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あべこべ世界も大変です  作者: 川木
愛人編
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親戚と、家族旅行

「ね、ねぇ、卓也君。彼女とかいるの?」

「あ、は、はい」

「えー、まじか。えー……ち、ちなみにどんな子? 年上とか、タイプだったりしない?」


 ただいま母の従妹の家にいます。又従妹?の歌子さんがわかりやすくモーションをかけてきてつらい。

 母は従妹と仲良くおしゃべりしていて、子供同士で遊んでいてとばかりに、ソファに座らされたはいいけど、お姉ちゃんを挟んでいるのに前かがみで歌子さんが話しかけてきた。


「歌子さん。なにをちょっかいかけているんですか。前来た時はいなかったじゃないですか。今日もどこかに出かけておいてくださいよ」

「うぐ。ぜ、前回はだって、中1だったし、その」


 お姉ちゃんがずいと歌子さんと僕の間に遮るようにして辛辣すぎることを言うと、歌子さんは見るからに気弱そうに身を引いて視線を漂わせて言い訳した。

 歌子さんは大学生でお姉ちゃんより年上なのに、弱いらしい。よし、勝ったな。


 僕は歌子さんに引いて、めっちゃどうしようって焦っていた心を落ち着ける。どうやら僕には強気だけど、普通にお姉ちゃんのような体育会系人間には弱いようだ。なら、何も問題ない。なにせお姉ちゃんは絶対的に僕の味方だからね!

 ここは予定通り、お母さんが望む通りそこそこにお話しして時間を潰そう。僕はお姉ちゃんの左手をそっとひいて場を収める。


「お姉ちゃん、仮にも年上の人に、そんな恫喝したら失礼だよ」

「その言い方の方が失礼だと思うが、まあいいか。歌子さん、つい強めの反応をしてしまってすみません。ですが、可愛い弟に鼻息荒く声をかける人間がいれば、過剰反応してしまうのが姉心と言うもの。ご理解ください」

「ぐ。そ、そうね。もちろん、気にしてないわ。従妹同士、仲良くしましょう」

「僕らこの後、えっと、ガハラが丘ってところに行くんですけど、行ったことありますか?」

「あるよ、あるある。この辺の小学生以上はみんな行ってるよー。色々説明してあげよっか」

「あ、距離はそのままでお願いします」

「……はい」


 お姉ちゃんの肩を掴んで隠れるような感じになりながら言うと素直に引いてくれた。うんうん。ごく普通の親戚の距離感でお願いしますね。


 お姉ちゃんガードによって、歌子さんとお話ししたところ、メジャーな観光地の一つで、小学校の遠足とかで行くことが多いらしい。低い山でちょっとしたピクニックでもいいし、麓は温泉もある観光街らしい。なかなかよさそうだ。

 夕方ごろには辞去した。最後歌子さんには握手してほしいとかわけわからないこと言われたけど、何だか満足そうだったからいいか。おばさんは普通にいい人だった。お母さんと仲がいいだけああって、元気になってほんとによかったわねー、もう心配かけないようにねーと言ってきたくらいだ。


 面識あるらしいけど、正直全然覚えてないし、人見知りを発揮したのを察してくれたのかめっちゃさらっとした感じでとても好感が持てる。娘さんとは大違いだ。


「卓也、いくら親戚だって言っても、別に握手とか断ってよかったんだぞ?」


 本日の宿へ向けて向かっていると、後部座席からお姉ちゃんがそう言ってきた。僕は助手席なので一度軽く振り向くと、偉そうに腕組みをしてお姉ちゃんは不機嫌そうだ。まだ引きずっているのか。


