中央集中2
「F・Tさんっ」
「うわ、あっちからもそっちからも。寝取り魔さんどうします!?」
「薬藻、ディアリッチオとの闘いであたしの魔力が残り少ねぇ。このままじゃジリ貧だぞ!」
「だぁぁっ!? なんで皆して俺に指示仰ぎに来るんだよ!? 代表いねぇのか!?」
「代表なら父さ……セイバーよ」
「くっそ頼りにならねぇじゃねぇか。ええい、若萌だっけ、萌葱と協力して光の盾、至宝は魔力尽きるまで迎撃してくれ、魔王軍の手が空いてる奴魔力回復薬の準備頼む。ポーション酔いとか毒は幾つまで大丈夫だ!? パルティさんだっけ、アンタは迎撃可能だよな」
「ええ。魔力障壁も張れるから防壁係も請け負うわよ!」
告げるパルティは萌葱と若萌の元へと向かう。
「「希望の光の盾」」
「火炎魔法が良く来るみたいだから火炎属性特化型に組み替えて……マクスウェルフィールド」
二重に出現する光のフィールドにさらに内包されるように展開される四色カラーの薄膜。全てが魔王城を防衛するように展開される。
「一応、魔族人族関係なく出入りは出来るようにしといたよ?」
「それでいいよ。続々撤退して来てるみたいだし」
フィエステリアのいう通り、西からネンフィアス軍とトドロキの軍勢が、東からギュンター率いる魔王軍と街の住民が、北からは殿に残っていた魔将サイモンたちが、南からは魔神ルトラをはじめとするメンバーが戻って来る。
集結するメンバーたちは再会を喜びながらもその顔に喜色はない。
それもそのはず、魔王城に人が集まるということはそれだけディアリッチオ人形たちに追い詰められているということでもある。
「しっかし、凄いな。全方位ディア様だらけじゃないか」
「ルトラちゃんお久~」
「シシルシ! お前遅いぞ。危うく南が全滅しかかったじゃないか!」
「てひー、めんごめんご。でも無事だったみたいじゃねぇか。少し遅かったくらい許しやがれ」
「まぁ、いいんだがな。僕様はあの人形の迎撃に向かうが、シシーはどうする?」
「オレ様の役目はもう終わったからなぁ、肉弾戦なら得意だが遠距離は任せるぜ」
短く言葉を交わし、シシルシをその場に残してルトラが至宝に合流する。
「ほれ、女神の勇者から奪った完全回復薬だ。魔力回復に使っとけ」
「お、サンキュ。あんたはいいのか?」
「マナ吸収で大気中から回復している。人間の薬なんざ不要だ」
「流石魔神。デタラメだな。まぁいいや。使わせて貰うぜ」
至宝が薬を飲みほし完全復活。それまで散発的に撃っていたフレアライトクロスを連発し始めた。御蔭でかなりのディアリッチオ人形が消えて行く。
四方八方から来るディアリッチオ人形に、北を至宝が、南をルトラが、西をパルティが受け持ち迎撃。魔族の中で遠距離魔法が使えるメンバーも参戦し、最終防衛線を維持し始める。
「おー、結局来たのかよラオルゥ」
「シシー。随分お気楽だな。まぁいい。東は我が受け持つよ。ギュンターが魔王として動き出したおかげで魔王軍にも纏まりが生まれたようだし、随分と強い存在が味方に来たみたいじゃないか」
「ほんとにねー。あの自称勇者のデカパイ娘、ディアちゃん倒したってよ」
「そうか……ディアは逝ったか。我は逝き遅れたな」
「なんだぁ? 生かしてほしくなかったか?」
「いや。感謝しているよシシー。さて、セイバーが戻るまで人形狩りといくか。ラガラッツ、全軍に通達しろ。我と共に闘うは自由。されど我が前に出るな。視界に入れば問答無用で破裂するからな」
「はっ! 直ちに全軍に通達いたします!」
シシルシに視線を合わすことなく話を終えたラオルゥは、一緒に撤退してきたラガラッツに伝えて東の迎撃に向かう。
ディアリッチオ人形たちの魔法が光の盾に無数に打ち込まれる中、四人の強者を筆頭に、魔族人族ごちゃまぜの抵抗戦が始まった。
「魔王城に残っていた魔力回復薬はこれで全部です!」
「攻撃力が高い奴に優先的に割り振れ! 予備を残しておけよ! あの四人が無力化したら終わりだからな!」
「民を守れ! 暴動が起こらないよう宥めてくれよ。今内部崩壊されると困る!」
「ネンフィアス軍は各魔族のフォローに動け! 負傷者の収容、回復を優先! 民の護衛も引き受けろ!」
サイモン、スクアーレ、トドロキ、ラスレンティスが口々に叫ぶ。
「エルダーマイア勇者、あまり無理はするなよ!」
「ルトラ様の援護に回れ! アウグルティース殿、こちらは任せ北を!」
「良いのか? 私は……」
「信頼しましょう。同じ魔将として、貴方の魔国愛を」
「恩に着る」
アウグルティースとカルヴァドゥスがハイタッチを行い北と南の魔王軍指示に分かれる。
西をトドロキ、東をラガラッツが指示出しを行い。それをスクアーレが纏めながら最終的な判断をギュンターが的確に処理していく。
魔王軍が本当の意味で機能を始め。各地のディアリッチオ人形を少しずつ駆逐していくのだった。




