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外伝・国王陛下お確かに2

「魔国への使節団からの定時連絡を報告致します」


 玉座に座っていたルトバニア国王とその横で立っていた宰相の元へ、黒衣の兵士がやってくる。

 彼は魔国に使節団として行っているエルジー達の報告をまとめ報告する役割を持っている連絡役である。

 その表情には随分と焦りが見える。どうやら余程凶悪な事実でも知ってしまったようだ。


「良いぞ。面をあげ報告せよ」


「はっ! まず魔国の情勢ですが、元魔王ギュンターと河上若萌が魔族軍の改革に着手しました。回復役の育成に専念しているようで、数多くの魔族が回復魔法を練習中です。それもサキュバスやウィッチだけでなくゴブリンやコボルトに至るまで全魔族に勇者自ら教え込んでいるそうです」


 それはつまり、魔族が今までのようにただ倒されるだけの脳筋ではなくなるという事になる。

 雑魚敵まで回復しだすと今までの兵士たちでは長引くだけ不利になる。

 こちらも回復魔法を一兵卒に至るまで教え込んでおかねばならないかもしれんな。国王は報告を聞きながら顎鬚をなぞる。


「魔国の現状については今までの報告通りにございます。際立った変化はありません。やはり魔族内で売られている武具は人族よりも手が込んでいると言わざるをえません。ドヴェルグやキュクロプスなど鍛冶に秀でた魔族が優秀すぎます。こちらを、魔国で購入した一般的な盾にございます」


「これが、一般的な盾……か」


 それはアダマンタイト鉱で作られた盾だった。装飾につかわれているのは白銀だろうか?

 盾の装飾は女性を象っていて、三つ目であることから、おそらく三眼族をモチーフにしたのだろう。もしかすればシシルシがモチーフなのかもしれない。


「現状、我が軍の剣で傷を付けるのは困難という他ありません。中央軍を見て来ました者からはこれより数段防備に優れた防具を装備していたとか」


 その部隊が攻め寄せて来たらと思うとぞっとしない国王。相対していた魔族軍は氷山の一角だったことを思い知らされた気分である。

 ちなみに、一つ一つは凝ったギミックを持つ武器防具が多いのだが、大量生産には向かないのが魔族の武具であるなどとは、彼らは全く気付いていない。


 魔族は一人一人が独創性を持っているため同じ物品を作ろうとする鍛冶師はほぼ皆無なのである。

 このため、強力な武具は作る技術はあるのだが、イマイチ普及していないのが魔族の武具なのであった。

 ギュンターの命令で中央軍こそおそろいの武具を手に入れているが、それ以外の軍に一式が送られていないのにはここに理由があるのであった。


「それで……魔王なのですが」


 少し言い淀む男に、国王はなにか嫌な予感がしてしまった。

 聞くべきではない。しかし、聞かなければならない。


「東西南北に存在する魔将の慰問を始めました。西側は陸地から離れているためか平和なようで魔将も一人しかいないようです。もしも魔国へ侵入するならばこの地が一番防備が薄いでしょう。ただ、魔王慰問によりその不利が埋められつつあります。船に使っていた固定砲台を港に設置しだしているそうです」


「もう少し前に発覚していればやりようはあったのだが、こればかりは仕方無いか」


「北では我が国とは別の人族国と戦争中のようです。軍師サイモンの策略により橋から先への侵入を防いでおるようで人族が苦戦気味です」


 あの辺りの国となればカーランかレインフォレストだろうか? とどうでもいいことを考える国王。


「サイモンは近くに存在する魔神ディアリッチオの森よりデスサイズベアなどの魔物を誘引して人族にぶつけているようです。このため魔将や魔族軍はほぼ無傷であるようです」


 ふむ。と頷く。北側からの侵入は現状無謀なようだ。

 自分の領地がそちらに無くて良かったとだけ思う事にする。


「また、魔族軍との会話により、ディアリッチオの森を荒らした場合魔神ディアリッチオの怒りに触れ、人族領が滅ぼされかねないとのことです。魔神の力は魔王以上。使節団からは魔神ディアリッチオの領地にだけは間違っても侵入しないようにと警告をだされました。軍の方に侵入不可能地区を書き記した魔国の地図を渡しておきました」


 そこに侵入しただけで国が滅ぶのか。国王はふぅっと息を吐く。魔神の恐ろしさはシシルシで充分理解できている。あんなのが本気で国潰しに来たとすれば、ルトバニアなど一瞬で消し飛ぶだろう。魔神には手を出さない。基本方針にしても問題は無さそうだ。


「南なのですが、我が国以外に勇者召喚を行っていた国があったようです」


「何だと? 聞いてないぞ?」


 国家間会議では一度も聞いたことが無かった。自分たちが勇者を召喚したと言った時も各国からブーイングが起こっただけである。あの中に勇者召喚をしていながら報告すらしなかった国があったなどと思うと、国王は怒りがふつふつと湧き上がるのだった。

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