第三十八話「異国のお姫様」
※改稿済み(2017/4/24)
「ふっふ~ん。姫からちゃんと聞いてるんだぞ! 結婚の約束もしてるんだってね♡」
この俺が? しかも姫だって!?
一人驚いていると、ソーニャの話を聞いたメアリーも、婚約に関しては心当たりがないようで、首を傾げ考え込むと、
「ルーシェ様とハリエット姫が婚約してるって話は私も初耳ですよ」
俺はともかくメアリーも知らない? その姫ってユーグリット王国の姫って話なんだよな? ソーニャはユーグリット王国から来てる訳だし。
ウルベルトはどうなんだろう? 知ってるのかな?
俺はウルベルトに鋭い眼光を飛ばす。
「どうされました坊ちゃん? 恐い顔して……? しかしこの酒は旨いっすね。さすが坊ちゃんの誕生会ってだけあって、メアリー殿。上質な酒をご用意されてますな。わっははっ」
今までの話すら聞いていない。完全に酔いが回っている。
使えない奴だ。
嬉しいけど参ったなぁ……覚えてないのはマズイよな。真剣に思い悩んでたらソーニャが楽しそうに、ふっふ~んって顔で俺を見た。
「3歳の頃の話だもんね。忘れてた?」
「え、えっと……」
「……でも姫様はちゃんと覚えてるみたいだから、忘れてたなんて言ったらルーくんまた背中にカエル入れられるかもよ?」
「カ、カエル……」
背筋がゾクッとした。子どもの頃は平気だった虫や爬虫類も、大人になるに連れ、苦手になっていくもんだ。しかしどんだけ、悪戯好きなんだ?
ガクガクブルブルしていると、ソーニャはくすっと微笑み、
「雪解けの時期になったらルーくんのご両親と一緒に、ミッドガル王国まで来るみたいだよ。でも、お姉さんはその前に思いだしておくことをお勧めするぞ!」
にひひと、笑うソーニャ。気のせいじゃなく俺をからかって遊んでいるよな?
――――でも、キスまでしてるんだもんな。カエルで悪戯するような子だし、告げ口されたらたまらんなぁ……。
「あっ!」
「え、なに? 思い出しちゃった?」
今朝方見た記憶の片鱗に、いかにもお姫様ぽい女の子がいた。
ひょっとするよな?
「僕と同じぐらいの歳で、綺麗な金髪で、碧眼の女の子だよね?」
「な~んだ……思い出しちゃったのね。つまらないなぁ……」
どんぴしゃだったのか? でも……ソーニャは本当につまらなそうにしているが、マジで爬虫類はダメなんだ。でもこの際だし、
「あのね……ソーニャ」
「うん?」
可愛く上目遣いで、
「ちゃんと覚えてないんだ。カエルは苦手なんだ……もっとちゃんと思いだしたいから、その子のこと教えてくれない?」
「うふふ、いいわよ。わたしも意地悪が過ぎたしね」
ソーニャは、にま~とした笑みを浮かべると、姫についてゆっくりと話してくれた。
その姫の名はハリエット・マリー・ド・ゴール。
ユーグリット王国の国王ベオウルフの一人娘であり、少々お転婆が過ぎ誤解されることも多々あるそうなのだが、その実は気立ても良く、優しいお姫様らしいのだ。
俺が3歳の頃の話に遡るが、その時期、姫はこのミッドガル王国で数カ月ほど過ごしたらしいのだ。
しかも俺とフィルとその姫ハリエットの三人は、真夜中に城をこっそり抜け出し、魔物退治に出かけたようなのだ。
そしてその時、俺達は狼の群れに襲われたらしいのだが、俺の魔術で狼の群れを撃退したらしい。その帰り道、月明かりの下で俺とハリエットは、フィルの目の前で堂々とキスを交わしたらしいのだ。
そこまで聞いてもまったく思い出せないけど。
無論、その夜は王子と姫が行方不明ということで、大騒ぎ。戻った俺達はこっぴどく叱られたとの話だった。
てっきり、国家間での正式な婚姻を結んだのかと思ったのだが、どうやら子ども同士での口約束らしかった。なので、メアリーが知らないのも無理はない。
話の区切りのいいところで、メアリーとウルベルトがプレゼントをくれた。
俺は先ほどソーニャから受け取ったプレゼントも一緒に皆から頂いたプレゼントの包装紙を解いていく。
精神年齢が30歳になった俺でも、誕生日プレゼントは嬉しいものだ。
何が入ってるのかな? とてもわくわくするな。
メアリーからもらったプレゼントは手編みの手袋だった。
これは、かなり嬉しいかも。しかも良い香りがする。
「もふもふして気持ちがいいよ。メアリーありがとう」
「喜んで頂けて、よかったです」
メアリーに笑顔を向けると、にっこりと微笑んでくれた。
ウルベルトからは……なんだこれ? ペンダントなのかな?
