表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/110

第十七話「予兆」

※改稿済み(2017/3/31)

 長テーブルの向かい側にいる郷田が話しかけてきた。

 郷田は俺とフィルを睨むように交互に見、その視線はフィルへと向いた。


「おい、クソ王子。オレ達を、よくもこんな低文明のクソ不便な世界に召喚してくれたよな!」

「な、なんだとっ!」


 フィルが激怒して声を荒げた。表情は瞬時に紅潮し、今すぐにでも郷田に殴りかかりそうな勢いだ。


「おっと、クソガキそんなにいきり立つなよ。別に責めてる訳じゃねーんだぜ」

「ちょ、ちょっと……郷田君」


 郷田の失礼極まりないもの言いに清家雫が戸惑う。しかし郷田の暴言は止まらない。フィルを挑発しまくる。フィルは10歳だぞ? なんで郷田のヤツ、ムキになってんだ? こいつはバカなのか?


「ふ、ふざけるなっ! 僕は最初から貴様らに何も期待なんか抱いてない。ここは僕達の世界なんだ」


 さすがフィルだ。俺も同意見だ。そもそも郷田達を召喚したのはミッドガル王国ではない。法王庁なのだ。ある意味、言いがかりでもある。


 郷田が少し声のトーンを落とした。


「だから言ってるだろ? そういきり立つなって! オレ様は感謝してるんだ。けどよ……お前も感謝しろよクソ王子。お前が王子でも国が滅びたら王族もクソもねぇだろ? 貴様がどう言おうがこの世界を救ってやるんだ。今後、オレに舐めた口を吐くんじゃねーぞ」


 郷田の隣に座っていた骨山がケラケラと笑う。


「そうだぞー! 郷田君の言う通りだぞ! 郷田君は第一の勇者に選ばれたんだぞ!」


 骨山は相変わらずの腰ぎんちゃく野郎だ。確か骨山には誉れある称号は与えられていなかった。ただの名誉国民の称号を与えられただけだ。つまりこいつの存在はモブ扱いなのだ。


 フィルは歯を食いしばり、ギリギリ耐えているが、もう爆発しそうだ。それにフィルが舐められてるのは俺も悔しい。そう思い身を乗り出そうとした瞬間、

 

「あなた達っ! フィリップ王子に対して無礼です! 王族をなんと心得てるのですか!」


 俺より先にメアリーがすっと立ち上がり、長テーブルを叩いた。食器が振動で揺れた。


「今すぐフィリップ王子に謝罪しなさい。それが出来なければあなたを不敬罪で処罰させて頂きます!」

「おいおい……お嬢さん。大袈裟なこと言ってんじゃねぇよ。そもそも今夜の宴はオレ達の歓迎会だ。無礼講でもあるんだぜ? とはいえ……お前可愛い顔してんな? 何ならオレが可愛がってやってもいいんだぜ?」


 俺も我慢の限界だ。冷静な奴も必要だと黙っていたが、メアリーをないがしろにされて黙っている俺では無い。


「やい、郷田っ!」

「はん? 何だお前? なにか文句でもあるんか?」

「ああ、メアリーを愚弄するなら僕が相手してやるよ」

「はあ? 何言ってんだクソガキ! てめぇは黙ってろ!」


 精神汚染させるような魔術は無かったかな。こいつをどうにか懲らしめたい。


「ルーシェ様、いけません! ここは私に任せてください!」


 メアリーが俺を制止してると、郷田の隣にいる骨山が驚くような発言をした。


「そうだぞ! 郷田君は、さっきだって竜王を、ボコボコにしてきたんだ!」


 ――――はっ!? な、なんだって!? 一瞬、耳を疑った。

 聞き違いじゃないよな? 骨山は郷田が竜王をボコったと、間違いなく言ったはずだ。


「おい、そこのヤツ、竜王様をボコったって何の話だ?」


 俺は骨山を睨みつけた。


「郷田君は勇者だからね。竜王を倒す役目なんだよ」


 郷田はニヤニヤしながら骨山の言葉に耳を傾け、


「まあ、さすがのオレ様も竜王がドラゴンに変身した時はビビったけどよ! でも、ちょろかったよな。あ、そうだ……あのチビの魔術師なんて名前だっけ? 土下座しながら竜王の命乞いしてたよな。まったく笑っちまうよな」

「おしっこまでちびって震えてたよね、郷田くん」

「ああ、オレ様に楯突くから、ああなるんだよ。マジでざまぁなかったな」


 ――――まさかチビの魔術師ってドロシーのことなのか? 


 郷田と骨山が顔を視線を合わせ、高笑いした。俺の怒りも同時に沸点に達した。

 許せない。ぶっ潰してやる!


 すると、先を越された。フィルが郷田に挑戦状を叩きつけたのだ。


「決闘だ! ミッドガル第一王子、フィリップ・アレクサンダー・シュトラウスは貴様に決闘を正式に申し込む!」

「はあ? お前がか……?」


 郷田が爆笑した。


 ――――が、しかし、 


「皆の者! 今の言葉を聞きましたかな? フィリップ王子が郷田殿に正式に決闘を申し込まれた。決闘は、明日の正午とする!」


 すかさずそう言い放ったのは、俺もよく知る司祭。シメオン司祭であった。

 何かの冗談なんだろうか? フィルと郷田が決闘だって? そんなことが許される訳がないだろう。


 ところがだ――――その場に、大喝采が巻き起こった。


 半数以上の王侯貴族達が、フィルの勇気を讃えるように盛大な拍手を送ったのだ。

 10歳の子どもの戯言だぞ? どうなってるんだ?


 唖然としていると、俺の親父がその場に駆けつけ、シメオン司祭に抗議した。


「バ、バカなことを申すでない! シメオン殿!」

「これはこれは、アイザック殿下ではございませぬか」


 親父はシメオンに鋭い眼光を飛ばしたのだが、シメオンはすました顔で平然としていた。


「シメオン殿は戯言を申されているのか?」

「そうではない。決闘を申し込んだのはフィリップ王子。女神アリスティアは勇敢な戦士にこそ、恩恵を賜れるのじゃ」


 郷田が割り込んで来た。


「いいぜ! バカ王子、受けてやるよ。正式な決闘だ! 死んでもオレ様を恨むなよ」


 騒然としてる場に、国王エイブラハムも駆けつけてきた。

 当然だ。フィルは国王の一人息子であり、将来この国を背負う男なのだ。


「フィリップ! バカを申すでない!」

「父君は僕が負けるとでも?」

「勝ち負けの問題ではない。そなたが怪我でもしたらこの国の行く末はどうなるのだ!」

「心配には及びません、僕とて名だたる師匠の弟子なのです!」


 パンパンパン! 何者かが手を叩くと、一同揃って、そちらを注目した。


 豚公爵……いやいや違う。親父の兄でもあり、俺の伯父でもあるオースティン公爵だ。


「さすがはフィリップ王子である。皆の者、王子の勇気を讃えるのだ!」


 どうして伯父上まで決闘に賛成するのだ? それだけ言って、オースティン公爵は外套を翻しその場を立ち去っていった。


 この国では10歳から成人と見做され、決闘を申し込むことができると言うのだ。




 こうして、フィルと郷田の決闘が決まってしまうのであった――――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