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フラージャ洞窟の攻防2

「あああああああああっ!!」


 突撃するメデュパ。

 ポエンティムの叫びが聞こえるが、それでも走る。

 案の定、ポエンティムの言葉通り、フェレが飛んできた。

 来るのは分かっていたので身を沈めて避け、そのまま勇者に突っ込んだ。

 自慢の爪の一撃を叩き込む。


「甘ーい」


 ノ―ダメージ。皮膚を軽く撫でる感覚に和美は気にせずメデュパの腕を掴み取る。


「手加減スキルで徹底的にいたぶってあげる」


 メデュパを投げ上げると、鞭を振るう。

 空中のメデュパを滅多打ち。

 見ているチキサニ達の方が無数の傷を付けられるメデュパの痛みに震えるほどだった。

 数十の連撃を受けたメデュパが一分を過ぎてアイテム化してしまう。


「あらら、ちょっと長時間やり過ぎた。アイテム化しちゃったらもう楽しめないじゃない」


「こいつ……」


 稀良螺は剣を引き抜く。

 フェレと自分だけだ。チキサニを守り切るのはもう二人しかいない。

 稀良螺はフェレを見る。

 自分の魔法で生き返った彼女もまた、メデュパの死を見て青い顔をしながらも、やるしかないのだと決意していた。


「ポエンティム、指示をお願い」


「わ、分っておるっ」


「チキサニ……できるだけ、やってみるわ」


「う、うん。稀良螺……フンパフンパするっ」


「よくわかんないけどやれるだけやるわ」


 剣を構える稀良螺、フェレは拳を握る。


「フェレ、あなた武器は?」


「ゴールドフィンガーがありますよ、私、サキュバスですから」


「な、なるほど……じゃぁ、勇者様を女神の元へ昇天させてやりましょうか」


 走り出す。

 ポエンティムの指示が飛び、迫る鞭をぎりぎりで避ける。

 クスクスと笑う和美に二人同時に飛びかかる。


「閃光閃っ」


「甘いっつの」


 鞭を使って剣を絡め取る和美。その背後から、フェレが胸を鷲掴む。


「あら?」


「最高の快楽、味あわせてあげるっ。淫魔の手」


 それは、見ている稀良螺とチキサニの方が恥ずかしさで目を背けたくなる光景だった。

 しかし、和美は気にしたふうも無くフェレの腕を掴み取ると、背負い投げで稀良螺の横に叩き落とす。


「はっ、バーカ。快楽耐性くらい女神に貰ってるわよ。死ねクソ雌が。あんたたちは攻め側じゃないのよ」


 アイテムボックスが表示されたフェレの顔面を踏みにじる。

 咄嗟に復活魔法を唱える稀良螺だが、踏みにじる行為でもダメージが入るらしい、フェレは再び即死してしまう。


「クアニ エロンノおまえをころす! エライおまえはしね! ポルチャルあのよへのいりぐち アルパいってこい!」


 ひゅんっ。と風を切る一筋の矢。

 稀良螺に視線を向けていた和美にチキサニの放った矢が迫る。

 本来であれば直撃する筈の一撃は、しかし和美が取り出した二本目の鞭で叩き落とされる。


「ざーんねーん。あなたの存在忘れるわけないでしょーよ」


「あ……」


「ほらっ、あんたは回復要員なんだから大人しくしてなっ。そこでフェレちゃん復活させてりゃいいのよ」


 手加減スキルを使った和美が蹴りを放つ。腹に一撃受けた稀良螺は女性から出すべきじゃない「ぐげっ」という声を発して崩れ落ちた。

 鞭で稀良螺の両腕を縛り、足も縛って地面に転がすと、懐から短剣を取りだす。


「さぁて、フェレちゃんが復活する間に、チキサニちゃんで遊びましょーか?」


 醜悪な笑みで近づいて来る和美に、チキサニは涙目で震えながら下がる。

 しかし、既に彼女の背後には壁しかなかった。

 直ぐに壁により阻まれ逃げ道が無くなる。


「イコチャス……」


 恐怖におびえるチキサニに和美が一歩、また一歩と近づいて来る。


「さぁて、どう切り刻んであげましょうか? 指先から少しづつなます斬り? それとも動脈を切って死ぬまでを動画に納めちゃう? 大丈夫。ちゃぁんと生き返してくれるわよ、稀良螺ちゃんがぁ」


「このっ」


 一歩、さらに近づこうとした和美の足に生き返ったフェレがしがみつく。

 しかし歩みは止まらない。

 フェレを引きづり、彼女のことなど気付いてすら居ないかのように、和美はチキサニへと近づいて行く。


「目を抉るのもいいかしら? 鼻を削ぐのもいいかしら? まずは舌を二つに裂いてみるかしら? ねぇ。何がお望み?」


「ひぅ……」


 がくがくと震えるチキサニは起ってすら居られなくなりへなへなとその場に座り込む。

 もう、逃げる事すらできなかった。

 殺される。それが理解出来る。


 黒の聖女に言われた場所に来た筈だった。

 ここで生還できるはずだった。

 なのになぜ、勇者が此処に来る? なぜ、自分を助けに来る人がいない?


 助けて。

 天に祈る。

 誰か……誰でもいい……私を、クアニを……


ネン カだれか クアニウタラわたしたちを ニセ ワすくって――――っ!!」

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