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あべこべ世界も大変です  作者: 川木
恋人編
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デートじゃないよね

 僕の服を買うにあたって、まず大事なのは予算だ。今までファッションとか興味ないし、安いので買ってたけど、ゲームと言う金食い趣味があるから、貯金は多くない。予算は1万円。できれば5千円以下に抑えたいところだ。


「どんな格好がいいと思う?」

「え、私の意見聞いてくれるの?」


 何を言ってるんだか。今のところ暫定恋人なんだから、かなちゃんの為に服を買うのだ。てかさっき自分でも私の為にとか言ってたじゃん。なのになんでかなちゃんの意見を無視すると思うのかな。


「どんな服装が好みなの?」

「うーん、好みかぁ、色々着せてみたいけど、でも、たくちゃんはどんな格好してても可愛いしなぁ」


 ……あのさ、元々こっちの僕の感覚もあるし、こっちの世界にもなじんできたしさ、正直可愛いって言われて、最近何だか照れくさいけど嬉しいって思わなくもないよ? でも、どんな格好しててもとか、それって今から服選ぼうって時に言うこと?

 ジト目で見ていると、にやけていたかなちゃんははっとして、視線をそらしつつさらに言葉を続ける。

 

「え、えーっと、それでもあえて言うなら、そうだなぁ、短パンとか?」

「ええ? 短パンって、小学生じゃないんだから」


 半ズボンくらいならともかく、短パンって結構な短いのを想定してない? 少なくとも、膝より上でしょ? 膝下の半ズボンなら会ったけど。でもあれってポケットいっぱいで、デートって感じはしないって言うか。

 少なくともオシャレか? うーんでも、ちょっと短いのははやってるんだっけ? くるぶしが見えるのがオシャレとか? なんかちょっと、カッコつけてる感じがして自分がするのは恥ずかしかったけど、デートとして格好つけようって今、そんなこと言ってる場合じゃない。と言うかむしろそれ以外ないよね。


「くるぶし丈のとかどう? あれ、僕にはどうかなって思ってけど、オシャレじゃない?」

「えー、んー、いいと思うよ」

「え、不評? どんなのがいいの? 正直に言ってくれていいよ?」

「どんなのって言うか、個人的に足がでてたら嬉しいなって思っただけ……んー、なんにもないよ!」


 え、思いっきり言ってたよね? 足って。露出してりゃいいってこと? うーん。それって半ズボンよりもっと短いのがいいってことだよね? 普通に恥ずかしいんだけど。室内ならまあともかく。


「そういう、部屋の中でしか着られないのじゃなくて外で着るやつだよ」

「そうだよね、ごめ……あれ? もしかして、家の中なら着てくれるってこと?」

「着てっていうか、うーん、程度によってはいいけど。そういうふざけたのじゃなくて、ちゃんとしたの考えて?」


 恥ずかしいけど、かなちゃん相手ならそんなに。さすがにパンツ姿は無理だけど、太ももとかは別に。水着の時とか普通に出てるわけだし。あ、いやでも、まじまじと見られるとしたら恥ずかしいかも。向こうだと誰も気にしないし、だからこそ恥ずかしくないってのもあるかもだし。

 ……よく考えたら、二人きりの部屋で、かなちゃんがガン見してくる状況で足を見せるのは、そんな大したパーツじゃなくても恥ずかしいな。仮にくるぶしでも恥ずかしそう。


 うん。頬を染めてにやけているかなちゃんには悪いけど、その予定は無期限延期と言うことで。

とりあえず色々お店のあるモールに向かう。電車で二駅だ。ちょっと高いくらいじゃないと、デート服っぽくないもんね。


 かなちゃんを部屋から出して着替えて、とりあえず普段着になって、家を出る。かなちゃんとちょっと差ができて気もするけど、今日はデートじゃないからセーフです。


「ねぇ、結局どんなの買うの?」

「夏っぽいので、それっぽいの」

「曖昧だねー」

「かなちゃんの指示が駄目だからだよ。反省して」

「えー? 私の要望は割とストレートに明確だったと思うけど」

「そういう変態的なことは、ストレートに言わなくていいんだよ」

「変態って、それはちょっと言いすぎじゃない? そんな変なこと言ってないでしょ? ただちょっと、足を出してるのが見てみたいってだけなのに」


 恥ずかしくないのかな? 僕は、かなちゃんがそう言うこと言うだけで、なんか僕の方がちょっと恥ずかしいんだけど。あ、男女の感覚ってこの辺も変わってるってこと? 女子なら男子のことちょっとエロい目で見るのが普通だから隠す気はないってこと?

