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第四十話「反逆」

※改稿済み(2017/4/25)

 白亜の大理石に円柱が広がる広場にて、真紅の布を敷き詰めたスペースに、俺とメアリー、そして桐野達が、神殿より配給される食事を持って、戻って来た。


 彼らの食事は主にパンにスープに野菜。

 決して豪華な食事という印象は受けないが、この世界には食材を長期保存できる冷蔵庫は無い。


 生野菜や果物がメニューにあるだけでも、ある意味贅沢な食事なのだ。

 栄養バランスはとれてるし、量が足りない者はスープとパンのおかわりは自由の食べ放題。厚遇されているといっても過言ではない。


 メアリーの手製のサンドイッチも美味しいが、食べごたえは明らかに彼らの食事の方が、優れているだろう。


 また、桐野達の話を聞けば聞くほど、溜息が止まらない。

 桐野悠樹も一条春瑠も姫野茶々子にしても、元の世界に帰りたいという意見は一致しているようで、この世界に長く留まれば留まるほど、その気持ちが日増しに強くなるそうだ。


 当初は剣と魔法の世界はゲームの世界のようで、大歓迎だったらしいのだが、郷田があっさりと殺されたことで、意識変革したそうだ。この世界では人の命は軽い。


 その気持ちは俺も痛いほどわかるし理解も出来る。この俺にも日本人だった頃の記憶がある訳だし。

 

 そして――――星降る夜。

 心の中で誓いを立てのだ。

 家族を必ず守ると。

 

「あのう……ルーシェリア王子。お尋ねしたいことがあります」


 桐野が沈痛な表情をして言った。


「ん? なんだい? サンドイッチはやらないぞ?」

「いえ……そうじゃなくって……そ、そのう……間宮くんと清家さんのことが気になって……」


 聞かれるだろうと予測していた。


「二人は、どうしても処刑されるんですか?」


 冷たいようだが、嘘をついても意味はないしな。

 気持ち的には助けたいのだが、言葉を濁してヘンに期待を持たれても困る。

 なので、厳しく言い放つ。


「ああ、申し訳ないが、竜王様を襲撃した二人を見逃すわけにはいかない。これは絶対だ。諦めてくれ」

「そ、そうですか……ヘンなことをお尋ねしてすみませんでした……」


 桐野は落ち込み、一条は俺の厳しい言動にビクつき、姫野茶々子は不満そうな表情を浮かべた。今までフレンドリーな話題を交わしていたのだが、この場が一気に冷めてしまった。


「ちょっといい? わたしは納得できないんだけど?」


 姫野茶々子が興奮したように顔を赤くして息巻く、


「子どもの王子に話しても無駄かもしれないけど、先に罪を犯したのはそっちじゃない? 見知らぬ世界に拉致しといて、ほんと良く言うわよ」 

「あ、こらっ! バカっ! また王子に向かってなんて言葉を吐いてるんだよ!」


 桐野が戸惑ったように、


「……どうもすみません。この子はちょっと血の気が多いんですよ……あははははっ」


 桐野は後頭部に手を当て、困ったように作り笑いをした。


「もう、何よっ! 桐野! 王子と話せる機会なんて早々無いんだから、聞きたいことはその場で遠慮なく聞くのが私のポリシーなのよ!」

「――って……言ってもだな。相手は王子なんだぞ! 王子様! 少しは口の聞き方を考えろ! バカっ!」

「バカとは何よっ! バカとは! あんたより偏差値は上なんだから!」


 いつもなら俺に失礼な態度を取った者を叱りつけるメアリーも、彼らが別の記憶の中にある知り合いだと話していたので、どう対処していいのか困惑してるようだ。


 そして、二人の口論を静観していた一条春瑠が、申し訳なさそうに、


「騒々しくて本当にすみません。できれば大目に見て貰えないでしょうか?」


 一条の謝罪で口論していた二人が、ハッとしたように我に返ると、一条がポツリと呟くように言った。


「僕達って……使い捨てなのかな……」


 郷田が殺されたことで、クラスメートの誰もがそう感じ始めているようだ。

 明日は我が身かも。畏怖の念に憑かれてるようだった。

 彼らが醸し出す雰囲気は売れ残りのペットのような哀愁さが漂っていた。


 自覚しているのだ。彼らは彼らなりに自分達の置かれている状況を。


 そして、沈黙に耐えかねたように姫野茶々子が、


「も、もう無理……」


 か細く呟くと、彼女が我慢できないと言わんばかりに言い放った。


「わたし達が戦わないとこの世界はいずれ滅んでしまうんでしょ? それなに……それなのに……どうしてクラスメートが殺されなきゃいけないのよっ! ……それに……あんたガキの癖して偉そうなのよっ!」

「……えっ!?」

「わかってるわよ。わたし達を拉致したのは王国じゃなく、法王庁だって! でも、郷田と骨山を殺したのは、あんたの部下でしょ! 郷田や骨山にだって家族がいるのよ。知ったら両親だって悲しむよ……もううんざりなのよ! 桐野、一条、あんた達にも悪いけど、わたしは渚の意見に従うわ!」


