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外伝・国王陛下お確かに5

「さて、ではそろそろ、本格的な議題に入るとしましょうか」


 メーレン国王が最後に締める。

 各国の現状報告では、ノーマンデとネンフィアスが相変わらず互いを牽制しており、ルトバニアとコーデクラが火花を散らしていたりときな臭い国々が幾つかあったが、全員王族という事もあり、言葉の応酬だけで終わる。

 ただし、少々ゴタ突き出していたので、メーレン王国が早急に報告会の終了を宣言したのだ。


 ここから先が、ルトバニアにとっての分水量だろう。

 全員の視線がルトバニアに集まる。

 代表するようにメーレン王が声を出す。


「前回魔国と和平を結ぶと言っていたルトバニア国だが、隣の男を見るに本当に魔国と和平をむすんだようですな。魔族は人族の敵。そう知っていてなおそれを行った理由を教えていただきたいものですな」


「ふむ。簡単に言うならば魔王が代替わりしたから。と言っておこう」


「魔王が代替わり? あのギュンターが倒れたのか?」


「実は先日バッシングを受けた勇者召喚で召喚された勇者たちなのですがな。その一人が魔族領にてギュンターと相対し、魔王の位を譲り受けたそうなのだ」


 王族の報告は基本回りくどくどうとでも取れる曖昧な言葉を使うべきなのが通常である。

 これは言質を取られ自国の不利になることを防ぐためであるといえるのだが、今回ルトバニア王は虚実織り交ぜ真実の中に数%の嘘を混ぜることにした。その方が都合がいいと判断したのである。


「ふむ? つまり今の魔王はルトバニアで召喚した勇者の一人、ということか?」


「まさに。ジャスティスセイバーを名乗るその男は今、魔族領では赤き魔王として恐れられているそうでな。会議の日に彼が魔王として我が娘と会い和平交渉を行ったのだ。なので皆が危惧するように我が国がムーラン国滅亡に恐れを抱き魔王に屈した訳ではないことを伝えておこう。今は交換留学を行っており互いの国の常識などを交換しあっておるよ」


「ふむ。つまりそちらの魔族がルトバニアに来る代わりにルトバニアの人族を魔族領に送ったと言う事か?」


 ネンフィアス皇帝は意図を察したようで顎鬚をさすりながら、ふむ。と頷く。


「その通り。我が国は他の国に先駆け魔族領の内情を手に入れておる。ロバート殿、どの辺りまで開放可能かな?」


「少々お待ちを」


 ルトバニア王の言葉に魔族の男が眼を閉じ何かを念じるようにしばし瞑目する。


「我が魔族領には秘密にするようなことは何も無い。出来れば他国とも和平を紡ぎたいと願っておりますゆえ、包み隠すことなくお伝えして良いと魔王陛下がおっしゃっております」


 魔王陛下が? 数国の王が怪訝な顔をする中、ロバートから許可を貰ったルトバニア王が第一関門突破。とばかりにニヤリと笑みを浮かべた。

 老獪な男のこの顔で、歴戦の王たちの顔に戦慄が走る。

 ルトバニアから、何らかの攻撃が来る。どの国が標的だ?


「いろいろとお教えしたい事はあるが。まずは軽いモノから参りましょうかな。皆様は魔神という存在を御存じでしょうかな?」


 ざわつきだす王族。覚えある国は少ないようだが、ノーマンデ王やエルダーマイア猊下、ルインタ女王などが頷く。


「ふむ。確か我が国にも伝わる御伽噺にあったな。確か、神を殺したディアリッチオだったか」


「うむ。魔族領には今、四人の魔神がいる。彼らはギュンター時代までは封印されていたが、赤き魔王の代で封印を解かれ、今は王の側近として存在しているそうだ」


「な、にぃっ!? 魔神を、従えているのか!?」


「歴代魔王すら手を出さなかったと言われておった魔神じゃぞ!?」


 驚く国々の王の中、ただ一人、攻撃の糸口を見つけたとほくそ笑んだのはエルダーマイア猊下。

 老獪な男の暗い笑みがルトバニア王を補足する。


「ルトバニア国王よ。我が国が把握している魔神は五柱。なぜ一柱を抜かしたのかね? まさかこの事実を伏せて各国への切り札として自国で匿っているなどしておるのではないか? 我が国ではそちらの国に魔神がいると聞いているが?」


「五柱? ルトバニアの、どういうことだ?」


「……はぁ。話は最後まで聞いていただきたいモノだなエルダーマイア猊下。儂はそなたに言いたい事を口を噤んでおくつもりでしたが、そちらから口火を切ると言うのならば仕方ありませんな」


 エルダーマイア猊下はルトバニアを孤立させられると思っての言葉だろうが、これが自分の首を絞めることに繋がるなど、全く思っても居なかったようだ。

 ルトバニア王の視線を見て、危機感が募る。自分は何を失敗したのか、理解できずとも失策を悟ったようだ。


「なるほど、確かに五柱いたことは認めましょう。ですが、既に居なくなった魔神まで数に入れる必要がありましょうや?」


「居なくなった? どういうことだルトバニア王?」


「魔神は五柱。魔族領の東西南北中央にそれぞれ封印されておった存在だ。中央には魔神ラオルゥ。北には魔神ディアリッチオ、東には魔神ルトラ、南に魔神シシルシ、そして今は亡き南のフラージャ。ロバートよ、どうしてフラージャはなくなったのだったかな?」


「魔王陛下が魔王として即位したことを魔神の方々へご報告に行った際、先に封印を解かれていたラオルゥ様が気に入らないという理由でフラージャ様を一撃・・で爆散させました。よって現存する魔神は四柱にございます」


 魔族から告げられた事実に、その場の誰も声を発す事が出来なかった。

 魔神による魔神の撃破。それが五柱から四柱となった事実であった。つまり、ラオルゥという魔神は、魔神と呼ばれるフラージャを一撃で破壊できる程の隔絶した実力があるという事を、彼らに知らしめたからであった。

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