表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

258/337

聖女の予言

「それでは、これからの話は以上です」


 黒の聖女、ラナが告げる。それは預言書に書かれていなかった本当の意味での予言だ。女神にばれる前提の預言書ではなく、彼女から、俺だけに伝えられた未来の話。

 先程、ラナは俺にこれから起こることを説明してみせた。バッドエンドになる道も危険な選ぶべきじゃない選択肢もだ。

 本当かどうかは起こっても居ないのでまだ分からないが、彼女はスパイが誰かを教えてくれ、何故女神が敗北に進むのかも教えてくれた。


 だが、所詮は予言だ。

 本当かどうかは分からない。

 だから、俺は参考程度に聞かせて貰うだけだ。


 ラナ自身も未来はかなり不定型でちょっとしたイレギュラー要素で容易く変化すると言っているしな。

 何しろ俺が今、脈絡も無く万歳するだけでも変化するらしいし。

 いや、どうなるか分からないから不確定な動きはしないけどさ。


「さて、私からの予言は今ので終わりですが」


 言葉を切って、チキサニが俺に視線を向ける。

 ラナが喋ってるはずなんだけどなんだろうな、相手がチキサニなので変な感覚だ。

 真剣な顔のチキサニってほぼ見た事ないんだよな。いや、魔王城来る前は結構真剣な顔だった気もしなくはないんだが、ここだとただのオプケ娘だからなぁ。


「ここからはラナリア首領として、我が社に登録して社員となったジャスティスセイバーに、首領として告げさせていただきます」


 首領として?

 思わず生唾を飲む。

 一体、俺に何をさせるつもりだ?


「我が社に喧嘩を打った女神を名乗る愚か者にラナリアの恐ろしさを徹底的に刻みつけてやってください。ラナリア首領、ラナより河上誠に勅令します。女神矢鵺歌をぶっ倒してやりなさい」


 クスリと笑い、ラナがいたずらっぽく微笑んだ。


「大丈夫。あなたはただ、自分の正義は女神を越える。そう、思い確信しながら剣を振る。それだけでいいんです。だって……あなたは正義の剣なのだから」


 いや、この場合ラナリアという悪の秘密結社に使われる剣だろ。

 でも、だけど……そうだな。首領、いや、もう魔王を顎で使う大魔王様からの勅令だ。謹んでお受けするとしよう。どの道、女神は倒さなきゃならないからな。魔王陛下の味方をさせて貰おうじゃないか。


「あなたは私の正義を行使するための剣。ラナリアの正義のため、存分に働きなさいジャスティスセイバー。では、御武運を」


 そう告げて、チキサニが瞳を閉じる。

 伝言はこれで終わりのようだ。

 次にチキサニが瞳を開いた時には、ただのオプケ娘に変わっていた。

 聖女の余韻を感じることなくブッとやりやがったぞこいつ。


「ん? 話終わったか?」


「ああ。まぁ、終わったっつか……お前は変わらんなぁ」


「クアニ大きくなった!」


「そう言う意味じゃねェよ」


 俺はチキサニにこれからの事を告げておく。稀良螺達と共にフラージャの洞窟に向えと告げると、コクリと頷いた。

 どうやら彼女が教えて貰った未来でも、フラージャ洞窟に向うのが最善らしい。

 ただし、今直ぐというわけじゃない。

 向かうタイミングも大事なのだとか。


「さて、まずは村襲撃と、防衛だな」


 部屋を出た俺は足早に謁見の間に戻ると、椅子に座っていたギュンターに指示を出す。

 適当にチキサニ護衛部隊を見繕うのと、ルーフェンたち襲撃部隊を組織するためだ。

 だがその前に、俺は既に城に来ているらしいムレーミアを訪ねることにした。


 今は食堂に居ると聞いたので、チキサニと共に向かうと、丁度アウグルティースとムレーミアが壊れた顔で食事を取っていた。

 魔木化していたのが余程堪えたようだ。いや、ムレーミアは最初からあんな感じか。


「よぉ。元気か二人とも」


「おお、これは魔王陛下。裏切りの将に何用で?」


「そろそろ殺してくれると嬉しいんだけど、まだ私は生かされるんですか?」


 病んでるなぁ二人とも。


「アウグルティース。お前に魔王から勅令を告げる」


「私に、ですか?」


「お前には特殊部隊を指揮して貰う。女神の度肝を抜くための部隊だ。詳しくは若萌に聞いてくれ。お前を大将に据えてやる。しっかり働け」


「また、裏切るやもしれぬ私に一軍を任せますか?」


「お前は魔王軍を裏切った訳じゃない。ギュンターに魔王に戻って貰いたいために俺を殺そうとしただけだ。ならばそれはそのままでいい。ギュンターのために、魔王国のために、お前の力を示してみろ。お前の働き次第で魔族は滅びる。雪辱を雪ぐにはいい配置だろう?」


「成る程、私の汚名を消すための配置ですか。わかりました。謹んでお受けいたしましょう」


 そう言って席を立つアウグルティース。若萌の居る場所へと向かうようだ。


「ムレーミア。お前にも指令を与える」


「医療現場じゃ無ければどこでも。ああ、死に場所なら大歓迎ですよ」


「最高の死に場だ。上手くすれば即死できる」


「あはっ。いいですね。喜んで向かいます」


「それでな。伝言を一つ頼みたいんだ。まぁ、伝える事が無ければそれでいいんだが」


「伝言……ですか? いいですよ」


 その村には、奴が居るらしい。

 黒の聖女が教えてくれた。エルダーマイア近郊の村を襲う理由。

 そこに、居るのだ。災厄を齎す不幸の神が。

 ルーフェンとムレーミアと若萌で話が出来ると良いんだが。いや、不幸なあいつのことだ、多分会話すらできないんだろうな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