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次への布石1

「矢鵺歌とネンフィアス王は……いないか」


 翌日、皆を集めて再び会議室に集合させた俺は、空席になった三つの座席を見て息を吐く。

 本当に予言通りに逃げやがった。


「昨夜我と飲み明かす予定だったのだがな。急用ができたと自国に戻って行ってしまった」


 ギュンターが残念そうに言うが、こちらは全く気にしてないので適当に頷いておく。


「点呼を取る。各自自分の所属と名を」


「所属って、私何処になるのかしら、一応宰相? 若萌いるわよ」


「稀良螺も居ます。所属は……捕虜? あ、そう言えば私捕虜なんだった」


 今更再認識してがる。まぁ、そんなこと気にすることなく溶け込んでるみたいだから別に気にしちゃいないんだけど。魔王軍に染まってるな稀良螺の奴。随分と簡単に悪堕ちしたものだ。


「魔王軍近衛部隊部隊長、ムイムイです」

「同じく部隊員のペリカ既に来ています」

「同じくハゲテーラ、来てまーす」

「お、同じくマイツミーア、今日はこの座席でいいんですか?」


 マイツミーアも今回は普通に座って貰っている。愛でると真剣な話し合いが出来ないからな。若萌も凄く残念そうだが仕方無い。


「中央軍総司令官スクアーレ、参上済みにございます」

「西軍魔将トドロキ、同じく参上済みです」

「北軍魔将サイモン、右に同じく」

「東軍魔将ラガラッツ、お呼びにより参上つかまつりましてございます」

「南軍魔将カルヴァドゥス、ここに」

「同じく副将ルーフェンもおります」


 本来なら今日返って貰う予定だったのだが、少し時間を貰うことにした。

 皆には申し訳ないが、今日は魔王軍の方針を固める重要会議になるだろう。


「夜魔族族長コルデラ、ここにおります」

「我は魔神、でいいのかな? ラオルゥだ」

「魔神ルトラ、ディア様、昨日言われていたことはまだしておりませんが、よいので?」

「仕方ありません。今回は重要な会議ですので。これが終わってから急いで取りかかってください。魔神ディアリッチオ、参上済みにございます陛下」

「え? えっと、エルフ族のラオラ、います」

「勇者MEY来てまーす。私もここに呼ばれちゃっていいの?」

「エルジーです。スパイは役職に入るのでしょうか?」

「魔王の正妻ユクリティアッド、ここにおるぞ」

「元魔王ギュンター、来ておるぞ」

「魔王の嫁チキサニ、魔王に座ってる」


 いろいろ突っ込み所があるな。魔王の正妻と元魔王は役職じゃないだろ。

 あとチキサニはまた俺の上に座るのか。なぜ気に入られたんだろう? 全く分からん。

 まぁいい、とりあえず重要人物は全員参加してるな。あとエルジーにこれ話しちゃっていいんだろうか? まぁいいや、ルトバニアに報告されても問題はないだろう。後でネンフィアス以外の王族全員にディアの念話で伝える予定だし。あ、エルダーマイアとウェプチには伝えなくていいか。


「ふむ、矢鵺歌が見当たらんようだが?」


 ユクリの言葉にそう言えばと皆が気付いたようだが。俺は無視してメイドを呼ぶ。

 会議室にやって来たのはロシータと共に戻って来たメイドたち。

 昨夜急ピッチでディアに写して貰った預言書のコピーを資料として皆に配って貰う。


「これは?」


「チキサニのいたレシパチコタンに伝わる預言書らしい」


「違う。黒の聖女に貰った。クアニの預言書!」


 どっちでもいいよ。しかし、レシパチコタンではなくチキサニに渡されたものなのか。なぜチキサニなんだ? 理由があるんだろうか?


「ふむ。とりあえず。預言書と言うからには今より未来の話が書かれているわけか」


 ギュンターがそう言いながらぱらぱらとめくる。いや、今から説明するから。


「まずは1ページ目を見てほしい。既に終わっている予言は端折らせて貰った。一番最初にあるのは今の状況だ。矢鵺歌がネンフィアス王に取り入りネンフィアスに亡命することが書かれてある」


 まぁディアが写したので他の可能性の場所はワザと書いてないけどな。


「ふむ。確かに予言通りにはなっているようだな。そうか矢鵺歌が居ないのはネンフィアスに……亡命?」


「昨晩、ロシータが死んだ」


 寝耳に水だったのは全員だが、ロシータのメイドたちのショックが大きかったようだ。皆歩みを止めて思わず俺を見る。


「死んだ? そんなバカな。彼女は元気だったぞ。そんなにすぐ死ぬような症状は……」


「ギュンター、病死じゃない。殺害だ。犯人は既に分かっている。だから奴も亡命した」


「待てセイバー。それは……矢鵺歌が犯人だと言うのか!?」


 ユクリが察したようで声を張り上げる。

 ラオルゥも気付いたようだが、ユクリが叫んだことで開きかけた口を閉じていた。


「結論から先に言う。ロシータを殺したのは矢鵺歌。彼女の目的も判明した。奴は俺達勇者をこの世界に召喚し、絶望を与えて殺すことを見ることに楽しみを見出す腐った悪だ」


 思わず吐き捨てるように告げてしまった。

 意味が分からなかったようで皆が皆納得した顔をしていないが、俺は有無を言わさぬ口調でさらに告げる。


「奴の正体も分かった。弓羅矢鵺歌。アレが……この世界の神だ」

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