「えぇ、いや別に。握手くらいよくない? ちょっと有名人になった気分だよね」

「卓也がいいならいいが……お母さん、とりあえず、注意しておいてよ?」

「そんなに言わなくても。初対面でちょっとテンパってただけよ、きっと。なにせうちのたくちゃんは男前だからねー。ふふふ」


 車を運転しながら、母さんはそう軽く笑う。後部座席のお姉ちゃんが呆れたように息をつくのが聞こえた。


「そんな呑気な」

「真面目に言うと、別に頻繁にあうってわけじゃないし、二人きりにさせなきゃ大丈夫でしょ? お姉ちゃんがついてるんだから」

「それはそうだけど」

「ていうかお姉ちゃん、あたりキツクない? かなちゃんにさえ、普通に話してくれてるのに」

「あのなぁ、お前が歓迎している相手と、お前が嫌がっている相手では、違って当然だろ。あと、それはそれとして加南子は隙あらば殺したいが」

「そろそろその殺意ネタも面白くないからやめてね」

「別にネタではないが、不愉快なら控えよう」


 ガチで言ってそうでちょっと恐いんだけど、そこは触れずにおこう。

 でもそうか。歌子さんには初対面で僕がドン引きしていたから、普段より警戒して嫌われ役を買って出てくれていたと言うことか。はー、ホントにいい人。大好き。

 向こうにはいなかったお姉ちゃんだけど、もう完全に僕にとって馴染んでいる。お姉ちゃんのことは心から信頼できる大事な家族だ。だからこそ、かなちゃんへの危険な発言も理解できるし、逆にだからこそ僕がかなちゃんを庇う限り、本当に大変なことは絶対起こらないって信じれるから、スルーもできる。


「お母さん、今日の晩御飯って、何系? お腹空いてきたんだけど」

「山の幸と、特産の牛肉がメインだけど、宿はあと30分くらいだけど、夕食の時間まではまだ時間があるわよ。どこか喫茶店とか寄って、なにかつまむ?」

「んー。お姉ちゃんはどんな感じ?」

「私は別に。入れようと思えば今すぐ夕食も可能だが、我慢できるぞ」

「我慢なの? 二人とも言ってよー、お昼少なかった? じゃ、ちょっとどこか寄りましょ。何がいい?」


 お姉ちゃんはさらっと言ったけど、我慢、ということは僕よりお腹減っているってことだ。お母さんは少し慌てたようにそう言った。僕もまわりの景色を注意してお店を探してみる。


「お。あの看板のラーメン屋は? 美味しそうじゃないか?」

「え、いやいいんだけど、夕食の分、ちゃんと空けておいてよ? たくちゃんは、ラーメン屋でいい?」

「うん、いいよ」


 あと1kmの表記がされた看板をお姉ちゃんが示したので、そこに入ることにする。手作り感のあるラーメンの絵がなんか味があっておいしそうだ。

 どうでもいいけど、3kmも前に看板出ているの、田舎って感じするよね。まぁ、言っちゃ悪いけど。


 ラーメン屋は僕は知らないけど一応チェーン店だったらしい。だから新しい店舗っぽいのに看板出せるくらいの余裕あるのかな。


 中に入ると、夕食にはまだ早い時間なので、かなり空いていた。テーブル席に座ってメニューを見る。

 確かに、ラーメンはおいしそうだ。でもさすがにラーメンを食べると夕食に差支える。すぐじゃないって言っても、3時間ないくらいだし。


「お姉ちゃんは何食べるの?」

「そうだな。一番人気の醤油にするか。二人は?」

「私は減っていないから、んー、餃子だけ頼もうかな。一人前は食べないけど、二人も食べるでしょ?」

「そうだね。僕はラーメンは止めておくよ。ギョーザと、後でアイス頼も」

「私も餃子は食べるし、二人前にしておくか。すみません。注文お願いします」

「はーい」


 店員さんに注文すると、予想以上に早く出てきた。餃子はいい感じに焼目がついていて、いい匂いだ。

 小皿にギョーザのタレをつくり、早速一口。じゅわっと肉汁? が出てきて熱かったので、口を半開きにしてはふはふしたけど、美味しかった。

 お姉ちゃんのラーメンも、美味しそうに食べるので少しだけ食べさせてもらった。なかなか懐かしい感じの昔ながらの味だ。ちぢれ麺なのも個人的にグッド。


「ごちそうさま」


 アイスも食べ終わったのでお店を出て、そのまま宿泊先へ向かった。

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