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各国の同盟事情7

「ほぅ、もぅ来おったか」


 会食の場にやってくると、すでに着席していたルインタ女王が不敵な笑みを浮かべた。

 彼女は本日、白いシーツのような服を帯どめで止めた姿で、黄金のサークレットを頂き、蛇をあしらったイヤリングを付けていた。

 見た目エジプト神話辺りに出てきそうな服装だ。


 目の前の食事もエジプト感満載の料理、異世界人の影がちらつくのは仕方無いと思う。

 このルインタの城も特殊であり、初めて見た時はファラオの墓かと思ったほど三角錐な姿をしていた。

 門前はスフィンクスではなかったがパピルサグという名の魔物を象った石像の真下に入口があり、そこを通ってピラミッド内部へ。多分城じゃなくてピラミッドと呼ぶのが正しいのだろう。


 内装も石畳であったのだが、部屋はとても広く、頭に甕を乗せた女性や、蛇を首に巻いた女性を良く見かけた。

 一応、男性も何人か見掛けたが、女性の権力が強いらしい。殆ど媚び諂うような姿しか見られなかった。


「ルインタ女王、ここは女尊男卑でいいのか?」


「うむ。数十年前までは男尊女卑の国だったのだがな。我が母が権力を握っていた老害を毒殺し、暗殺しと成り上がったのだ、母の代で女性の権力が一気に上がってな。今では男性は奴隷のように扱うようになっている。唯一奴隷扱いされないのが兵士だ。だから男どもはこぞって兵士になりたがる」


 男達が料理を持って来るのを見ながらユクリはふむ。と顎をさする。


「これはこれでなかなか夢のある国よな」


「魔国じゃやらせんぞ?」


「ば、バカを申すな。余はセイバー一筋に決まっておろうが。貞淑な妻だぞ。浮気はせんわい」


「ほぅ、魔王には妻がいたのか?」


「ユクリはただの自称妻だよ。本妻はこのラオルゥだ」


 自分の胸に手を当てふふんと得意げに告げるラオルゥ。

 どっちも違うと反論しようとした俺だったが……


「愛人として一番の愛を貰っておりますにゃ!」


 なぜかマイツミーアが参戦していた。


「ほほぅ。魔王は随分と女好きなようじゃな。他国の女王までくどこうとするくらいであるしな」


 ちょっと待て、誤解だ。俺がいつ女王を口説いた?


「なんと、それは興味深い話だな。夫よ、ルインタ女王を口説いたのか?」


「いや、あのな……確かに可愛らしいとかお綺麗だとか言った覚えはあるが」


「わ、私が可愛い……」


 ルインタ女王、チョロイン過ぎじゃないか?

 ぽぉっと頬を染めたルインタ女王を見て思わず思う。ラオルゥも同じ思いらしく、クックと苦笑していた。


「こほん。と、とにかく食事と和平交渉じゃ。さっさと書類とやらをだしや」


「情報が早いな。これだ」


 美少年に書類を手渡ししばし待つ。

 書類を受け取ったルインタ女王は少し眉間に皺を寄せながらも最後まで和平の条件項目を見て行った。


「ふむ。我が国に魔族の奴隷はおらぬ。ゆえにこの辺りは無条件で飲もう。しかしだ。商人の流通に関しては少々条件を付けさせて貰う。男人禁制じゃ」


「男性の入国を禁止するのか?」


「違う。男が代表者となって商売しにくる商会が来るのを禁止する。女性が代表。それが条件だ。昔男の商人が母の代に商売に来てな。裏で我が国の女性を拉致して奴隷として他国に売ろうとしたことがあったのじゃ。もちろん女性たちの実力を見誤った男は惨殺されたが、以後男の商売人は国に入れぬことにしている。これは魔族といえども例外はない」


「成る程。そういう理由であればこちらも飲もう。ギュンターの方に詳しく伝えておく」


「うむ。あとこの辺りの項目なのだが男性目線なものばかりであろう」


「あー、その辺りは他国ではすんなりと受け入れられたな。魔族の女性を大使として送り、ついでに踊りでも踊らせるのが良いらしい。ネンフィアスからの案なのだが」


「我が国では余り意味が無いぞ。何しろメインの住人は女性だ。同じ女性の腰振りダンスなんぞ見せられても困る」


「美男子ならどうだ?」


「ふむ……魔族におるか?」


「好みは分かれそうだがチョイスは出来そうだしな。大使を女性のまま踊る存在だけ変えればいいだろう」


「別に大使なんぞいらぬとは思うがな。大使館か。検討はしてみよう」


 一つ一つ吟味しながら講和条約を詰めて行く。


「俺らからはそこの書類に有るのだけでいいんだが、ルインタからは何かあるか?」


「ふむ。そうじゃの。我が国では蛇が神聖視されておる。我が国に居らぬ種類の蛇がおるなら欲しいかの」


「蛇か……俺はあんま良い思い出ないからなぁ」


 蛇と聞いて思い出すのは初めての異世界で戦った蛇怪人や、そいつが所属していた秘密結社。その首領との因縁は余りに深い。


「一応、魔国の蛇についてはギュンター達と要相談だな」


「ふむ。ならば大使館の住人は蛇型魔族に限定してはどうだ。ナーガやらゴルゴーンなどがいるだろ」


 ユクリが珍しくまともな意見を言った。

 思わず彼女の額に手を当て熱の有無を確認したが、熱はなかったので採用する事にした。

 ルインタとはいい同盟関係が築けそうだ。

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