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男の子がいっぱい

エミリーの苦手なパーティーです。

 9月に入って最初の日曜日に、ロブの、公爵嫡子であるロベルト・オ・オノラブル・デボンの誕生パーティーがあった。


サマー領で催されるアル兄さまとエミリーの誕生パーティーと同じで、ロブの誕生パーティーもここデボン公爵領では、秋の始めの一大行事になっている。



今日は風があるが、予定通り広い芝生の前庭でパーティーが催されるようだ。三々五々集まって来た多くの人たちで、芝生は埋め尽くされている。

芝生の周りにあるテントでは、軽食や飲み物が出されていてお祭りのような賑わいだ。



「これは凄いね。映画のセットとは比べものにならないや。」ライはさっきから軽い興奮状態だ。


マリカはここのパーティーに慣れているので、公爵家の建物の事や出席している有名人について、ライに教えてあげている。


「ほら、あそこにいる背の高い黒髪のイケメンが日本の皇太子の滝宮秀次(たきのみやひでつぐ)様よ。その隣で話をしている威厳のある濃い茶色の髪をした人がいるでしょ、あれがデボン公爵様。ロブも最近背が高くなってきたから、こうやって見るとお父様に似てきたわね。」


私達サマー家の者やマリカは毎年招待を受けているのだが、今年は先日のおばあ様の忠告を考慮して、ロブに頼んでライオネルも招待してもらった。



先程、デボン公爵がロブへの祝いの言葉を話し、同時にパーティーの開催を宣言すると、会場にいる人々もリラックスして飲食を始めた。


それからだいぶ経って、招待客への挨拶を一通り終えたロブが、やっと私たちの所へ来ることが出来た。


「ロブ、お役目ご苦労様。早速だけど紹介するわ。私達のクラスに転校して来たライオネル・カドガンさん。去年一緒に『私の愛したスパイ』を観に行ったから顔はよく知ってるよね。ライ、こちらは本日の主役であるロベルト・オ・オノラブル・デボンさん。私達の幼馴染で、私が婚約する予定の人。」


「エム、予定って…。」


「だって、婚約式まだでしょ。」


「そうだけど…。ライオネル、今日はよく来てくださいました。楽しんでいってくださいね。」


ロブが社交的な笑みを浮かべてライに挨拶をする。


ライの方も緊張しているのか学校に来た最初の日のような大人し目の商業的な笑顔だ。


「お誕生日おめでとうございます。今日は面識のない私までご招待くださってありがとうございます。」



エミリーとマリカは目を見合わせて、こりゃ駄目だと首を振った。


「堅い、堅いよ2人とも。同級生なんだから、もっとフランクにいこうよ。」


「そうそう。んーーと…そうだっ、ライが昨日読んでた『ライフジャーナル』、あれ科学雑誌でしょ。なんか前にロブも似たようなのを読んでなかったっけ。」


この話題にロブが飛びついた。


「君、『ライフジャーナル』を読むの? 『サイエンス』は読まない?」


「あっ、僕どっちも読む。君も読むんだ。珍しいね。クラスにこういうの読む人いなくて…。」


「ロブって呼んで。僕もライって言っていい? いやぁ、まさかクロード・ベネットが科学の雑誌を読む人だなんて思わなかったよ。役者って文系かと思ってた。」


「うちの親父が医者だから、家にいつもそういう本がいっぱいあったんだ。ロブはなんで科学に興味があるの?」


…やれやれ。


二人とも最初はお互いの出方を慎重に見極めているようだったが、自然科学の話題になってやっと打ち解けて話を始めたようだ。


私、グッジョブ。


なんとか男同士で話が合ってくれて、マリカとエミリーは一安心した。


無事に、ロブとライを紹介し終えて、エミリーとしてはお役目が一つ終わって肩の荷が下りた。



二人の話が専門的になってついていけなくなったので、マリカとエミリーは飲み物を取りに行くことにした。


テントに来るとアル兄さまとデビ兄がアイスティーを飲んでいた。


「エム、婚約者を放っといていいのか? あそこを見ろ。女の子たちが何人か狙ってるぞ。」


デビ兄に言われて振り返って見ると、ロブとライが夢中になって話をしている様子を、3人の女の子が気にしてちらちらと遠巻きに眺めている。

皆さん良家の子女なので、自らあの2人の話の中に飛び込んでは行かないだろうが、目でも合おうものなら即座に行動に移すだろう。


「しまった。ライがいるから放っといたらヤバいね。アル兄さまとデビ兄の2人でガードしといて。私達も飲み物をもらったら直ぐに行くから。」


「いいよ。僕はロブにビギンガム侯爵領の観光地についてちょっと聞いときたいことがあったんだ。」


アル兄さまは、早くもお仕事モードになっているようだ。

父様とおじい様は弁護士か外交筋の仕事をして欲しかったようだが、アル兄さまは旅行が好きなので観光業の仕事を決めて来た。


なんでも自分の好きなことをするのが一番だとエミリーは思う。



エミリーがロブたちの飲み物も一緒にトレーに乗せてもらって、皆の所に戻ろうとテントを出たら、マリカが「エム、ちょっと壮観よ。あそこを見てよ!」と顎で向こうの方を指した。


