。」
その言葉を聞いて、ハッとした。
そうだ、公爵領に嫁ぐのならまだ公爵夫妻がそこにいるので子どもとして暮らしていける。
しかし、ロブはもう4年もすると独立した領地を持つ侯爵になるのだ。
その連れ合いになろうとしているエミリーが、子どものまま過ごしていけるはずがない。
この間ロブが侯爵領の会計を見ていると言っていたけれど…こういうことだったんだ。
15歳でロブと結婚した場合、父様や母様が今やっていることを私達も同じようにして行かなくてはならないのだ。
目の前に見せられた責任の重さに慄然とした。
昨日、私は15歳で結婚すると言ったけれど、父様たちはこういう事も含めて考えていたんだね。
エミリーは末っ子のせいか自分でも同級生のマリカたちに比べて子どもっぽいと思う。
名前には責任が伴う。
こういうことも今まで考えてもみなかった。
自分がいかに幼い甘えた考え方をしていたのか、気づいたよ。
外出の支度をしに3階の子供部屋へ向かいながら、私も、もうこの子供部屋に住む「子ども」ではいられないんだなとつくづく思った。
エミリーの子ども時代が幕を閉じた出来事だった。
エミリーの子ども時代から青年時代へと時が移り変わって行きます。




