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魔王側近集結

「帰ったかセイバー」


 謁見の間に戻ってくると、丁度ギュンターが玉座に座り、両隣りにコルデラとチキサニを立たせ、謁見を行っていた。

 彼の眼下で家臣の礼を取っているのは、ドヴェルグの長のようだ。


「お邪魔だったか?」


「いや、丁度良い。ヴェグザルド、魔王のご帰還だ」


「はっ!? こ、これは魔王陛下、ご機嫌麗しゅう」


 慌てて立ち上がった彼は、俺を見て同じように臣下の礼を行う。

 背丈は子供くらいで横幅のある筋肉質の男。

 顔は髭もじゃで立派な口髭が勇ましい。

 肌は浅黒く、服装は鍛冶師であると自己主張しているような姿だ。


「ドヴェルグのヴェグザルドか」


「はっ。ただいま鍛冶工場という現場に何人ものドヴェルグを働かせるという話があり、目標人数に到達したので報告に参ったしだいであります」


「ああ、人族領みたいに量産する計画の奴か」


「はっ」


「あー。いいよ。そこまで畏まらずとも。口調は崩していい」


「よろしいので? ふぅ、尊敬語ってなぁ使いなれねぇからこそばゆくって仕方無かったんだ。話の分かる魔王陛下でよかったぜ」


 すっげぇ遠慮ない口調になったな。まぁいいけど。


「丁度良い。ヴェグザルド、これは土産だ。工場のドヴェルグ共に差し入れてやれ」


「酒ですか!? なんという施し、皆喜ぶぜっ」


「ノーマンデの酒だ。これから流通する予定だから後で感想を聞かせてほしい」


「おうよ。そういうことならしっかり飲ませてもらうぜっ」


 がははと笑いながら上機嫌で去っていくヴェグザルド。報告、終わったのか?

 俺がギュンターを見上げると、困った顔をしているギュンターが頬を掻いた。

 どうやら報告前だったようだ。いらぬものを渡してしまった。あれでは酒のことしか頭になくなっているから報告などもう無理だろう。


「チキサニ、無事に着けたみたいだな」


「はい。メノコタスムになった以外は無事です」


 めのこ? なんだそ……


「あら、魔王陛下、御帰還なさいましたのね!」


 玉座の奥、側面方向から女性が一人やって来た。

 一瞬誰だ? と思ったが、良く良く見れば見知った顔の魔族令嬢が裾の長いスカートを両手で摘まみながらやってくる。

 歩きづらいならもうちょっと短いスカートにしろよ。結婚式じゃないんだぞ?


「ご機嫌麗しゅう」


 ふかぶか礼をして来たのは、行方不明となっていたはずのロシータ。


「無事だったのか。矢鵺歌が心配していたぞ?」


「御蔭さまで。人族に拉致された時は死を覚悟致しましたが、艱難苦難を乗り越えこうして戻って参りましたわ。いろいろとご報告したいことが御座います」


「分かった。すぐにでも聞こ……」


「あら、セイバー達の方が早かったのね」


 俺がロシータと共に会議室に向おうとすると、謁見の間入口から若萌たちが戻って来た。


「三人とももう戻って来たのか。洞窟探索だからもっと掛かると思ったが?」


「レベル8000の魔物と闘った反動で洞窟が崩れました。いろいろと報告がありますよ」


 代表するように稀良螺が告げる。なぜお前? と思ったのだが、成る程、ロシータを見付けたことで驚く矢鵺歌は目を見開いたまま固まって動けないでいるし、若萌はマイツミーアをこれでもかと撫でまわしている。若萌もマイツミーア成分補充したかったのか?


「ふむ。セイバーよ。どうせなら側近を集めて報告会でもするか?」


「そうだな。全員集まれるなら会議室でやるか。ディア、聞こえてんだろ。念話でもいいから参加してくれ」


 返事はなかったが会議室へと向かう。

 ギュンターがコルデラに指示を出し、主要人物を呼びに行かせる。

 魔王近衛軍の三人を呼ぶんだろう。


 会議室へと先に入る。

 背中越しにロシータに抱きつく矢鵺歌が見えたが、無粋なので無視して会議室に入ることにした。

 ところでチキサニ、あんたなんで俺の横に付いて来るんだ? 別に他の奴らと一緒でもいいんだけど……


 先に一番豪華な玉座みたいな座席に座る。

 一応、魔王用の座席らしいので俺がここに座らないと他の奴らが煩いんだ。

 って、チキサニさん、そこマイツミーア用の特等席なのですが?


 なぜか俺の膝に座ってくるチキサニさん。ちょこんと収まる姿は、まるで定位置とでもいうような当然といった佇まいをしている。

 マイツミーアは抗議しようとしたが、若萌に首根っこ掴まれて彼女の膝に収まった。

 チクショウ、俺の癒し……


「チキサニ、なんでそこに座った?」


 泣きそうな思いで聞いてみる。マイツミーアをモフれない……


「ギュンターニシパ言った。セイバーカモイの物になればコタン戻る必要ないと」


「ギュンター……」


「事実を答えたまでだぞ?」


 そう言いながら俺の隣に座ってくるギュンター。

 不満顔のユクリがその横に座る。

 俺の横に座ったのはラオルゥだ。こっちはご機嫌だな


「失礼魔王陛下」


 遅れてディアが転移で跳んで来た。MEYとエルフ娘さん、ついでにルトラ。

 扉からはスクアーレやペリカたち、ついでにエルジー。エルジー? ああ、そういえば和平交渉の時にこいついなかったな。俺の監視するんじゃなかったのか?

 本日のアイヌ語

メノコタスム=生理

ニシパ=紳士、あるいは旦那。尊敬する男性の敬称

カモイ=カムイとも呼ばれるが高い位の人物への敬称

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