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第四話「少女の謎」

※改稿済み(2017/3/26)

「パパ、やっと二人っきりになれたね♡ ずっとパパに会いたかったんだよ」

「はい?」


 二人っきりになった途端、マリーは嬉しそうに勢いよく俺に抱きついてきた。


 な、なんだ!!!?


 俺は困惑しているのだが、マリーは満面の笑みだ。

 

「マリーはパパに会えて凄く嬉しいです!」


 俺はブサメン29歳のヒキニート。

 異性と付き合ったこともなければ無論、婚歴もない。

 それがなんだ? 良くわからない世界にいると思いきや妹だと思ってた少女にパパって呼ばれる?


 ここが元の世界なら俺は鼻で笑い、この子を残念で可哀想な子認定したに違いない。


 だが――――


 記憶を持ったまま見知らぬ世界で若返っただけでも、非日常(オカルト)だ。

 ましてや聞いたこともない言語を即時理解でき、この世界には神聖魔法というものがある。つまり魔法ありきの世界なのだ。


 だったらSFチックに『私は未来からきました』とか、この子が言いだしても俺は驚かない。ここが異常な世界ならそれこそ許容範囲である。


 俺の娘と名乗ってくれたのなら、それを真実として受け止めたいものだ。

 なぜなら、それこそがブサメンでもリア充になれるという生きた証拠となるからだ。


「パパ、私の名前はマリーステラ・シュトラウスっていうんだよ」

「マリーステラ? シュトラウス?」

「そうマリーステラだから皆、マリーって呼んでくれるの。シュトラウスはこの家の家名なんだよ」


 マリーは俺の隣で足を羽のように伸ばし、ぶかぶかの靴を揺らしている。


 たぶんシュトラウスというのは、苗字みたいなもんなんだろう。つまりファミリーネームってことだ。


「でね、マリーステラって名前は、パパが考えて付けてくれたんだよ」


 マリーは終始笑顔を絶やさない。

 俺はマリーをちらりと見ながら、


「――本当に僕の娘なのか?」

「え? なあに? 信じてないの?」

「あ、いや……だって……そのう……」


 マリーは頬をぷくっと膨らまし、不機嫌そうに見つめてくる。

 その仕草、凄く可愛い。


 俺の遺伝子からこんなに可愛らしい娘が生まれてくるのだろうか。

 仮に事実だったら、それこそなんて奇跡なんだ?


 過去の俺は俺を超えるブサメンに出会ったことがあっただろうか。

 

 迷うことなく答えは『ノー』だ。


 それでも……仮に俺の娘なら俺は誰かと将来結ばれるのか?

 これからの人生で俺は伴侶と出逢うことになるのだろうか。

 いかんいかん、妄想だけが先走っている。そもそも未来から来たとか誰も言ってないのだ。しかもブサメンの俺に彼女ができる訳がない。


 しかしマリーが驚くことを口にした。


「パパはこの時代の人じゃないんでしょ?」


 ドキッとした。同時にハッともした。

 

 心の中で抱いていた疑問に触れた一言だったからだ。

 その疑問とは29歳までのヒキニート時代の記憶があることだ。

 姿は若返っているのに……知らない世界。困惑が隠せない。


 マリーはマジで、何者なんだ? 


「驚くことないよ? 未来のパパが話してくれたんだよ。病気から目覚めたばかりのパパは自分に自信の持てない小心者だからハッキリ物事を伝えなさいて言われたの」

「ちょ、ちょっと……未来だって?」

「うん、マリーは未来から来たんだよ。ごめん、そこ話してなかったね」


 マリーはテヘっと舌をだした。

 

 未来から来た。つまり俺の妄想は的を得ていたのだ。

 まだまだ納得まではいかないが、少しだけ事情が呑みこめてきたぞ。


「なるほどな。未来の僕がマリーに話したのか」

「うん、そうだね」


 ブサメンの俺に嫁ができるのか。本当にそうなったら嬉しい。


「で、パパ、信じてくれたの?」


 マリーが上目遣いでそう言う。俺は信じることにした。


「もちろんさ。この世界が僕の知らない世界なのは紛れもない事実だから……でも……今更人違いでしたってのはナシだかんな?」

「マリーがパパを見間違える訳ないじゃん!」


 言われてみればそうなのかもしれん。

 子が親を間違えることは、あまりないだろう。

 しかし、未来からどうやって来たのだろうか。重要なのはそこなのだ。

 それが証明できるなら、もはや疑う余地はない。


「マリーはどうやって未来から来たのかい?」

「んとね。魔法ママの魔道具でこの世界に来たんだよ」

「魔道具?」

「うん、魔法ママは付与魔術師なんだよ。時を操る魔術師って素敵でしょ?」

「そ、そうだね……」


 そんな凄いものがこの世界にはあるんだな。しかも俺の将来の嫁は魔術師なのか。

 

