魔王領慰問団7
「これはこれは魔王陛下、初めまして、ペ……メロニカでございます」
「ああ、よろしく」
サイモンとの話を終えた俺は、サイモンとエルジーを連れて各魔将を個別に回ることにした。
最初にやって来たのは食事を作っている場所でちょこまかと動いていた魔将、メロニカ。
ハーピー族の彼女は俺の姿を見た瞬間、あ、やべっ。みたいな顔をして逃げようとしたが、自分に向っている事に気付いて観念したように近づいて来た。
そして、自己紹介。
……ん? おかしいな。そういえば俺とこいつは初めてじゃないぞ? 何しろ魔将は新魔王お披露目会の時に自己紹介と、ついでに真名を捧げて貰ったし。
強制ステータス閲覧すればすぐにわかるか。えーっと、あれ? ペリカ? メロニカじゃないぞこいつ。
「そ、それで本日はどういった御用でございましょう魔王陛下」
「ああ、それなんだが、メロニカはどこにいる?」
「え? あ、あの、わ、私が、メロニカでございますが?」
指摘されたことが寝耳に水だったようで一瞬で脂汗塗れになりながら目を泳がせるメロニカ。もといペリカ。
寝ぐせのようなトサカを持った彼女は、顔は可愛らしい系。胴体までが人族と変わらない容姿で肌色が目のやり場に困る。一応胸元は軽鎧で隠してくれているからいいのだが、ブラジャータイプの防具なので、零れそうな胸が強調されてしまっている。
羽は純白で、手羽先の方だけ黒くなっている。
下半身は純白の羽毛に覆われており、足は鳥の足だ。鉤爪が痛そうだが細い脚は彼女の魅力を引きたてている。
「もう一度だけ、言うぞ? メロニカはどこだペリカ」
「あ、あうあぅあぅあぅっ、わた、わた、ひぃぃぃぃっ」
何かを言おうとしていたペリカは、観念したようでその場に土下座、申し訳ございませんっと叫びながら泣きだした。
「ち、違うんです。私、お願いします殺さないでっ。姉さんに言われて仕方無くっ」
俺はサイモンに視線を向ける。
サイモンもこれは予想外だったようで、開いた口を塞げず俺の疑問に反応すらしてくれなかった。
エルジーはもはや論外だ。
「まずは落ち付け。話を聞こう。そこの兵士、あの辺りの座席を借りるぞ」
兵士達が食事を取る場所なのだろう。簡易で作られたテーブルと椅子が幾つか設置されていたので、俺は適当なテーブルを指してペリカを連れて行く。
彼女を座らせ、俺が対面に、残りの二人が左右に座る。
「姉さん。メロニカはとても面倒臭がりで。昔は精力的に魔物を狩ってたのでレベルが上がって、魔将に抜擢されるまでになったんです。でも、思いのほか魔将として働くのが性に合わなかったらしく、次第怠け者になってしまいまして、その、私と双子ということもありまして、姉の代わりに私が魔将として、ここで働くことに……」
「レベル差があっただろ。よく今までバレなかったな」
「それは、その、最初の時にサイモン様がデスサイズベアのトドメを任せて頂いたので、ぎりぎり倒す事が出来て、それでレベルが上がったことで後はスムーズに」
「な、成る程、メロニカさんにしては随分苦戦したような気がしてましたが、そういうカラクリが。調子が悪いあの日だったと言われて納得してしまっておりました」
ハーピーにあるのかあの日? 卵生だろ? タマゴ産むだけじゃねェの?
「あ、あの、わ、私はどうなるのでしょうか?」
不安げに尋ねて来るペリカ。しかし、彼女に罪は、まぁ偽証ってのはあるけど姉のためにと思えば許せる範囲だ。姉に関しても別に俺への叛意は無さそうだし、彼女たちは悪ではないだろう。
「そうだな。とりあえずメロニカに早急にここに来るよう伝えてくれ。その時に話そう」
あ、これだと諸共に打ち首みたいに考えるかも。ペリカが物凄く青い顔で震えだしたぞ。
「あー、そこまで恐れなくていい。酷い事にはならないから」
「し、しかし……」
「ついでに一つ聞いておきたいんだけど」
「な、何でございましょう。私で応えられる事ならば」
「今のお前のレベル。メロニカと比べてどうなってる?」
俺の言葉にさらにうろたえるペリカ。
「確か、メロニカのレベルは428だったかと思います。それからここの魔物を狩っていないとなると、おそらくレベル自体はほぼ上がっていないはず」
となると、この地域にずっと居て魔物を狩っていたペリカは……
「ご、573になりました」
100レベル以上の差が付いていらっしゃった。
『これ、ペリカちゃんを魔将に格上げした方がよくね? メロニカ降格させちまえよ』
そういう訳にもいかんだろ。
「そうだな……ペリカ。もしお前がよければだが、魔王直属部隊に来る気はないか?」
レベル500越えてるならルトラにダメージ与えられるだろうから、レベル上げもできるし、ここらで俺の護衛を自作しとくのもアリだな。
突然の勧誘を理解しきれなかったペリカは目を白黒させて俺を見ていた。
うーん、ちょっと急ぎ過ぎたかな?




