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第五十三話「解き放たれた歴史」

※改稿済み(2017/5/22)

 開かずの扉の封印を解いたその先の壁面は全て本棚であり、数え切れないほどの書物が埋蔵されていた。


 そしてその中の一冊を無作為に引き抜いた俺は、心の中で絶句。


 この厚み、この手触り、この表紙の加工技術。そのどれもが懐かしく馴染み深いものなのだ。しかもこの表紙の右側には頭がつるりとした異星人。中央には年中顔色の悪い異星人がぶすっとした顔で腕を組んでおり、左端には金髪が逆立った青年が描かれていた。


「マンガで間違いないよな……」


 パラリとページを捲ると、金髪が逆立った青年が『オレは怒ったぞー! プリーザ!』と、怒りの声をあげていた。


「ルーシェ、その本が気になるのか? どんな本なんだ?」


 ついつい読み耽っていた俺にラルフが神妙な面持ちで聞いて来た。


「ラルフが気にかけるような本じゃないよ」

「ふむ、そうか……ならもっと先に進むぞ! この奥には世界の歴史が記された本が台座に添えられているらしいからな」

「う、うん……」


 歩きながら本棚に収納された数多くの蔵書の背表紙を流し見ると、マンガに限らず、あらゆるジャンルの小説。図鑑や事典、学習参考書から聖書まであるようだ。


 それでもやはり俺が気になるのはマンガやラノベ。その中でも巻数の多い物は目につきやすい。手足がゴムのように伸びる少年が海賊王を目指すマンガや、VRの世界に閉じ込められた黒眼黒髪の少年が浮遊城を攻略していくラノベなどもあった。


 ミッドガル王立図書館では、けしてお目にかかれない本が山のようにあるのだ。

 

 ラルフの話を聞くと、この開かずの扉にある蔵書の数々は旧時代の書物であり、世の中の混乱を防ぐために、この魔法学園の図書館の地下に封印されたようなのだ。


 ここにある知識を独占しようものなら、ひと財産、いやいや……利用の仕方によっては世界を牛耳ることすら可能かもしれない。


 ていうか……勝手に封印を解いちゃって良いような場所だったの?


「気にするなルーシェ。学長も言っていただろ? 『開けれるものなら開けてみなさい。どうせ無理だから』ってよ」


 確かに膨大な魔力が必要だった。生半可な魔力総量では、封印を解く前に魔力欠乏状態。自分の魔力総量を鼻に掛ける訳ではないが、この俺がこの開かずの扉にチャレンジするのはビディも想定外だったんじゃないだろうか?


 いや……まてよ? 以前にもチャレンジしてるんだもんな?


 そう言えば前に魔術師ギルドで魔術を披露した時、ビディは俺にこう言っていた。


『いつものルーシェちゃんなら魔欠症状態に陥り、倒れ込んでも不思議じゃない消費量』だと。


 つまり、以前の俺の魔力総量は人より少し多かった程度なのかもしれない。魔法学園で授与された称号にしても、中級魔術師(ソーサラー)であった。それは、歳の割には頭一つ抜け出ている程度のものだ。


 今まで深く考えたことが無かったが、異常なまでの魔力総量を得たのは、高熱から目覚めて、過去の記憶が蘇ったことが起因しているのではないのだろうか。ひょっとして、今の俺がこの開かずの扉に挑むことをビディに公言したら、有無言わず止められたかもしれないな。