「ねぇ……パパ」

「な、なんだい?」

「どうしてパパはそんなに自信なさげなの?」


 かなり痛いところを突かれた。

 ブサメンのサガと言いたいところだが……娘にそんなことを言える訳がない。

 

 俺は他人の顔色を必要以上に窺って生きてきた。

 ブサメンの俺はとにかく悪意の的に成りやすいのだ。また目立つとロクなことがない。

 ダンジョンの最下層に、ひっそりと息を潜めたいと思う日々の連続だった。


「ねぇ……パパ、マリーの瞳ちゃんと見てくれない」


 マリーはベットの上で正座し俺に向き直った。

 するとマリーが奇想天外なことを口にした。


「パパはやっぱり子どもの頃からイケメンなんだね」


 ブサメンを目の前にして、何を言っているのだろうか……。


「パパ……どうしたの?」

「あ、いや……別に……」


 ひいき目で見ても流石にイケメンは言い過ぎだろ……むしろ凹みそうだ。

 なんだか胃が痛くなってきた……。


「もう、パパったら……どうしてそんなに弱気なの? 未来のパパは自信に満ち溢れてカッコ良かったのに……」

「この僕が……?」

「やっぱり昔のパパはママが言ってた通りなんだね……」


 早くも俺は娘に愛想尽かされるのか。

 落ち込んでるとマリーが、頬に軽くチューしてくれた。


「パパって誰もが羨むイケメンなんだから、もっと自信を持てばいいのに……」


 美醜逆転世界ネタのネット小説を、読んだことがあったな……。

 この世界は、そんなネタ的な世界なのか?

 鏡を見る勇気はもう俺にはない。高校時代、振られた日に見た便所の鏡が最後だった。

 

 だが、マリーはゴブリンのように醜悪な俺の顔に、躊躇いもなくチューしてくれたんだ。

 俺もその勇気に応えなくてはなるまい。これからは強く生きていこう。

 

 マリーの表情が真剣になっていた。


「パパ……あのね」

「うん?」

「時間が限られているから本題に入るけど……未来のパパは20歳の時に殺されちゃうんだよ」

「……へ?」


 気の抜けた間抜けな声がでてしまった。


「え? なに? 僕が死んだ? 殺されただって!?」

「パパを殺したのは異世界から召喚されてきた勇者って人達なんだ」


 そこまで話したマリーは涙目になっていた。

 

「だから……マリーね。またパパに会えて凄く嬉しいんだ」


 そうか……未来で俺は死ぬのか……。

 しかし、実感は湧かなかった。

 それよりも、未来の俺に娘がいるということの方が衝撃的だったからだ。

  

「マリーは今何歳なんだい?」

「今のパパと同じ7歳だよ?」


 そうなのか。マリーは7歳なのか。ついでに俺の年齢も判明した。

 ……ってことは逆算すると12歳で種付けしたってことなのか?

 そして……これから12,3年後に俺は死ぬことになるんだな。

 

「パパだけじゃないよ。ママもお姉ちゃんも弟や妹達もパパのパパも、みーんな殺されちゃうんだよ」


 つまり俺の家族は皆殺しにされた訳か……しかし、勇者って普通は良い奴じゃないの?

 まあ事情はどうあれ、割と重い話だ。


「でね、パパ。マリーのお姉ちゃんはルーシーなんだ。いつもマリーと遊んでくれてたんだよ。ルーシーはパパの最初の人の子どもね」

「最初の人?」

「うん」

「パパは三人も娶るんだよー」

「な、なんだってぇぇぇ!!」


 流石にびびった……この俺が三人も嫁を娶るということなのか。

 だ、誰を娶るんだ? いやいや……どんな人に出逢うのだろう。

 優しくて可愛い子なら嬉しいな……夢みたいな話だけど。


「ママのこと聞いてもいいか?」

「どのママのことが知りたいの?」

「どのママって言われてもなぁ……」

「私のママと魔法ママに聖女ママの三人だよ」


 聖女様まで俺の嫁なのか……。

 この世界だと、一夫多妻が当たり前のなのかな……日本人の俺には理解しがたい。

 まるで戦国時代の日本だな。


「どのママの話から知りたい?」


 マリーは話す気満々のようだ。

 姉がいるってことはマリーは俺の二人目か三人目? とにかく俺の嫁の子なんだよな。


 しかしブサメンの俺が三人も妻を娶るなんて……どんな奇跡なんだろうか。


 ひょっとしてハーレム? ……なのか?




 どうやらこの世界はブサメンに優しい世界のようだ。


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