表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

212/337

各国の同盟事情2

 ノーマンデから一番近いカーランという国にやってきた。

 ここはデブった王様の納める国で、俺としてはあまり好きになれないタイプの国王なので手早く済ませたいと思う。


 会食場にやってきた俺を出迎えたカーラン王はすでに食事を始めていた。

 相手国の王が来る前から食事をしているのは不作法ではあるのだが、この国に関してはこれが普通らしい。ここに通される前に兵士さんにいろいろ説明受けたのだが、ここの国王は完全に血税で食事を楽しむクソ野郎だそうだ。


「やぁやぁ、よく来て下さった魔王殿。くっちゃくっちゃもっちゅ。さぁ、食事は用意してあるのだ遠慮なく喰ってくれたまえよ。もっきゅんぐっもぎゅ」


 喰うか喋るかにしてほしい。特にでぶったおっさんが口元汚しながら喰いまくってる姿はちょっとイラッと来るな。

 可愛い女性ならまだ許せるんだが。

 ラオルゥとユクリもちょっと引いてるみたいだ。

 マイツミーア? 相手の顔すらみてねぇや。

 俺は王の対面に座る。

 と言っても王様と俺を隔てているのは長い長方形の食台だ。正直かなり遠目におっさんの食事風景が見える位である。


 目の前にある食事はかなり豪華だ。鳥を丸ごと焼いたものやら、ゴツイ焼き肉などなど、肉料理がメインなようで野菜が殆ど見当たらない。

 本来なら美味しそうに食べるだろうユクリとラオルゥは、相手を見たせいで食欲が減衰したらしく、野菜を少し摘まんだだけだった。

 さっさと話を終えてしまおう。


 ネンフィアスと結んだ和平交渉の結果を宰相に渡す。

 魔族側から兵士、宰相の側近、宰相、国王の順に回される面倒臭さはどこの国も同じらしい。

 これは書物に毒などが塗られてないかの確認や、爆発物を防ぎ、国王や重役を守るために回りくどい伝達方法を取っているためである。


「こ、こんな条約を結んだのかネンフィアスは?」


「一応、ノーマンデでの話し合いからある程度許容されそうなものを上の方に、ノーマンデが断ったモノを下に書いてある。だが、基本その全てを了承して和平を結ばれることを俺は望んでいる。どうする? 内輪で話し合いをするならばしばらく待つが?」


「ふん。そんな必要はない。やれ!」


 と、宰相が何か言うより早く国王の一言で俺達に向って襲いかかってくる兵士達。


「バカめが、ディアリッチオを連れずに我が国にのこのこやってくるとはな。魔王恐るるに足りず。少人数出来た愚かさを悔いて死ね」


 アホか。と思わず呟く。

 俺の膝元が一瞬軽くなった。

 マイツミーアが動いたのだ。

 レベル4000の彼女が動いたので俺達は椅子に座ったままで充分だった。


 槍を蹴り飛ばし、爪で圧し折り、兵士達を瞬く間に無力化する。

 マイツミーアの体重が膝に再びかかったのは、数秒後だった。

 最初の一人が血飛沫散らしながら倒れると、他の兵士もドミノのように倒れ出す。


「な……バカな」


「バカはお前だカーラン国王。仮にも和平前の敵国に向うんだぞ。護衛くらい居るにきまっているだろう。レベル差があり過ぎるから一人だけだがな」


 マイツミーアの毛づくろいをしてやりながら呆れた口調で教えてやる。


「全く、呆れてモノも言えんな」


「我は好きだがな。こう、自信満々の相手が焦燥浮かべてバカな。とかいうのは特に」


「さて国王。和平相手を暗殺ということは、同盟は破棄ということでよいかな?」


 尊大に、呆然としていたカーラン王に告げる。

 一瞬で青白く顔を歪ませた国王に変わり、宰相が慌てて叫ぶ。


「滅相もありませぬ。我が国は……そう、貴方様方の実力を見たかったのでございます。我が国と対等に和平を結べるのかどうか。弱小国が嘘を付いている可能性もありましたゆえ、何卒、ご容赦を」


 テンパッてるなぁ宰相さん。墓穴掘ってるの気付いてないらしい。

 まぁいいけど。


「ソレは良かった。ならば和平に関して我々からそちらに特別に追加項目がある」


 ゴクリ。喉を鳴らしながら宰相は尋ねる。


「追加……項目?」


「そこに居る肉達磨。カーラン王の首だ。我が国と和平を結ぶのに、そこの王は邪魔にしかならなそうだからな」


「なっ。なぁっ!?」


「この項目は必須だ。これが守られぬ限りはカーランとの和平は無く直ぐにでも戦争を……」


「兵士達よ、国王の首を刎ねよっ!!」


 宰相の周囲で護衛に付いていた兵士達が血相変えて国王を突き刺した。

 お、おいおい、まさか目の前で国王殺すとは思わなかったぞ。

 いや、これはちょっと圧力掛け過ぎたってことだろうか?


「何卒、何卒戦争の回避を、和平交渉をっ!!」


「それはいいが、次の国王大丈夫か?」


「子供は事掻くことはございませぬ。すぐに王子が国王になりますゆえ、まずは和平交渉を」


 この宰相、ある意味邪悪だな。いや、国想いのいい奴なのだろうか?

 まぁ、その辺りは俺が判断するわけにはいかないか。

 とりあえず、この後の交渉はかなりすんなりと行われ、ネンフィアス帝国と同じ程度の条件で和平が結ばれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