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外伝・MEYさんの拾ったモノ

 新しきエルフ村。

 その聖樹の周囲は、湖で囲まれていた。

 タイダルネクツァという魔物の身体は既に腐り堕ち、骨だけになっているが、それに聖樹の根が絡みつき湖から自身を支える礎としていた。


 そんな湖は今、エルフたちの入浴場と化していた。

 朝、起き抜けに寝ぼけた顔のままそこに現れたのは黒肌系イマドキ女学生。ゆったりとした大柄のブレザーとスカート姿のまま呆然と岸辺で全裸体操をしている男エルフ達の群れを見て服が肩からずり落ちる。

 岸辺で顔を引きつかせているMEYに向け、女エルフが全裸で手を上げる。


「めーいーっ。こっちこっち。年一回の全員集合、聖樹祈祷祭だよー」


「はぁ? 何よソレ?」


「毎年この時期になると全員が全裸になって御祈りを捧げるの。森の豊穣と私達の豊穣を祈るのよ。ほら、私達って長寿だからわりと性生活は淡白なのよ。だから少しでも男性を興奮させて子供を作るための祭りでもあるのよ」


 最近仲の良いエルフが言うには、この日が最もカップル成立が多いらしい。

 といっても二組か三組くらいのカップルが成立しただけでも充分多いそうなのだが。

 エルフってば淡白すぎね? MEYは思ったが口にせずに周囲を見回す。


 女エルフは老若問わず全裸で湖に入り沐浴を行っている。

 これだけ見れば人間の男は桃源郷とか理想郷とか涙を流して喜ぶかもしれない。

 岸辺では全裸の男エルフが老若問わずに整列しており、今回の祈願祭についていろいろと説明を聞いているのを除けば。

 話しているのは年若く見えるが今の最長老らしいエルフである。

 皆老人といっても若作り過ぎるので一万歳とかいっていても普通にイケメン顔だったりする。


 でも、とMEYは彼らの股間に注目する。

 立派なモノをお持ちでも淡白じゃぁねぇ……

 溜息を吐いて湖で顔を洗う。

 拭く物が無いのでその場で顔を振って水を切り、盛大なあくびと共に伸びをする。


「MEYも早く入って来なさいよ。全員参加なんだからっ」


「え? いや、もしかして全裸で?」


「ええ、全裸で。前の森だと湖はなかったから全員があっちみたいに整列して男女交互に並んで……だったんだけど、今回は湖があるでしょ。だから整列せずに皆が立ち泳ぎしながら祈りを捧げるの」


 思わずひく付いたのは、MEYといえども淡白とはいえ男どもの前で全裸になれという事に対してで有る。祈りについては別に嫌ではなかった。

 しかし、女エルフはいつものようにMEYが面倒臭がっているのだと勘違いし、湖から上がるとMEYの服を脱がしにかかる。


「ちょ、やめっ、服濡れるってばっ」


「さっさと脱ぎなさいよ。祈祷祭始められないでしょ。全員揃ってから開始なんだから!」


 一応、仲間内に入れられていることにちょっと嬉しく思ったMEYだが、それとこれとは話が別だ。


「ちょ、ムリ、マジ無理だからっ。服は着させてっ!!」


「無理って何よ! エルフと共存するんだったら祈祷は……って、服?」


 女エルフはMEYから離れ、MEYを見る。


「服? 祈祷するのが嫌なんじゃなく?」


「別に、あんたたちと一緒に過ごすって決めてんだから祈祷くらいするわよ。でも服はムリ。常識的に男の前で全裸とか、セッ○スしたこともないあたしにはむーりーっ」


「いや、でも、これはそれをするための……」


「あたしは男エルフとそういう関係になるつもりはないっ」


「あ、あー……ちょっと長老に聞いて来る」


 納得した女エルフが長老の元へ向ってしばらく。どうやら許可が下りたようで、衣類着用を許されたMEYは、それでも下着姿になって湖に入る。


「冬場とかじゃないからいいけど、下着で水に入ることになろうとは……」


「勿体無いなぁ。MEYなら上手く行けば子宝沢山貰えたかもなのに」


「要らないってば。ただのイケメン淡白と付き合うつもりないし」


 溜息を吐きながら女エルフに誘導されて聖樹の元へと向かう。湖の深さはかなりあるので沈んだら終わりだ。なのでMEYはできるだけ女エルフに掴まりながら湖で過ごす事にした。

 実は泳ぎが得意ではないなどと、口が裂けても言えない小さなプライドを持つMEYだった。


 長老エルフの祝詞が始まる。エルフ達が目を瞑り始めたのでMEYも目を瞑ることにした。

 復唱するエルフ達に混じり、MEYもまた復唱をしていた。

 そんな折、ふぁさっと何かが頭に落ちて来た。


 なんだろう?

 何人かのエルフも同じように何かを感じたらしく祝詞を中断して目を開いている。

 MEYも目を開いて頭に乗った何かを掴む。


「ぱんつ?」


 それは女物の下着であった。

 ショーツ、パンティー、Tバック。あるいはブラジャーなどが空からひらひらと降ってきている。

 まるで天からの祝福のように。下着にはちゃんと名前も刺繍されているようだ。


「誰だよロシータって?」


 MEYの言葉に答えられるモノは、この場には居なかった。

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