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魔王暗殺計画3

主人公の自覚無き猟奇的行動がございます。ご注意ください。

 魔将達はざわついていた。

 つい先程サイモンが魔王に呼ばれたのは知っていたが、まさか直ぐに招集が行われるとは思わなかったらしい。


 しかも、集合場所は城ではなく駐屯場であるという。

 集まった場所には磔台が設置されており、そこにサイモンが拘束されていた。

 まさかサイモンを公開処刑するつもりか?


 魔将たちも、何が起こるか知らずに集まった兵士たちも皆が不安げに見ている。

 いや、処刑以前に既にサイモンの前にダイアログが出ている。

 彼は既に死んでいるらしくアイテム入手確認メッセージが表示されている。

 ソレを、新魔王がNOを押しては消してを繰り返している。


 全員が集まったのを確認し、魔王はロードセイバーと口にして、変わった剣を取り出す。

 何処から取り出した? 数人の魔将がいぶかしげに呟くが、次の瞬間、彼らはぎょっと目を剥いた。

 魔王はサイモンの遺体を切り裂いたのだ。


 腹が切り裂かれてハラワタが飛び出す。

 魔族といえども流石にこれを見て平気な者はなかなかいない。

 新兵などは衝撃的な光景に思わず吐き気を催していた。


 魔王はあろうことかその内臓を切り離し、地面に投げ捨てる。

 アイテム入手ダイアログには絶えずNOで突き返し、ただ只管にサイモンの臓器を取り出して行く。

 何がしたいのか分からない。


 全てを取りだした魔王は、なぜか悪魔神官を呼び出しサイモンを復活させた。

 何がしたかったのだろうか?

 魔将たちは首を捻る。だが、魔王の狂気はすでに始まっていたのだ。


 復活したサイモンが目を開く。

 魔王はなぜか拘束を解きサイモンを開放した。

 サイモンは斬り殺された記憶はあるようだが、何故生き返されたのか理解できずに戸惑っている様子だ。


「何がしたいのです貴方は? 私を殺し皆の見せしめにしたかったのではないのですか?」


「見せしめならしたよ。ほら、皆が見ている」


「意味不明なものを見た。そんな顔をしていますが?」


 周囲を見回し、溜息を吐き、サイモンはふと、地面に捨てられている異物に気付いた。


「なんですかこの気味の悪い物体は?」


「ん? お前の内臓だが?」


「……え?」


「だから、今、皆の目の前で取り出したお前の内臓だ」


 サイモンは絶句した。

 意味が分からない。この魔王の思考回路が理解できない。

 だが一つ、分かった事はある。

 これは魔王だ。魔王になるべくして生まれた自分の思考の及ばない悪意無き悪意を持つ巨悪だ。


 ぶるり、全身が震えた。

 そして思い知る。自分の内臓が取り出されてなお、生き返った自分の内部は、果たしてどうなっているのだろうか、と。

 気のせいか、体内が妙にすーすーする気がしなくもない。


「ひ、一つ、よろしいでしょうか」


「何かな魔王暗殺計画を首謀したサイモン君」


「私の体内に、内臓はあるのでしょうか?」


「さぁ? 回復しているかもしれないし、そのままかもしれないな。別にいいだろう? これは魔王暗殺を企てた処刑なんだ。生き返れるだけマシだと思うけど?」


 気にした風も無く告げる魔王。

 ダメだ。この男は自分がこの後臓器不全で死のうがどうしようが気にしていない。

 かといって確認のために再び死ぬ気にもなれない。


 サイモンは今、自分が本当に生き残れるのか毎日戦々恐々しながら生きなければならなくなった。

 だんだんと、体内から取り出された臓器達がかけがえのないモノに思えて来る。

 アレは、私のモノだ。大切なものだ。無くしてはいけないモノだ。


 しかし、もしかしたら新しいアレが体内に生成されているかもしれない。

 否、生きているのだからおそらく全て再生されているのだろう。

 だが、現実自分の体内にあったものが全て取り出されているなど、それを行えるなど正気の沙汰ではない。


 この魔王、ジャスティスセイバーはどこかが狂っている。

 実行できてしまうということがそもそもおかしいのだ。

 危険だ。この男はあまりにも危険過ぎる。

 これ以上逆らうべきではない。自分だけならばともかく他の近しいモノが被害を受けるかもしれない危険は冒せない。


 この男なら男女のすげ替えで生き返るかなど首だけを入れ替えて生き返すということすら平気でやりかねない。

 人間の皮を被った化け物。

 サイモンだけが気付いた。

 否、頭の良い魔将達もまた気付いたようで青い顔をしている。


「ま、魔王陛下……」


「何かなサイモンくん」


「この度は貴方様の恐ろしさが分からず抗おうとしてしまいました。何卒お許しいただけませんでしょうか? 以後は忠誠をっ!」


「なに、そこまで怒っているわけではないさ、ただ見せしめに利用させて貰った、以後似たような事をすればどうなるか、皆も分かってくれたと思う」


 やはりだ。今行ったことに対して彼はまったく気にしていない。

 頭のネジがどこか吹き飛んでいる。

 サイモンは新たな魔王の致命的な欠陥に気付き、全身から汗が止まらなかった。


 魔族が変わる。それもただ平和を求め人間と手を取り合うような変化ではない。

 この男が魔王になるのだ。絶対に、それはない。

 終わりが始まる。

 人間か、魔族か、必ずどちらかが滅ぶ破滅が始まる。そんな予感に、彼は全身を震わせた。

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