「これだっ! この書物に間違いないぞ、みんなっ!」


 ラルフが嬉しそうに叫んだ。


 台座に添えられた本にラルフが触れようとするその前に、ミルフィーが表紙の埃へ「ふー」と、息を吹きかける。ドロシーも興味津々のようだ。


 ラルフが表紙を開いた。最初のページは目次のようだが――――


「なんだか期待ハズレだにゃんにゃん!」

「う、うう~む……」


 ミルフィーは愚痴ぽく呟き、ラルフは難しい表情で唸った。


 その原因は文字だ。この本は日本語で書かれている。


「まったく読めないにゃん! さっぱりにゃん!」


 ページを捲りつつ、ラルフも「見たことのない文字だ……参ったな……」


 残念そうに落胆した。

 そんな状況の中でもドロシーは諦める様子もなく、大きな瞳で文字をなぞっていた。


「これはニホン語なのですよ」

「ニホン語?」

「はい、なのです」

「ニホン語ってなんなのにゃん?」

「ドロシーちゃんはこの文字が読めるってことなのか?」


 ラルフとミルフィーが期待の眼差しをドロシーに向けたのだが、ドロシーも全部の意味が理解できる訳では無く、一部の単語が読める程度のようだ。


 それでも十分凄いよドロシー。でも、どうしてドロシーに日本語がわかるの?

 その理由をドロシーに訊いてみる。


「お父様が英雄王にニホン語を少し教わったことがあるのですよ」


 なるほどな。その数少ない日本語の知識を頼りに、竜王城にあるタイムマシンの解析をしていたのだろう。


 なら、元日本人の俺が読んで皆に内容を伝えるか。


「はーん? なんだルーシェ? お前にもわかるのか? そのニホン語ってやつが……?」

「うん、僕も少々かじったことがあるんだよ」

「ニホン語って学園でも習わない言語だぞ? そんな言語一体どこで習ったんだ?」

「あ……ええっと……どこだっけ?」

 

 ラルフが訝しい視線を向けてきたよ。迂闊だったな。


 よくよく考えるとラルフ達の視点からだと、俺が日本語を知ってる訳がないんだよな。

 でも……召喚勇者達も普通に日本語で会話しているのだ。言葉なら不思議と意思疎通できるのだが、文字となると、そうもいかないのか。


 しばしの沈黙の後。


「まぁいいや。読めるなら何が書かれているのか、オレ達にもわかるように教えてくれないか?」

「うん、わかったよ」

「悔しいが学園一の天才だもんなお前。特別に師匠からこっそり習ったんだろ?」

「あはは……そうなのかな?」

「深く追求はしないよ。お前ら師弟間の話だからな。読めるならそれに越したことはない。さあ早く読んで教えてくれ」


 パラパラとページを捲りつつ、最初は流し読みしていたのだが、あまりにも書かれている内容が衝撃的で、気がつけば無我夢中で読んでいた。


 これは……人類の歴史そのものがひっくり返るぞ。


 この本に書かれていることが真実であるのなら、進化論も創造論もその根底が確実に揺らぐ可能性を秘めている。


 人類が地球で栄える以前のことまでが、詳細に書かれているのだ。


 とある惑星での話だ。


 その星は日本神話で伝えられているヤマタノオロチや、ギリシャ神話で伝えられているヒュドラなどが普通に棲息していた星のようなのだ。しかもそのどちらもが、同じ魔物だ。首が九本あるヒュドラは、首と首との間のマタの数は八。つまり、ハチマタのオロチだ。


 まぁ、そこはいいのだが、地球上で語られている神話のその多くは、地球上での出来事ではなく、別の惑星での出来事が神話として語り継がれていたのだ。


 その惑星には二つの大きな勢力があった。


 その一つが『レムリア王国』魔導によって栄え、偉大なる賢者が統治した国のようだ。


 もう一つが『メガラニカ王国』強力なカリスマを持つ者が、科学の名をもって治めたらしい。


 その両国は鮮烈極まる戦争をしたようだ。そして両国は互いに滅びの道を進んだ。


 荒廃した星は死の惑星となり、その星から新たな安住の地を求め、生き残った支族達がこの地球に宇宙船で辿り着いたようだ。つまり彼らが地球人の祖であるのだ。


 地球人の祖は、この地球の環境を整備しつつ、住みやすい星に変化させていった。魔導文明の者達も、科学文明の者達も手を取り合い。 


 そしてレムリアの支族はジパングに渡り、メガラニカの支族は、エジプトから古代イスラエルの地へと流れたようだ。


 だが、平穏な日々はそう長く続かなかったようだ。


 その最もたる要因は、徐々に増える人口が起因していた。人口が増加すると対立が生まれる。

 