「坊ちゃん、それは懐中時計ですよ」
「時計?」
ウルベルトは澄ました顔で、
「はい、坊ちゃんは殿下に似て時間にルーズですからね」
蓋をパカッと開けると文字盤がでてきた。
手巻き式の時計でかなり精巧にできているのだが、これって……嘘だろ?
「その時計は古代の遺跡から発掘されたものなんですよ」
「遺跡?」
「ええ、とにかく高価なものですよ。おかげで財布はすっからかんですけどね」
プレゼントしつつ溜息をつくウルベルト。シュトラウス家からの給金はそんなに少なくないだろ? と、思いつつも……この時計は……疑う余地がないほど、精巧過ぎる。精巧過ぎるのだ。この世界にこんなに緻密で精巧なものを作り上げる技術があるのだろうか。
デザインも一風変わって、この世界に不釣り合いだ。まるで日本製? いや、その技術を踏襲したかのような一品だ。
有難く頂いておこう。
また、ウルベルトにしては気が利くプレゼントだと思った。
お前も時間にルーズだけどな。
ソーニャからのプレゼントも開けてみた。
うっ……これは……なんだろう……きしょく悪いぞ……干物?
「な、なに……これ……?」
渋い顔でソーニャに振り向いた。
「それは魔術に使う秘薬だよ?」
干した蝙蝠の死骸に魔術付与師が手を加えたものらしい。
つまり、この秘薬に魔力を経由させ魔術を行使すると、風魔術の威力を増加させる効果があるらしい。しかし……俺にはただの干した蝙蝠の死骸にしか見えないぞ。
でも、プレゼントだし、笑顔を見繕いつつもナチュラルに喜んでおこう。
「あはは、ありがとうソーニャ」
「どういたしまして」
先っちょを摘んで持ち上げてみた。
うう、やっぱキモイぞ……これ。
「ルーくん?」
「はい?」
作り笑いがバレたのかと思いきや、ソーニャが俺に一通の封書を手渡した。
「これは?」
「それは姫様からルーくんに宛てたお手紙だよ」
「手紙?」
「うん、開けてみなよ」
「うん」
蝋封されている。何が書かれてるのだろう。
ドキドキしながら開封した。
『ルーシェリア、元気にしてる? 誕生日プレゼントはお預けよ。わたくしが直接手渡してあげるんだから楽しみしてるのよ? あとね、ルーシェリアに負けないように日々、神聖魔法の修行をしてますわ。だってルーシェリアに負けたくないもん。それと約束忘れてないよね? 浮気してたら絶対許さないんだからね! ハリエット・マリー・ド・ゴールより』
――――ちょっとした悪寒が走った。
こうして俺の誕生会は無事に幕を下ろしたのだった。
ウルベルトがプレセントした時計は現代科学の産物です。
ハリエット姫は、軽めのツンですが、その内心は猛烈アピールなデレ少女。
キス? 無論、一方的にされたんですよ。フィルが悔しがってましたけどね。
そんな感じになってます。
また、今は日々改稿ばかりですみません。