 そこまで言って、姫野茶々子は嗚咽を堪えるように口に手を当てた。

 メアリーの肩が震えている……今にもキレそうなのだが――――


 既に俺達は、数名のクラスメート達に取り囲まれていた。

 死んだ郷田と骨山、そして獄中の清家と間宮を除いて、残りのクラスメートは教師を含め、31名。


 だが、俺達を包囲している数は15名。クラスメート全員が賛同している訳でもなさそうだな。


「ごめんね……ルーシェリア王子。わたし達はこんな機会をずっと待っていたのよ。もう言いなりになるのはうんざりなの……」


 姫野茶々子の瞳に涙が潤んでいた。その涙はこの決断に至るまでの時間の経過を物語っているかのようだった。


 そして、メアリーが俺を庇うように抱きしめ、声をあげた。


「あ、あなた達……一体なんなのです!」


 メアリーに睨まれた桐野と一条は申し訳なさそうに黙り込み、一人の女の子が姫野を押しのけるように前に進み出てきた。その彼女は顔色一つ変えずに、メアリーを直視すると、


「自由になるの。邪魔者は死ねばいい」

「あなた達……正気なのですか!」

「冗談。今は殺さない。人質になるの。でも殺さないのは子どもだけ。あなたは死ぬの」


 メアリーはハッとしたように「衛兵? 神官達は?」と、呟きつつ周囲を見渡す。

 すると、目の前の彼女が冷淡に微笑む。


「殺した。呼んでも無駄」

「なんて……酷いことを……」


 俺を抱きしめるメアリーの腕に力がこもる。


 その間、俺は目の前の彼女が誰であったのか記憶を思い返していた。

 彼女の名は白鳥渚。金持ちの家のお嬢さんなのに、どこか影が薄く陰鬱とした雰囲気を醸し出している女の子だ。友達も一人しかいなかった気がする。そんな彼女だが、笑えば美少女なのにと、思ったことはしばしばあった。


 その彼女がリーダーなのか? 大人しそうな子だったのに……。


「あなた達、こんなことをしでかして、タダで済むとは思ってないでしょうね!」


 メアリーは強気にでるのだが、可哀想なことにあの若き神官のお兄さんも遠くで朱に染まっていた。その彼は、俺に自慢するかのように『この子達は、将来この世界を救う本当の意味での勇者に成長してくれるでしょう。不慣れな土地で戸惑っているようですが、私もそんな彼らの気持ちを汲んで、微力ながら助力できればと考えているんですよ』と、笑顔で話してくれていたのだ。


 流石に許せないな。お兄さんだけじゃない。彼らはここに常駐していた罪無き衛兵も皆殺しにしてしまったのだ。悲鳴も聞こえなかった。息つく間も与えずに殺したのだろう。彼らはかなりの手練れと踏んで間違いない。


「大人しく従った方が身の為。わかる?」


 白鳥渚は短剣を引き抜くと、メアリーに突き出した。

 緊張するメアリーの鼓動が俺の身体に伝わってくる。

 15対1か……負ける気はしないけど、どうしたものだろうかと考えつつ、桐野を睨む。


 すると、彼は申し訳なさそうに、「すみません……王子。騙したみたいになって……」ただ、そう呟くだけであり、その桐野の様子を窺っていた一条も、


「好きでこんなこと……ごめんなさい」震えながらそう言った。


 彼らは否応なしに参加せざるを得ない状況に追い込まれた口だろう。

 興奮気味だった姫野は「本意じゃない。でも……仕方ないのよ。先に郷田と骨山を殺したのはそっち……だから……あんた達も償いを受けるべきなのよ」


 姫野茶々子はもう涙を浮かべていなかった。気が変わったようで、やる気のようだが、情緒不安定なのがありありとわかる。お前……心の中では迷ってるだろ? そう言ってやりたかったが、もう遅い。


 白鳥渚がメアリーに短剣を突き出し、彼らはこの神殿の者達を皆殺しにしてしまったのだ。一瞬で消し炭にしてやろうか? 巻き込まれただけなんだしな。


 しかし、ぶっちゃけ……めんどくさい。お前ら勘弁してくれよと言いたい。

 

「悪いけど僕は忙しい身なんだよ。王子だからね」

「もう遅いの。手遅れ」


 不敵な笑みを浮かべる白鳥渚。

 勝てる気でいるんだな。ヤレヤレだ。

 とりあえずメアリーを安心させるためにも、彼らに一言、忠告しとこうか。


「戦う前に、いちおう言っとくけど、君達じゃいくら束になっても僕には勝てないよ」


後半の白鳥渚はどちらかと言うと口下手でしたので、台詞を短くしました。


ポツポツ主語だけしゃべる感じのキャラに変更したいんですよね。

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