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第二十八話「小さき魔術師ドロシー」

※改稿済み(2017/4/14)

 遊覧飛行を楽しんだ俺達は、竜王の城から少し離れた場所に降り立った。


 城は丘陵の崖っぷちのような危うい場所に聳え立ち、しかも浮き輪の上に城を築いたかのようなヘンテコな造形をしていた。

 

 けれども、崖の下に広がる湖畔が夕日と城を幻想的に揺らめかし、ロマンチックな印象だ。

 

「ここが竜王様の住む城なんだなぁ……」

「とても素敵な雰囲気のお城ですね」


 城を目の当たりにするまでは、暗くどんよりとした魔城をイメージしていたのだが、そんなことは無い。白亜の大理石で建造されており、この城に訪れる者、誰しもを虜にするに違いない。


「行ってみようか」

「はいっ!」


 メアリーがにっこり微笑むと、俺の手を優しく握った。

 瑞々しくも、ふっくらとした柔らかい感触が伝わってくる。

 デートだと錯覚してしまいそうだ。

 今まで俺はデートなんて経験したことはなかった。

 道行くカップルを見かけても、心の中で悪態をつくのが精々だった。


 メアリーに手をひかれながらも、俺は幾度となく彼女の顔を見上げた。

 幼さを感じさせる顔立ちであるものの、いざって時の覚悟の強さを感じさせる。

 もし、俺の身に危険が及んだら彼女は命がけで俺を守るだろう。

 そんな意思の強さも感じられた。

 将来きっと、良いお嫁さんになる。

 ふと、そんなことを思った瞬間、俺の中になんともいえない複雑な気持ちが芽生えた。


 思わず、ふるふると首をふった。


 独占欲なんだろうか。

 彼女が他の男と仲良くしてることを想像したら、気持ちがもやもやしてくる。

 俺は7歳、彼女は16歳。

 歳の差は9歳か。

 歩きながらも無意識に俺は、そんな計算をしていた。

 そして俺はマリーが話してくれたことを思い返した。


 俺はこの世界で三人の妻を娶るのだ。

 その一人がドロシー。

 それは間違いない。

 未来から来たドロシー本人が俺にそう語ったのだ。

 後の二人は、誰なんだろうか?

 たしか……あの日、マリーは……。


『私のママに聖女ママに魔法ママだよ』


 ――そう言っていた。

 魔法ママは間違いなくドロシーのことだろう。

 じゃあ、後の二人は誰なのだろう。


 そこまで考えを巡らせ、ハッとした。

 メアリーとマリーって髪色が同じだ。

 少なくともマリーはドロシーの子ではない。

 それはマリー本人が、そう語っていたのだから。


 再度、そっとメアリーを見た。


「ルーシェ様、どうかされましたか?」

「ううん……」


 面影を見た。

 メアリーの中にマリーを見たような気がした。

 

 とまあ、考えてみたものの。

 人は時として都合の良い方向に思考が流れがちだ。

 でも、意識すればするほど、 切ない気持ちが込み上げてくる。

 これはトキメキなんだろうか?


 もしかして、精神年齢29歳の俺が、16歳の少女に恋をしたのか?

 ふふ、まさかな。

 とは、思いつつも否定しきれない自分がいた。


「お城は目前ですよ」

「うん、そうだね」


 ここまで不思議と、誰ともすれ違うことがなかった。

 俺は記憶にある某ゲームのような魔王的な竜王を想像し、魔城では多くの魔物達が勇者を待ち構えている。

 そんなイメージを膨らませていたのだが。


 どうやら魔物のドラゴンとはちょっと違うらしい。

 普段は人の姿で生活し、人として暮らしてるそうだ。

 変身能力はあっても、滅多なことでは変身もしないらしい。


 つまり郷田の襲撃は滅多なことだったという事だ。

 変身しなければ太刀打ちできなかった。

 そういう事だろう。

 

 その郷田を俺は軽々とねじ伏せた。

 あまり自覚していなかったが、俺ってかなり強いのではないのだろうか。

 ああ、いかん。

 自惚れは身を滅ぼすと聞く。

 ここは謙虚に。

 俺が強いのではない。

 お前らが弱いってことにしておこう。

 

 しかし、城の入口まできても、誰にも不審者として見咎めがられることもない。

 そもそも誰ともすれ違うこともない。

 誰とも会う事もなく俺とメアリーは、坂道を歩き竜王の城の門前まで辿り着いた。

 

 すると―――その時だ。

 どこからともなく声が流れてきた。


「あなた達は旅人なのでしょうか?」


 城壁の上に人影がある。


 しかし夕日の逆光で黒い影となり、よく見えない。

 見えないが、聞き覚えのある声。

 

 突如、俺の中に熱い感情が込みあがってきた。

 不思議と目頭が熱くなる。


 ほんの数十分しか言葉を交わしたことがないのに――――

 なんて懐かしく、俺は感じているのだろうか。


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