表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/110

第七十一話「一万二千年前」

 俺は精神年齢30歳のミッドガル王国の王子。

 今は8歳で、元ブサメンヒキニートのナイスガイだ。

 初恋で撃沈し、『告白魔』たる不名誉なあだ名をつけられ、それをきっかけに部屋へと引き籠った。 

 親孝行する間もなく両親は交通事故で他界。

 それからは孤独と絶望との戦いの人生であった。


 失った過去は取り戻せない。


 否。


「俺は不可能を可能に変える男だ」

 

 などとカッコイイ事を言ってみたが、全てはタイムマシーンがあるからである。

 タイムマシーンを使えば連続する時間軸を旅することができる。


 その連続した時間軸には、俺が過去に殺した同級生が生きている時間もある。

 過去に戻れば、俺に殺された同級生を俺が俺から救ってやることも可能だ。


 だからと言って、この世界で既に死んだ彼らが生き返ることはない。

 彼らが死ななかった場合の別の未来が作られるだけだ。

 では、この世界で死んだはずの彼らを、この世界に連れてくると、どうなるのだろうか?

 もし、それが可能なら奇妙な状況が生まれるのでは、ないのだろうか。 


 かつて未来からきたドロシーは俺に言っていた。


『俺が生きてる未来が一つぐらいあってもいいと』


 つまり、俺がこの世界で召喚勇者に殺されなかったとしても、未来から来たドロシーの世界の俺はやはり死んだままだと思う。

 それは未来からきたドロシーにとって、状況は一切好転していないことを意味する。


 俺を連れて帰りたいと思わなかったのか?

 それとも、連れ帰ることは不可能なのだろうか。


 それを確かめるには俺自身がタイムマシーンを使ってみる必要がある。




 ◆◆◆




『主よ、クララとともに待っておるぞ』


 クララとは、花咲く氷の女王の卵から産まれた、ホワイトドラゴンにドロシーがつけた名前だ。

 クララはドラちゃんの娘でもある。

 ドラちゃんはクララを鼻の上に乗せては可愛がっている。

 クララもドラちゃんが父親だとわかるのだろう。

 とても微笑ましい光景だった。


 俺はドロシーと二人で、竜王城へと足を運んだ。

 久しぶりに会う、竜王様は前よりも随分と元気になっていた。


「竜王様、お久しぶりでございます」

「お父様、お元気そうでなによりなのです!」


 ドロシーにとって、竜王様は父親同然だ。

 竜王様にとっても、ドロシーがたったひとりの家族なのである。

 俺がドロシーと結ばれたら竜王様は必然、俺の伯父となる訳だ。

 ならば、竜王様は俺にとっても家族同然である。


「王子よ、今日はどういった用件で参ったのじゃ?」


 バケツ? いや、あのロボットに用事がある。


「竜王様、ここにヘンテコなロボットがいますよね?」

「はて? ロボットとは如何なるものか?」


 眉間にしわを寄せる竜王様に、ドロシーが補足してくれた。


「アールフォーのことですよ、お父様」


 ロボットにはアールフォーって名前があるようだ。


「あ、そうです、そのアールフォーに用事があるんです」

「その辺、ウロウロしてるじゃろ、探してみるとよいぞ」


 どうやら勝手に動き回ってるようだった。

 しかし、あのロボ。

 どうして俺にあんな映像を見せたのだろう。

 竜王様もドロシーも、あの映像を見たことはないそうだ。


「んじゃ、適当に探してきます。竜王様、ありがとうございます!」


 俺とドロシーは城内を探し回った。

 アールフォーは直ぐに見つかる。

 竜王城の通路の一角で、城の補修工事をしているようだった。


「お前、アールフォーって言うんだな」


 話しかけると、首がグインと回転し、カメラのレンズのような目を俺に向けた。

 ロボットと意志の疎通ができるのか。

 わからないけど、話しかけてみる。


「この前の映像のをもう一度見せてくれないか?」

「アールフォー、お願いなのです!」


 ドロシーも頼んでくれた。

 ピポパポと、電子音が鳴ると前回見た映像と同じものが流れた。

 今度は画面全体を慎重に注視する。


 前回はミリタリー装備で固める結城孝生こと伝説の六英雄に気を取られ、背景を見ていなかった。

 その背景に何かしらのヒントが隠されてるやもしれない。


 市街戦でもあったのだろうか。

 コンクリートで建造されたと考えられる、建物が崩壊していた。

 空爆でも受けたのだろう。

 建造物はどこぞの大型ショッピングモールのようだった。


 ……あっ! あの朱色の看板は見たことがあるぞ!


 俺も買い物に足を運んだことがある。

 たしかラテン語で永遠を意味する名のショッピングセンターだ。


 と、なると……。


 俺が過去生きていた時代とそう遠くない時代だ。

 もしや、これが第三次世界大戦なのか?


