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魔神の庭のエルフ達1

「動くなっ!」


 開けた場所に出た瞬間だった。

 物凄い美系の男の声が響く。

 また、凄い光景だな。何だこの状況?


 巨大な木の周囲に広い湖があり、湖畔に出てきた俺達を取り囲むように美系の男女たちが手に手に弓矢を構えていらっしゃる。

 ……エルフ?

 なんでエルフがディアの森に居るの?


 思わずディアに視線を向ける。ディアは首を振った。

 私の庭にエルフはいません。そう言っているようだ。

 じゃあなんでいるの?


「何者だ貴様等!」


「ふむ。それはこちらの台詞ですよエルフたち。我が森になぜエルフが住んでいるのでしょう? いつ、どうやってここに来たのですかな?」


 押し殺しているようだが、かなりイラついてるのが分かる。魔神ディアリッチオ様がお怒りだ。

 というか本当になぜエルフが此処にいるの?


「我が森……?」


 ざわつくエルフたち。どういう意味だ? みたいな疑問符浮かべて周囲の仲間を窺う。


「理解しておられませんか? この地は昔から私が管理していた森なのですが。移民など許可した覚えはございません。一体いつから、どうやって森に侵入し、我の許可なく生活を始めているのですかな?」


 ピキピキっと聞こえそうなほどに青筋が浮かび始めている気がするのは気のせいだろうか?

 エルフたちよ、頼むからそれ以上の挑発を止めようか?


「ディア、ちょっと待とう」


「陛下? しかしですな。こやつらは我が森に許可なく……」


「まずは向こうの話を聞こう。やむにやまれぬ事情もあるかもしれんし、急にこの地に住みだしたと言うなら原因を知っておいた方がいいだろう?」


「それは……よいでしょう。その辺りの話は陛下に一任しましょう。少し頭を冷やしてまいります。終わりましたら念話を」


「分かった」


 どうやら頭を冷やすのにここではなく屋敷に戻るつもりらしい。ルトラ……死ぬなよ?

 ディアが消え去ったのを確認し、俺はエルフ達に近づく。

 ソレ以上動くな。と再度言われたが、こちらに攻撃の意思はないと両手を上げて手を開いたまま近づく。


「とりあえず双方情報を整理した方がいいと思うが? エルフの代表はどちらかな?」


「今、この時は俺が代表だ。こちらに話はない。ここは我等エルフの聖地。人族にも魔族にも屈しはしない」


「はぁ……お前ら知らないみたいだから一応、伝えとくけどさ、さっきいた奴の前でそれは言うなよ?」


「何? どういうことだ?」


「まずな、この土地なんだが、ここはディアリッチオの森。魔族領の中で不可侵とされる魔神ディアリッチオの管理する森なんだよ」


 ディアリッチオの名は聞いた事があるのだろう。

 ごくりと数人のエルフが喉を鳴らして青い顔をし始める。

 意味の分かってない顔をしているのはディアを知らない奴だな。おそらく若者なのだろう。

 うん、年長組と若者の区別全くつかない。顔を青くしてる奴ってだけしか判断材料が無いぞ。

 ちなみに、代表の青年は若い方らしくディアの名前を聞いても誰だソレは? みたいな顔をしている。


「誰の管理する土地であろうが聖樹様がいらっしゃる場所こそがエルフの……ふがっ!?」


 代表の青年が何かを言おうとしたのだが、慌てた年長エルフさんが彼の口を手で塞ぐ。


「ちょ、長老との会談を行っていただきたい。可能か!?」


「こちらはそのつもりで話しかけている。おそらく全エルフを交えて会話を行った方がいいだろう。話次第では殲滅させられるし」


「わ、分かった。少しだけ時間をくれ。直ぐに全員を集める」


 物凄い決死の顔をして叫ぶ男に、何かしらを感じた代表エルフが俺を見る。

 その顔は少し焦っている。もしかして自分は噛みついてはいけない存在に噛みついていたのか? そんな顔をしていた。


「どうしようか? 俺らは何処で待っていればいい? 集合地があるならそちらに案内してくれないか?」


「あ、ああ。わかった。エルクス、悪いが彼らを広場に」


「は!? 私がか!? わ、分かった」


 エルクスと呼ばれたのは先程から代表者だと言い張る若いエルフ。

 おそらく戦闘指揮等に対する代表者なのだろう。年長者であるエルフには頭が上がらないようだが。

 まぁ、年の差からしてオシメ変えた存在とかそんな年の差があるんだろう。

 エルフの実年齢全く分からんからどれくらいの年の差があるかわからんし。


「……まこと?」


「ん?」


 どこかで聞いたような声を聞いた気がした。

 声の聞こえた方角に視線を向ける。

 そこにいたのは黒い肌で背の小さな少女。服で隠れた両手で口元を押さえ、信じられない者を見るような顔で俺を見つめる見知った顔。

 身体のサイズに合ってない大きめのブレザーと学生用のスカート。ルーズソックスの懐かしい少女が感涙の涙を流していた。

 紫に染まった髪が柔らかな風に揺れる。


 MEYこと坂本芽依との再会だった。

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