そこには、いやに目立つ5人の男の子達がいた。


周りの人達も皆、その5人をじっと見ている。黒髪の貴公子滝宮さま、アッシュブロンドのデビ兄、緑がかった黒髪のライ、濃い茶色の髪のロブとアル兄さま。

みんなスラリとした立ち姿で、それぞれが魅力的だ。


こうやって客観的によく知っている人を眺めると、全然違う人みたいだ。


特に、俳優のライと並んでいるロブが遜色なく目立つのにびっくりした。

以前、滝宮様に初めて会った頃にはロブはこんな感じではなかった気がする。



本人たちは周りの目に全然気が付いていないようで、自然な感じで笑いながら話をしている。

それがまた周りの目を引いている。


これ、私達あそこに行きにくくない?


「マリカ、あそこに行ったら目立ちそうだから、ここで2人でお茶しとこうよ。」


「だね。今あそこに行くと、女の子たちに呪い殺されそうな気がする。」


そう言って、マリカとこそこそテントに戻ろうとした時に、ロブとライが私達を見つけて大声で名前を呼んでくれた。


「エム! こっち。」


「マリカっ、取りに行こうか?」


……………。


「…行くしかないね。」


「大丈夫、持って行くからっ!」


周りの視線が痛い。特に先程の3人の女の子たちの顔が恐ろしい。


私達はうつむき加減に、足早に歩いて皆の所に行った。



「それ持つよ。」


ロブが直ぐに私が持っていたトレーを引き取ってくれる。


「お前ら、女性に物を取りに行かせるなんて、紳士の風上にも置けないやつだな。」


こういう事をロブは滅多としないので、デビ兄がここぞとばかりにロブを揶揄(からか)う。


「いいのっ。これは私達から言い出した事なんだから…。」


「おおっ、やっぱり婚約者ともなると、かばいだてしますねぇ。」


もう、デビ兄は…。


「私は、まだお2人にお祝いを言っておりませんでした。ミス・エミリー、オノラブル・ロベルト、この度はご婚約の運び、誠におめでとうございます。10月の婚約式には私も喜んで参列させていただきます。」


滝宮様、さすがに空気を読む方だわ。

デビ兄のからかいの後だとこの穏やかな笑顔に癒される。



「ありがとうございます。滝宮様。」


「参列の光栄にあずかれるとは、感謝いたします。」


私とロブがそう言うと、アル兄さまがニヤリとした。


「エム、秀次さまはまた日本食を召しあがりたいらしいぞ。婚約式にはなつみさんに頼んで、何か日本食をコース料理の中に入れたらどうだ?」


「アレックス、そういうことを言うと私がエミリーに強請(ねだ)るばかりしているようではないですか。」


滝宮様は大学でアル兄さまと親しくなったようで、2人とも親し気な口をきいている。


確かに滝宮様には、日本食を強請られ続けてますけどね。

一品ぐらいは日本食にしてもいいですよ。

趣向が変わって他のお客様にもウケるかも知れないし…。


「宮様、アル兄さまの提案は考慮に値すると思います。ロブのお母さま、デボン公爵夫人とも相談してみます。」


エミリーがそう言うと、滝宮様の笑顔が一段と輝いた。



「日本食って?」


ライがマリカに小声で滝宮様との経緯を聞いている。


役者の声は小声でも聞き取りやすいので、皆の話題が自然とライが出演している今話題のクロード・ベネット主演映画「薔薇の咲く庭」に移っていった。

ライはこれで世界一美しい吸血鬼という評判を受けている。


これは世界配信されているらしく、ライもこの夏休みにアメリカ、日本、フランス、イタリアなど、映画の宣伝の為にワールドツアーをして来たらしい。


アル兄さまとはイタリアの、滝宮様とは日本の様子について話をしている。


こういう話題の豊富な友達がいると場をお任せできるので楽でいいね。



「噛みつかれたい男ナンバーワンと言われてもねぇ…。」


年頃の男たちが集まると始まる微妙な話題になってきたので、マリカとエミリーはこれを機会にこの場を離れた。



離れた所で振り返って見ると、やはり周囲ではいまだに彼らを眺めている人も多い。


見た目と中身は違うよーー、と教えてあげたい気分だ。


彼らが今何の話をしているのか…幻想を壊すのも悪いので、まあ差し控えさせていただこう。

見た目と中身が違うことはままあることで・・。

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