魔王軍報告会3
次はスクアーレの番だ。
スクアーレは周囲を見回してから一息。
精神を落ち付け話しだす。
「中央軍は各種族の連携を行っております。相性のいい兵士同士の組み合わせと悪い組み合わせを調べ、魔王陛下の名に恥じぬ軍への成長を目指しております」
俺の名と言われてもな、そこまで大したもんじゃないのでほどほどでいいと思う。
「あと、各師団からの要望書が届いておりますのでこちらを、後の会議で決めていただきたく」
横の人に手渡しを繰り返し、ギュンターから俺に届く要望書。結構あるな。
って、待て、なんだこの繁殖用雌馬の増加って。
折角なのでスクアーレに聞いてみると、どうやら馬型魔物からの要望らしい。バイコーンやらユニコーンなどが牝馬が少なくて言う事を聞かなくなっているらしい。
ユニコーンにはあまりいい感情はないんだよな。
「チエヘ ノチトゥイバ。こう、ぶちっと」
やめろチキサニ。このド変態が。なんとなくコイツの言葉が理解できてしまった自分が辛い。
とりあえず頭をぺしんと叩いておいた。
「アルカっ」
「スクアーレ。他には?」
「ありません。次の方どうぞ」
「ではコルデラ、頼んだ」
「え? 私ですか!?」
「いい。コルデラの話は纏めて我がしよう」
驚くコルデラを手で制し、ギュンターが告げる。
どうやらコルデラは殆どギュンターと一緒に過ごしていたらしい。
彼の助手として忙しなく動いていたそうで、何をやったかすらすでに覚えてないようだ。
ギュンターの報告では魔王の元へやって来た者たちの謁見と軍の指示など総合的な指揮を行ってくれていた。
俺、居なくても充分回る魔王軍。魔王、居る意味ってあるのか?
ま、まぁ皆が出来る人で楽が出来るのならいいことか。
ギュンターの報告を真剣に聞く部下達を見ながら俺はぼーっとしていた。
当然ギュンターの言葉は左から右にスルーである。
ちょっとボーっとし過ぎたようで、ギュンターの報告が終わってしまっていた。
はっと気付いたのはチキサニがオプケした時だ。思わず頭をはたいて我に返った。
慌てて横を見ると、残念。若萌も同じように聞いてなかったようで、俺がチキサニの頭を叩いたことで同じように我に返っていた。
マイツミーアいじり過ぎだ若萌。
「むぅ、セイバーよ、今の話聞いてなかっただろう」
「お、おおぅ!? な、何のことだギュンター」
「最後の話はなんだった?」
「えー、あー。すまん。聞いてなかった」
「だろうな。まぁいい。若萌殿が聞いておるだろうから問題は……」
「え? あ、そうね」
珍しく慌てた顔の若萌。どう見ても聞いてなかったのは明白だ。
結局ギュンターは二度目の説明を始めた。
成る程、ルトバニアで行われる武闘大会の出場者をピックアップしてくれてたのか。
「まぁ、後で話し合いになるのだろうが、ちゃんと聞いておいて頂きたいモノだな」
「すまんな。あまりにも真剣な話し合いだったもので蚊帳の外にいるようでな。ぼーっとしていた」
「まぁいい。次はペリカだったな。お前の番だ」
「は、はいっ!」
ギュンターに指名されて思わず立ち上がり気を付け姿勢のペリカ。まだ重役相手には緊張してしまうようだ。
「ハゲテーラとムイムイさんに一般的な会合や重役との謁見についての常識を教えておきました。忘れてなければもう教える必要はないと思われます。よって私はこれより魔王陛下の護衛任務に戻ることになります」
「そうか。お勤め御苦労ペリカ。これからもよろしく頼む」
「は、はい! 我が命に代えて」
重いよペリカ。
とりあえずハゲテーラとムイムイはそれなりに使える状態になったってことでいいんだな。
あとは俺の魔王としての常識が無いのが問題だが、ギュンターに聞いといた方がいいんだろうか?
「次は私でいいのかしら?」
「ああ。若萌たちの報告を頼む」
「ええ。私達は嘆きの洞窟にネンフィアス帝国に混じって向ったわ。向こうでルトバニアに居るスライム娘と会ったわよ」
「なんだ、モルガーナの奴エルダーマイアに来れたのか? 魔族はあそこマズイだろ?」
「スライムだから道具に化けていたらしいわよ」
「成る程な、スライム族や身体の作りを変えられる魔族なら鞄の中に入って潜入することも可能なのか、いい事を聞かせて貰った」
こらそこのネンフィアス。いや、まぁいいんだけどさ。盛大に笑うなおっさん。
「洞窟の奥でエルダーマイアの勇者と合流し、最後のボス部屋に向うまでは良かったのだけど……そこでレベル8000台のキマイラが出現したわ」
「8000!? レベル1000が最高じゃなかったのか?」
「さぁ。その……」
「そのことで、疑惑があります」
若萌の報告を遮るように、意を決した稀良螺が口を開いた。
その稀良螺に、若萌が思わず舌打ちするのを俺は見逃さなかった。
本日のアイヌ語
チ・チエヘ・チカプ=ち×× ※自主規制w
ノチトゥイバ=ちぎる