 いや、隠そうよ。まぁ、まだ僕の部屋の中なら、気心知れてるわけだしわかろうと言う努力はできなくもないけど。ここ野外だよ? 電車内だよ? 今のかなちゃんの発言で、前に座ってる女の人こっちチラ見したよ?


「はー、かなちゃん、今ちょっと、一年前の僕なら蹴ってたから。反省して」

「ええぇ、そんなこと言われても。ちょっと口が滑ったし、本人に言うことじゃかったかもだけど、まぁ、いいじゃない。怒ってる?」

「怒ってないけど、隣にいるの恥ずかしくなるからやめてね? 距離とるよ」

「え、ごめんなさい。初デートで距離とられたら悲しくなるからやめて」

「何言ってるの? デートじゃないでしょ?」

「え?」

「デートの服を買いに行くための買い物は、あくまで準備段階何だから、デートじゃないでしょ」


 どうも勘違いしているようなので、ここは改めて宣言しておく。デートじゃないから。普段着で初デートするほど無粋な男じゃないよ。

 僕の主張に、かなちゃんは目を見開いてから、うーんと首を傾げた。


「わからなくもないけど、でも定義としては、異性と二人きりで出かけたらデートじゃないの?」

「だったら、昨日より前もデートしてることになるけど、違うでしょ?」


 いやまぁ、本当に遊ぶだけでも二人きりなら同性でもデートってふざけて言うのは全然ありだと思うけど。でも本当に恋人としてデートしようって話をしているときに、その段階のやつを入れたらだめでしょ。


「あ、うーん。個人的には結構デート気分で楽しむこともあったんだけど、そうだね、確かに、ここからは正式なデートになるんだし、分けたいよね」

「かなちゃん、そういう事は言わないでもいいんだよ?」


 なんで勝手にデート気分になってるの? やめて。勝手になるのはいいとして、それを今僕に言う必要あった? 前から僕のこと好きだったんだ、とかちょっとドキドキしてくるから。冷静に考えたら妄想癖って感じだけど、好きな相手と言うだけでむしろ嬉しいとかなんなの。


「ん? あれ、顔赤いけど、照れたの?」

「聞かなくていいっつーの。もう。かなちゃんて、本当に最悪なんだけど」


 真顔ならまだ天然かなって思うけど、完全ににやけてるし、わざとじゃん。まあ、僕の反応に一瞬不思議そうな顔してからのにやけだから、その前の暴露は普通に天然なんだろうし許すけど。そっから仕込んでたらさすがに一発しばくレベル。


 とか話していたら、目的についた。

 モールに行くと、夏休み初日は、他の学校も同じだからか、結構学生が多い。全く平日の感じがしない。


「とりあえず、メンズの店一通りまわろっか」

「うん」


 とは言っても、男物のお店ってそんなに多くないんだよね。男の場合引きこもっていて服は通販のみって人が少なくないし、そもそも人口比的にも少ないわけだしね。男女どちらでも行けるお店はあるので、そこも合わせて見ていく。


「あ、これなんかどう?」

「ん、いいじゃん。かなちゃんどうしたの? 短パンじゃないよ?」

「ごめんって」


 かなちゃんが指さした男性用マネキンの格好は、まさに僕が思い描いていたズボンのをはいている。なるほど、上は普通にシャツ一枚でもいいのか。隣のはベストみたいなの着てるけど、夏なのに重ね着する意味が分からない。

 シンプルだけど、結構ズボンだけでオシャレ感でるなー。サンダルとの組み合わせもいい。うん。シャツならこれと同じような無地のも何枚か持っているし、使いまわしやすそう。


「これにしようかな。色は紺か黒かどっちがいい?」

「こっちの白は?」

「え、白はなんか、あんまり」

「そうなの? 夏だし、涼しそうかと思ったんだけど」

「うーん」


 言われて見れば、涼しそうなのはそうかも。でもちょっと座って砂とかついただけで目立ちそうだし、白シャツと合わせにくいし、そもそもなんか、派手な感じであんまり。いや、白が派手な色かって言われたらそうではないんだけど、なんか。なんとなく。


「あんまり? だったらこの水色は?」

「うーん、ちょっと試着してみる」

「うん」


 水色は、白よりはずっといい。それに確かに、紺に比べてずっと涼しげだし、水色のシャツは持ってないから、使いやすそう。ズボンを持って、試着室へ向かう。


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