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人間国侵略作戦2

「次に魔将を引き連れていく方法だが、これもまた似たようなモノだろうな。基本的に魔族は連れていかない方がいいだろう。ただ、魔族の娘を取り戻すのならば我としてはそれでもいいと思うがな。というか……ここのメンツだけでも過剰戦力だろう。ラオルゥ様とディアリッチオ様は見学だけということですが、シシルシ様とルトラ様はご参加くださるだろうし」


 まぁ、そうなるよな。多分連れていかないってなったらダダ捏ねてこの近辺を破壊し尽くしそうだし。とりあえず玲人にはちょっと痛い目にあって貰うとするか。

 原型さえ留めとけば復活もできるだろうし。


「そうだな。このメンツで行っちまうか。って、流石にギュンターも一緒に行くのは危険か」


「一応人間にはまだ魔王と認識されているからな。余は一人城に戻るとしよう」


「いいのか、父よ?」


「言いも悪いも無かろう。それに余だけは魔族にしか見えぬ容姿だ」


 確かに、ディアは初老の男性、多分羽とか角とか隠したりできるんだろうなディアだし。

 ラオルゥやルトラはほぼ人間の容姿に似てるし変装すら必要無いだろう。

 シシルシは三つ目だが、バンダナか何かで第三の眼を隠せばなんとかなるだろう。

 俺達は勇者だし、ユクリをどうするかさえ考えれば……


「そんなこと言わず、折角ですからご一緒されてはどうですか。私が変装させましょう。なぁに、我が魔力を打ち破る人間はそうそういませんよ」


 と、ディアからの提案でギュンターたちも一緒に向う事になった。

 ディアの魔力打ち破る人間以前に魔族でも多分居ないんじゃないか?

 幻惑魔法で人間に見せるということで、ディアとギュンター、ユクリは問題無く。

 他のメンバーはディアのフォローはないようだ。


「ああ、そうです。どうせですから女性陣はこちらをどうぞ。この首飾りは魅了攻撃を防ぐモノでして、人間程度の魅了攻撃なら弾き返すくらいの強力な呪詛も織り込んでおります」


 ディアさんが優秀すぎる。

 若萌と矢鵺歌が装備するのを横目に見て、未だに混乱中の大悟を見る。


「とりあえず、自己紹介は道中に話そう。大悟、お前らも来るか?」


「そう……だな。そもそも俺達の目的は魔族領の偵察であって魔族を拉致したり奴隷にすることじゃない。今回は玲人が悪いのは、その、分かる気がする」


 多分人間側からすればそこまで問題はないのだろうけど、大悟は気付いてないようだ。

 矢鵺歌の知り合いが拉致されたソレを救出に向かう。仲間がそうなのだから自分も救出に参加すべきだ。そういう思考になっていると思う。


 兵士達が何か言いたそうだったが、それは回りの状況を無視して口出せる胆力が無ければ意味がないことだった。

 何しろ彼らの背後にはラオルゥが陣取っているのだから。受けるプレッシャーは並みじゃないだろう。




「じゃあ。今はお前が魔王なのか!?」


 魔王の馬車に乗って皆で魔族領東端へと向かう道中、俺は大悟に自分の近況を明かす事にした。


「ああ。だから人間との融和策が取れると思うんだ。大悟、なんとか出来ないか?」


「そう言われても……いや、確かに今は好機ではあるのか。魔族と融和が出来れば西大陸の脅威が無くなる。そうだな。俺の判断では難しいが、姫に提案してみる。連絡はどうすればいい?」


「それでしたらこちらを。私が暇を明かして作った通信装置です。魔力を通せば人間でも連絡は出来るでしょう」


「ああ、助かる」


 ディアから受け取った通信装置をまじまじと見つめる大悟。

 本当にディアは優秀すぎて怖い。いつ裏切られても俺は大人しく殺されるしか道が無いぞ。

 よくもまぁ俺を気に入ってくれたなディアは。一体俺の記憶の何処に興味を覚えたんだろう?


「あの、ディアリッチオだっけ? あんたも魔族なんだよな? なんで誠に従ってんの?」


「ふむ? 興味を覚えたから、としか言えませんな。なかなかに面白い思考回路をしておりましたので行く末を見てみたくなった。それだけです」


「ふーん。問題行動が多かった誠がなぁ……」


 どうでもいい風に話してるけどさ、大悟。お前が話してるそいつ、裏ボスみたいな存在だぞ。

 まったく気付いてない大悟は魔族と普通に話しているが、それを三人の兵士はあり得ない顔で見つめていた。

 人間と魔族の融和はちょっと難しいかもしれないなぁ。特に大悟の居る国とはちょっと難しいかもしれない。


 簡単に融和に乗ってきたら警戒した方が良さそうだな。

 その時はラオルゥとディア連れて行こう。

 何かあったら二人任せだ。このくらいならやってくれると思いたい。

 自分たちだけ逃げる可能性もありそうだけど。


「そろそろ砦の辺りだな。なんだか物々しい雰囲気になっているな」


「おそらく玲人が何かしたんだろう。もしかしたら大悟をここで足止めするために一芝居打ったかもしれないな」


 幻惑魔法で普通の馬車にした骸骨馬車から覗きつつ、俺は戦闘の気配を感じて拳を握り込んだ。

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