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第二十四話「最期」

※改稿済み(2017/4/3)

 オースティン公爵と、その御子息であるヴィンセント王子がこの場を立ち去った。

 それはこの決闘に終止符が打たれたことを意味し、憔悴しきっていた国王の表情も明るくなる。

 今は、フィルとシャーロットの両名が、国王の傍に付従い、この状況を見守ってくれているような感じだ。


 早速、郷田に竜王を襲撃した理由を問い詰める。


「……勇者のオレ様が竜王を退治して何が悪い? お前はバカか? クソ王子! この氷を……く、くそ……オレ様は勇者だぞ……こんな目に合わせやがって! てめぇマジで……ゆ、許さねぇ……ぞ……ほ、骨山……何とかしろ……!」


 郷田は死にそうな目を骨山に向ける。


「ぜ、全部っ! そこのおっさんの命令なんだ! だ、だから……郷田君は悪くない!」


 骨山が未だ呆然と蹲るシメオンを指差しつつそう言ったが、それに返事をしたのはメアリーだ。


「あなたも同罪です。竜王様を襲った者達の罪は裁かなくてはなりません。そこにどんな理由があっても許されるべきことではないのです!」


 メアリーは骨山に俗物でも見るような視線を向けた。その視線を受けた骨山は身がすくんだように静かになった。



 ――――千年前に勃発した魔神戦争。竜王様は降臨した邪神の波動を受け、一度は闇落ちしたものの、その呪縛に打ち勝ち、人族と共に戦った。竜族に伝わる古代兵器を自由自在に操り、英雄王レビィと肩を並べ、命懸けで戦ったそうなのだ。六英雄の一人には数えられていないようなのだが、この世界を救った英雄の一人であるのは紛れもない事実なのだ。


 それから千年間、ミッドガル王国と竜王様は友好的な関係を築いてきた。郷田達が侵した罪はその千年間の長きに渡る信頼を裏切る行為であり、ミッドガル王国としてはけして許せる行為ではないだろうと、メアリーは彼らにそう語った。




 しかし――――シメオン司祭の独断で、このような所業を起こすとは考えにくい。


 黒幕がいるような気がする……そこはシメオン司祭を問い詰めるしかない。郷田達は何も知らなかったのだ。シメオンから命令され、思慮深く考えることもなく、ゲーム感覚で竜王を襲撃。ただ調子に乗っていただけなのだ。


 だからと言って罪が不問になる訳ではない。今後、彼らには厳しい処断が下されることになるだろう。


「こ、こんなバカな……オレ様は勇者だぞ……タダで済むと思うな……いつか……復讐だ。復讐してやる……」


 この期に及んでも命乞いをしてこないとはな。意外と根性が座ってるじゃないか。

 復讐か……それはやっかいだな……しかし、その台詞はもはや、悪役ヒーローが末路の果てに吐く死にフラグだ。


 俺はこの郷田に執拗にイジメられてきた。そんな苦い経験が数え切れないほどある。当時は悔しくて何度も殺してやりたいと思ったものだ。こいつに追い詰められ、便所の中で弁当の蓋を開けることも度々あった。


 でもな……ぶっちゃけた話、復讐心のような感情は芽生えない。


 俺の中では12年以上も前の記憶になってしまっているのだ。12年間も怒りを持続させることが出来る訳もない。それでも、郷田だけは生かしてはおけない。未来の家族を救うためにも。


 郷田は凍死寸前だ。唇が変色し、目がうつろになっていた。


「おい、郷田。竜王様の側近の魔術師は瞳も髪も青かったか?」

「あ、あのチビのことか……」


 やはりドロシーで間違いなさそうだ。この世界で俺は青い髪をドロシーの他に見たことがない。確かめなくても、そうだったのだろうが。襲撃時にドロシーが殺されなくて本当に良かったよ。勿論、竜王様もね。


「もう……おうちに帰りたいよママ。……ママに会いたいよ!」


 骨山が死にゆく郷田の姿を見て泣き出した。哀れに感じた。骨山もけしてイケメンではない。体格も小さく非力な方なのだ。高校生時代、俺はこいつに屈服しつつも、全力で喧嘩したら負けないと思っていた。いや、訂正しよう。屈服では無い。こいつの傍にいる郷田が恐かったのだ。言い付けられるのが恐かったのだ。骨山を見下していたのはある意味、俺の方だったかもしれない。



 心が揺れてきた……郷田も殺す必要はないのかも? 俺がその分、強くなれば良いだけの話じゃないか……。情けない骨山の姿が過去の自分と重なったのだ。


 メアリーが俺に、問いかけてきた。


「このままだとこの者、死んでしまいますが、ルーシェ様どうなさるおつもりですか?」


 顔面蒼白でピクリとも動かなくなった郷田。凍死寸前のようだ。


 俺は迷っているようだ。生かすべきか、殺すべきか。心のどこかで歯止めがかかる。

 竜王様もドロシーも無事なのだ。やはり殺す必要はないのかも……。


 ウルベルトが氷漬けの郷田の前で、剣を抜いた。その剣尖を郷田に向ける。

 人を殺すことになんの躊躇いもない目だ。


 間宮が驚くように瞳を見開き、骨山と清家はガクガクと身体を震わせた。


 まあ、単なる威嚇だろう。





 そう思った直後――――









 郷田の首が宙を舞った。


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