 白鳥渚が眠る石碑に、大きな戦争があったと記されてもいた。

 なら、このロボット。

 俺が過去に生きていた同時代から存在してることになる。

 こいつなら、わかるはずだ。

 

 映像は前回、ブチっと切れたところまで差しかかった。

 でもまだ続きがあるような気がする。


 映像が激しく揺れる。

 結城孝生が走りだした。

 映像が揺れているのは、アールフォーが彼を追いながら撮影しているからだろう。

 

 そして俺は目を疑った。

 彼らは一体、何と戦ってるのだ?


 ――――彼らが戦ってる相手は人間ではなかった。


 異形の存在だ。

 とても形容しがたい。

 形容しがたいが、一言で言うなれば、この世界では見慣れた存在だ。

 

 俺は魔法都市エンディミオンで、解き放たれた歴史を垣間見た。

 無論、人類のルーツまでは解き明かせなかったが。

 少なくとも、遙か遠い人類の歴史を知ったと感じ得た。


 進化論と創造論。


 そのどちらとも言えなかった。


 宇宙からの移民族。

 地球では、それが最古の人類であったからだ。


 真の意味で人類のルーツを探究するなら、それは地球の外を追い求めねばならない。

 そう考えざるを得なかったのだ。


 俺が生きた過去の時代。


『メガラニカ』の時代と書き記されていた。


 つまり、魔法文明よりも科学の文明が凌駕してた時代と言うことだ。

 今、俺が生きてる時代は、そうではない。

 科学は衰退し、どちらかと言うと、魔法文明が勝っている。


『レムリア』の時代なのだ。


 ユーグリットからの帰り道。

 俺は、とある事をシャーロットに尋ねた。


『魔神戦争で、戦った邪神ってどんな姿だったの?』

『なんて答えたらいいのかしらねぇ……口じゃとても説明しにくいのよ』

『そうなの?』

『鋼の肉体を持ってたのよ』

『鋼の肉体?』

『そうよ、魔法の大半が無効化されるし、刃も受け付けない存在ね』


 邪神はよっぽど鍛え抜いた肉体でも持っていたのか?

 それとも、SFにありがちなパターンで、マザーコンピュターが暴走し、機械が人を襲ってるとか、そんな風に考えていた。


 だが――――

 

 結城孝生が戦ってる相手は、機械じみたモノではなかった。


 どちらかと言えば生物だ。

 生物と言うよりも魔物だった。


 そう……今、俺が生きている、この時代に存在している、ごくごく普通の魔物なのだ。

 それはゴブリンでもありオークでもある。

 他にも様々な魔物がいるようだが。


 頭が混乱してきたので、一度、頭の中を整理してみた。


 俺がブサメンで生きてきた過去の時代は『メガラニカ』で、科学文明。

 その科学文明を滅ぼしたのが、賢者率いる『レムリア』勢力。


 そして俺が今、生きてる時代は、明らかに『レムリア』だ。

 魔法文明が科学を凌駕しているからだ。


 そう考えると、俺はその『レムリア』の猛攻があったブサメン時代。

 既に、エミリーの胎内で眠っいたことになる。


 複雑な気分だ。

 それもそうだ……・

 俺がこよなく愛してやまなかったPCやエロゲーは、『メガラニカ』の時代なればこそのモノだからだ。


 ……ってことは?


 次の魔神戦争で俺達が負ければ、また『メガラニカ』の時代が訪れるってことじゃないか。


 そうなればまた、PCやゲームを満喫できるってことなのか?


 俺は自分の浅はかな考えを戒めるように、首をふるふると振った。

 そして物想いに耽ってる俺にドロシーが遠慮がちに尋ねてきた。


「王子、何かわかりましたか?」

「なんとなくね……でも、肝心なことが、わからないだよね」


 結城孝生がマシンガンでゴブリンを蹴散らし終わったところで、映像は切れた。


「このアールフォーが僕達に見せた時代って、いつ頃なんだろうね?」

「アールフォーに聞いてみるのです」

「えっ!? ドロシーは、アールフォーと話せるの?」

「もちろんですよ、長い付き合いなんですもん」


 そうだった……。

 ドロシーの中学生みたいな容姿と、子どもぽい口調で、すっかり忘れてた。

 彼女は300歳を超えてるんだった……。

 アールフォーとも300年来のお付き合いなんだろう。


「王子、わかりましたよ」

「え、本当?」

「はい、1万2千9百89年と2カ月に11時間37分32秒らしいのです」


 どんだけ、こまかいの……。

 ヤレヤレと思った。

 

 1万2千年前って、寝過ぎだろ、俺っ!


 それだけの過去に戻るには、どれほどの魔力結晶が必要なんだろうか。

 

 こりゃあ……骨が折れそうだ……。


 しかし、過去から召喚された勇者達がいるんだ。

 不可能ではないと彼らの存在が、証明している。


 俺達はアールフォーに礼を伝え、竜王様と挨拶を交わし、なるはやに帰宅した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