 元来、対立していた支族の集合体である。人口が増加するに連れ、地球の支配権を魔導文明側が握るのか、はたまた科学文明側が握るのかで、争いが始まったようなのだ。


 それから大きな戦いが三度あったらしい。


 メガラニカ側は、海底を唸らせ、大洪水を引き起こす兵器。

 レムリア側は、宇宙より隕石を呼び寄せる神級の魔術。

 反撃の狼煙をあげたメガラニカ側は、核兵器の使用に踏み切った。

 古代核戦争だ。


 その後、レムリア側の支族達は、地球上から忽然と姿を眩ましたようだ。

 

 だが、今現在も水面下では魔導文明と科学文明の戦いは終わっていないように感じられた。


 その理由は、その後の世界大戦や、天変地異。その他もろもろが、突発的な出来事でなく、争いの中で人為的に操作されたものだと記されているからだ。想像もできないほど長い歴史の中で二つの勢力は、この地上で覇権争いを幾度も繰り返してきていたのだ。


 この本の著者フィズバンことレムリアの大賢者がそう語っていた。


 また、過去の俺がヒキニートしていた時代は、メガラニカの勢力が強い時代だったようだ。ならば……今の時代は?




 科学が衰退し、剣と魔法の世界となっている。




 そして――――魔逢星。

 それは……科学文明の最終兵器とあった。




 さらに突如、最後のページ捲った時に、俺の脳内に声が響いた。




『フォフォフォ! まさかこの本を読める者が現れるとはな。実に素晴らしいぞ。もしこの本を読んだお主が、ワシに会いたいと思ったのなら、かの英雄王存命の時代。その彼が結城秀生と呼ばれておった時代でワシは待っておるぞ!』


 ……えっ!? な、なに突然?


 脳内で問いかけてみたのだが返事はない。この本に何かしらの魔術が施されていたのか?

 ていうか、その時代っていつの時代よ……。


 ともあれこの星が地球であることがわかった。

 前々からそうじゃないの? とは、常々思っていたのだが、確実性が乏しかったのだ。


 すっきりしたな。


「おいおい、なに一人で納得してるんだ? どうなんだ? 何が書かれていたのだ?」


 本を閉じた俺は、書かれていたことを皆に話した。


「なるほど……」


 ラルフはそう言って考え込むと、


「なあ、鋼鉄のドラゴンに関する記述はなかったか?」


 それって……たぶん戦闘機のことだよな? しかし触れられているような箇所は特になかったような気がする。


「それがどうかしたの?」

「大昔、そんな乗り物があったという話を聞いたことがあったからな……いや、いいんだ。書かれてないならな」


 戦闘機に興味があるんだな? 俺の知っている知識を話してもいいのだが、何故、お前はそんなモノまで知っているんだ? って、また突っ込まれそう……でも、落胆しているラルフを見ていると、なんか寂しげ。


「つまんない話だったにゃーん! 全然意味がわからなかったにゃーん! お腹空いたにゃーん! ドロシーたん、学食に行こうにゃーん!」

「う、うん。そうですね。ご飯食べにいくのですよ」

「そうだな……オレも魔力を消費して腹が減ってきたよ。久々にルーシェに会えたんだし、皆で飯にしようか!」

「さすがラルフたん話が早いにゃーん!」



 こうして、俺達は久々に和気あいあいと、語り合うのであった。


話数的にやっとこ半分改稿終了です。

先は長いですね。ペース落ちてますが、理由は、他にも色々書いてみたりしてるのです。

あと、仕事がちょいと忙しい感じです。

引き続き頑張っていこうと思ってますのでよろしくお願いいたします。

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