128.生徒会長に立場をわからせる
三十分後。
「あたしは部活に行ってきますので、後片付けをお願いしますね」
「おう。梨乃も部活頑張れよ」
梨乃は生徒会室を出て部活へと向かった。
残ったのは磔になっている夏樹と、そんな生徒会長を責める日葵と羽彩。
そして、三人の美少女のプレイを眺める俺だけだった。
……この空間をいつも通りの顔をしてあっさり出られるなんてな。大人しそうな眼鏡美少女の梨乃だけど、度胸は人一倍あった。これを度胸があると判断するかは、議論の余地がありそうだがな。
「くっ、晃生くん以外にお仕置きなんかされたくないのにぃ~~っ!」
「そんなこと言っても身体は正直ですよ? 生徒会長のくせにこんなものまで用意して……一体晃生くんに何をやらせるつもりだったんですかぁ?」
とくに日葵がノリノリである。
ここぞとばかりに、表現しがたい道具を使って自由を奪われた夏樹を責めている。日葵のあまりの責めに、俺は目を離せない。
責められ続けている夏樹は、可哀想なくらい手足をガクガク震わせていた。磔にされていなかったら、とっくに崩れ落ちているだろう。
「あ、あのさひまりん……さすがにやりすぎじゃない? 音無先輩が苦しそうなんだけど……」
「羽彩ちゃん、これは苦しみに耐えている表情じゃないのよ。喜びを表に出すまいと耐えているだけなのよ」
見かねた羽彩が問いかけるが、日葵はその心配を笑顔で一蹴した。
「え、マジで?」
羽彩は半信半疑といった様子で夏樹に目を向ける。
「はぁはぁ……く、くっそぉ~~。わ、私は……負けないぞっ」
夏樹は眉根を寄せて荒い呼吸を繰り返している。
一見苦しそうに見えるが、頬を紅潮させて薄っすらと口角を上げているのが見て取れた。ちょっとよだれが垂れているのが変態チックである。
「……」
羽彩は何かを察したように苦い顔をした。
俺も夏樹のドMっぷりに引いた。
後輩の女子に責められて、凛々しいはずの生徒会長は嫌がる素振りをしながら楽しんでいるのだ。
「そういうわけだから羽彩ちゃん。早く次の道具を持ってきてちょうだい」
「ひまりんもまだやんの!?」
日葵は笑顔で夏樹を責める道具を催促する。
夏樹も夏樹だが、日葵も負けないほどのドSだった。
こいつは優等生のくせに、感度がいい奴が好きなのだ。羽彩はよく犠牲になっているしな。
つーか道具ってまだあんのかよ? 生徒会室に持ってきていいもんじゃねえだろ。形だけでも口にするのが卑猥すぎて、言葉にできねえだろうが!
「そこまでだ日葵。いつまでも遊んでたら日が暮れちまう」
「えぇーっ! これからがいいところだったのにぃー」
日葵は唇を尖らせる。この淫乱ピンクはどんだけ楽しんでいたんだよ。
「はぁはぁ……お、終わりなのか? そ、そうか……終わって、しまうのだね……」
そんで夏樹はどんだけ残念がってんだよ。全然お仕置きになってねえじゃねえか。
俺の女だからといって、俺の思い通りになるわけじゃないようだ。日葵と夏樹の相性を測り間違えたのが反省点か。
「話の続きだが、伊織は本当に俺の妹なのか?」
話を本題へと戻す。
俺に問いかけられて、夏樹は乱れた呼吸をすぐに整えた。
「そうだね。伊織ちゃんは、晃生くんにとって腹違いの妹だよ」
異母兄妹か。確かにそれなら俺の記憶にないのも頷ける。
「って、腹違いの妹!? あ、晃生の? それってマジなん? つーか晃生はなんでもっとびっくりしないの!」
「落ち着け羽彩。これでもちゃんと驚いてるっての」
ただ、予想の範疇だっただけだ。
ハーレム婚が認められているトチ狂った世界だ。異母兄妹くらい珍しくもないのだろう。
実際に日葵は羽彩ほど取り乱してはいないようだからな。
だが親父の妻なんて、俺の母親くらいしか知らない。
異母兄妹だからって今まで顔を合わせなかったし、そもそも親父とまともに会ったことすらなかった。
なのに今更妹面して出てこられても困るのだ。ほぼ他人に「お兄ちゃん♪」なんて呼ばれると気味が悪くなる。
「それで後継者争いってのはなんだ? まあ親父の跡継ぎ問題ってのは想像できるが……」
「それで間違ってはいないよ。郷田グループの次期トップ。誰もが望む地位だろうね」
想像通りの答えにため息が出る。
俺にとっては何の魅力もない。「面倒臭いことに巻き込まれた」以上の感想が思いつかないほどに。
「だったらいらねえよ。親父の後を継ぐなんざまっぴらごめんだ」
「だろうね。晃生くんならそう言うと思っていたよ」
その割には目を逸らす夏樹。
こいつ、まだ何か隠しているんじゃないだろうな?
「オイ、こっちを向けよ」
「やだなぁ。ちゃんと晃生くんに顔を向けているじゃないか」
「目を合わせろっつってんだよ」
夏樹の顔を両手で挟む。
そのまま顔を近づけてやれば、夏樹は俺と目線を合わせずにはいられない。
「そ、そんな……っ。こんなところで見られながらなんて……は、恥ずかしいよ」
なんて言いながら、夏樹はそっと目を閉じて唇を突き出してきた。
そんな彼女に、思いっきり頭突きを食らわせた。
「いぎぃっ!?」
夏樹は年頃の女子が発してはいけないような声を漏らしながら悶絶した。
額を摩りたいだろうが、磔にされているせいで身動きが取れない。さっきまで日葵にいじめられていたが甘すぎたのだろう。今は本気で痛がっているようだった。
相手が俺の女だからって、容赦してもらえるとは思うなよ?
「オイ夏樹」
未だに痛がっている様子の夏樹に、ドスの利いた声を出す。
「俺は親父の後継者争いを辞退したいんだが、それは問題ないんだろうな?」
「じ、辞退するのは無理なんだ……」
夏樹は涙目でしゃべり始めた。
「後継者候補の能力は秘密裏に計られているんだ。それを基に郷田会長やグループの重役たちが後継ぎを決める。そこに候補者の意思は関係ないんだ」
「俺の能力を計っているってどういうことだ? それに親父だけでも腹いっぱいだってのに、グループの重役って連中も絡んでくんのかよ」
なんだか話がややこしくなってきたぞ。これは本当にエロ漫画の世界なんだよな?
「能力の計測方法も、どんな資質を重要視するのかも、私にはわからない。それに郷田会長はもちろんのこと、グループの重役たちを無視はできないんだ」
「なんだよ? もしかしてその重役連中に逆らったりでもすれば、消されるとでも言いてえのかよ」
「……」
俺の冗談に、夏樹はいつになく真面目な顔で押し黙った。
いや、黙るなよ。本気に思えるだろうが。
オイ……冗談だよな?
ここは法治国家で、企業グループがそんな物騒な組織のはずがねえ。そんなのフィクションでしか──
「……」
俺も押し黙ってしまう。
そんな俺を見て、羽彩と日葵が心配そうな顔をするが、今回ばかりは構ってやる余裕がなかった。
エロ漫画世界に起こりそうなサスペンスの予感に、ただの竿役の俺は冷や汗が止まらなかった。
別作になりますが「元おっさんの幼馴染育成計画」が完結しました!
人生やり直しラブコメです。可愛い幼馴染たちと成長したい紳士の方は、覚悟して読みに来てくださいね(意味深)





