第四十四話「思惑」
※改稿済み(2017/4/29)
翌日の朝。
晴れやかな空の下、俺とメアリーは竜王城へ向かうため楽しく飛行中であるのだが、俺は昨日の一件を思い返していた。伯父上のことだ。なんで俺に対してあんなに優しかったのだろうかと。
オースティン公爵は王位継承権第二位の人である。つまりフィルがいなければ次期国王になれる立場。だから伯父上はフィルの決闘を焚きつけ、親父に対しても厳しいことばかり言って嫌がらせしていると思っていたのだ。
それなのに俺には優しかった。さいあくのケースも考えた。王国と法王庁を巻き込んだ大事件の渦中の人物として、ヘンな形で祭り上げられるかもしれないと。その時は腹を括り一戦も辞さない覚悟だった。なんだか拍子抜けだな。
「ルーシェ様、浮かぬ顔してどうかされたんですか?」
俺の耳元でメアリーが囁きかけてきた。
「ああ、伯父上のことを考えていたんだよ」
「と、申されますと?」
8歳になってしまったが、7歳までの記憶が無いことが誤解を招いた原因かもしれない。実はめちゃくちゃ良い人だったりして?
「伯父上ってどんな人なの?」
「とても厳しい方なので、そんな一面ばかり目立ってしまうと思いますが、誰よりも国を愛し、ミッドガル王国の行く末を案じていらっしゃる方だとも言われてますよ」
「え? そうなん?」
「ええ、ですから帝国との国境線に自ら城を築き、睨みを利かしているのですよ」
「ふ~ん、そうなんだ」
伯父上の名はオースティン・フェリエール・シュトラウス。ミドルネームは自ら築城した城から由来しているようで、そのフェリエール城はミッドガル王城より北西に位置しており、軍事都市の体を成しているそうだ。
また、ミッドガル王国、最強騎士団である白き鷹の騎士団が常駐している場所でもある。その騎士団の隊長がバーソロミュー・ヘルムート公爵であり、伯父上の懐刀とも呼ばれている男だ。かなりの豪傑らしい。
さらにその相対する帝国なのだが、その帝国はファリアス帝国と呼ばれ、かつて全世界に影響力を及ぼした大帝国であったらしいのだ。しかしその栄華も魔神戦争勃発後、衰退の一途を辿ったそうだ。だがしかし、かつての栄光を取り戻そうと下準備を推し進めていると聞く。まだ戦争になりそうな気配はないんだけどね。
平和が一番だよ。
「そうそうルーシェ様がお生まれになった時も、公爵様は大変お喜びで、めちゃくちゃ可愛がっていらっしゃたのですよ」
「へ? ほんとに? でもさ伯父上は父君にも厳し過ぎやしないか? それにフィルのことだって……」
「ルーシェ様の父君に対して風当たりが強いのは……え~と……私の口からは申し上げにくいですね……」
「なんで?」
メアリーはしゃべるのを憚るように戸惑う。
「気になるから教えてよ?」
「ん~」
「ねー?」
「時間にルーズだからですよ……」
「納得……」
「私がこんなこと言ったなんてぜーったいに言わないでくださいよ!」
「うん、わかってるよ」
俺が君を困らすようなこと、する訳ないだろ?
「それにね。ルーシェ様。アイザック様は公爵のことを嫌ってないのですよ。子どもの頃から仲良しだって言ってました。ですので、本当は仲が良いんだと私は思ってますよ」
「父君と伯父上がねぇ……ふ~ん」
そんな親父はメアリーに『俺は王族としての自覚が足りない』と、言って豪快に笑って話していたようだ。王位継承権にもあまり興味はなく、国王になる気もさらさらないらしい。
「じゃあフィルの決闘の件はどう思ってるの? 発端は郷田だけど、伯父上はシメオンとグルになって焚きつけたように俺には見えたよ?」
「ん~どうなんでしょうね」
「もしさフィルに万一のことがあったら大変なことになってるんじゃない? それこそ国は繁栄どころか、乱れるんじゃないの?」
「その場合は、王位継承権第二位のオースティン公爵様が、時期国王になられますよ」
それぐらい理解してるし、俺が聞きたいのはそんな話じゃないんだけどな。もっとメタな話だ。
「メアリーは、フィルが死んじゃっても良かったの?」
「そんなことはないですよ。でも、あの決闘でフィリップ王子が命を落とすことはなかったと思ってますよ」
へ……なんで? フィルが郷田に勝てたとは思えないけど。
訳わかんねー的な顔をしていたら、メアリーが可愛らしく微笑んだ。
「だって、シャーロット様がお止したじゃありませんか。それにシャーロット様がお止にならなくてもルーシェ様がお止になったでしょ?」
「あーまーね。でも僕が止めなかったらどうなるのさ?」
「その時は、ヴィンセント王子、もしくは公爵様がお止になってましたよ。それに陛下だって」
「う~む……」
焚きつけた伯父上自身が? ヴィンセント王子がフィルを助ける?
ヴィンセント王子は俺達に闘気を飛ばしてきたぐらいだぞ……。
女の子のふわふわしてそうな脳内は、俺にはまったく分からないや。
メアリーは国王派とオースティンが派で派閥が生まれていることも知っているし、アルマン司祭が伯父上との繋がりを漏らしたことだって、知っているのに……。
「ルーシェ様は公爵様に対して何か誤解しているようですから、軽くお話いたしましょうか?」
「う、うん。頼むよ」
とりあえずメアリーが話をはじめたので、耳を傾けることにした。
先ほど聞いた話の補足みたいな感じであったのだが、オースティン公爵は豚公爵さながらの容姿と妾の子という事実も相まって、幼少の頃から不遇な環境で育ったらしい。
しかし先王の妃がお亡くなりになった時点で、先王は国の歯車をオースティン公爵に託したようなのだ。それは単純にオースティン公爵は才能に溢れ利発な子であったからだという。
また、オースティン公爵には三男四女で七人の子息子女がいるらしいのだ。
その子息の中にヴィンセント王子も含まれるのだが、ヴィンセント王子の弟達も王位継承権を持っているらしい。
つまり、王位継承権第一位がフィリップ王子。そして第二位に伯父上。三位がヴィンセント王子で、四位と五位ともにオースティン公爵の子息だ。そしてその次が親父で俺はその次という順番だ。
メアリーの話は、とりあえず終わったのだが、その中にこれと言って、伯父上に対する疑念が解消されるような話はなかった。ただ幼少の頃から過去の俺のように容姿で苦労してきたようで、そこだけ共感できたけどな。
メアリーが遙か先を指差しつつ、叫んだ。
「ルーシェ様、竜王城が見えてきましたよ!」
「う、うん! そうだね!」
相変わらずヘンテコな造形の城だ。円形の何かの上に建造されたような感じだ。
この前は夕日も沈みかけており、さほど気にも留めなかったのだが、こうして晴天の青空の中で見る竜王城は、城ごと大空に飛び立ちそうな佇まいをしていた。
ドロシーに会えるのも楽しみだけど、今度は竜王様にも会ってみたい。
お目通りが叶えば嬉しいかな。
この話は前の話とあまりにも内容が噛みあわなかった為、かなりのハイペースで書き換えました。
いつも読んでくださってありがとうございます。




