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あべこべ世界も大変です  作者: 川木
恋人編
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テスト結果

「やった」


 最後の採点結果を受け取り、僕は小さく声を漏らす。声が出てしまったことが恥ずかしくて先生を見ると、にこっと微笑んでいる。照れ隠しに笑いながら、席に戻る。


「たくちゃん、やったね」


 かなちゃんが僕の反応から察したらしく、そう小声で言ってくれるけど、そういうのは見てから言ってほしい。


「ふふん、どやっ」


 席についてから、振り向いているかなちゃんに、答案を裏返して見せる。96点! 今回のテストの全科目で最高得点だ。得意科目だし、前回でもそこそこよかったし、90以上はと思っていたけど、後半行ったのは素直にうれしい。


「おっ、すごいね、たくちゃん」

「私にも見せてくださいよー」

「うん、いいよ」


 隣の歩ちゃんと、振り向いている市子ちゃんにも見せる。自慢してるみたいでちょっと恥ずかしい気もするけど、でも二人とも一緒に放課後勉強したりしたし、今までも全員で見せ合ってるからね。別にこれだけ自慢してるわけじゃないからね。


「お、ほんとにすごっ」

「ぇへへ」

「さすがですねぇ」


 それほどでもないよー。僕が本気を出せば、このくらいなんてことないさ。ふふふ。


 こうしてテストも無事終了したので、放課後はみんなでお疲れさま会をすることになっている。

 この間からしようって約束していたので、四人で駅前の喫茶店に行く。結構有名なお店でケーキも美味しいらしいけど、結構高いし、なによりチェーン店とかじゃないちゃんとした喫茶店ってなんか敷居高いから、こういう機会に行くことになった。


「わー、やっぱ、雰囲気いいよね」


 春の交流会で、金山さんの家の喫茶店にいってから、喫茶店に興味があったんだよね。ここも格好いいなぁ。


「それではみなさん、この度はお疲れさまでしたー。かんぱーい」

「かんぱーい」


 やや奥まった席につき、少し小さめの声で挨拶してグラスをあわせ、それぞれカップに口をつけた。

 ミルクと砂糖を入れたコーヒーは、少し苦みがあるけど、香ばしい感じがしておいしい。あんまりコーヒーは普段飲まないから、ここがすごくおいしいのかはよくわからないけど。

 早速ケーキを口に運ぶ。チョコレートケーキにした。うーん、美味しい。なんだこれ。めちゃくちゃ美味しい。まじか。


「お、美味しいっ。これ、美味しいよ」

「ほんとだねー。こっちのモンブランも美味しいよ」

「ちょっとかなちゃん、感動が足りない」

「え、そう? むしろそんなにそっちのケーキ美味しいの? 一口頂戴」

「いいけど、感動してよね」


 一口分を切りわけて、かなちゃんのお皿に乗せる。かなちゃんはそれを、むむっと何やら眉を寄せながら口に運ぶ。


「うっ、うまいっ」

「うーん。70点」


 そして目を見開き、両手でどんと机を軽く叩きながらそうコメントしたけど、わざとらしい。感動した感をだそうとしてる感がする。


「えー、微妙すぎる」

「かなり色をつけたつもりだよ。そっちはどう?」

「うん、モモのタルトも美味しいよ」

「私のチーズケーキもいけます。……、あの、よかったら一口交換しません?」

「え、いいの? 是非是非」

「え、じゃ、じゃあ私も」

「うん、いいよー」


 2人とも一口ずつ交換した。渡されてから、女の子と交換するのって、なんだかちょっと緊張するかもと思いつつ、二人も普通なので、気にせず食べる。


「どっちも美味しい。あー、すごい、この店全制覇したい」

「じゃあとりあえず、私のも一口食べる?」

「かなちゃん、言うのが遅いよ」

「えー」


 いや、だって、普通は僕の食べたらすぐくれるでしょ。え、もしかしてくれないの? ってちょっとどきどきしたよ。

 もちろんもらった。うーん? モンブランってものを、実は初めて食べた。すごい栗の味がする。けどそもそも、栗もあんまり好きじゃないんだよねぇ。うーん。たぶん美味しい。


「たくちゃん? モンブランの反応薄くない?」


 あ、そういうのはいいです。


 それぞれ感想も言いあいながらじっくりと食べ終わり、話題は夏休みについてに移り変わる。

 まず歩ちゃんが、夏休みのボランティア部の活動を話題に出した。どれだけ参加するか、というやつだ。一応、夏休み開始までに参加を希望するなら言ってほしいと言われている。


 定期的な街の清掃のもあるし、夏休み中はほぼ毎週の児童館での普通に子供と遊ぶのもある。一番大きなイベントは、児童館子供夏まつりのお手伝いだ。児童館の中だけで行われる、小さい夏祭りで、夏祭り専用チケットを購入して、それを現金代わりに出店で使えるシステムになっている。

 ヨーヨー釣りとか、綿菓子とか、その日にやる出店は基本的に決まっていて、例年のことなので道具もちゃんとそろっている。こまごました準備は職員でするので、前日と当日に、設営や店番、片付けのボランティアをするのだ。


 正直、めっちゃわくわくする。だって自分が屋台出す側になるとか、なんか興奮する。でも同時に、接客するってなると、気が重い。子供たちに関しては、知らない子とも話すのに、少しは慣れてきたけど、やっぱり大人相手だとしり込みするし。

 てか、実際に頑張ったら何とかなるだろうくらいには、人なれしてきた自信はある。最近は、店員さんに自分から話しかけて商品の場所聞いたり、手をあげて注文をしたりできるようになった。でもそれも緊張するし、自分の中で心の準備してからの話だ。

 それだけ頑張るってことに、しり込みする気持ちが0ではない。前向きに活発にと活動を心掛けているけど、性根が引きこもりなので、なかなか改善されない。


「夏祭りは面白そうだし、私はスーパーボールすくいやりたいな」

「ほう、市子、積極的ですね。私はやっぱり綿菓子ですね」

「食品系もやらせてくれるんだっけ?」

「え? 駄目でしたっけ? いやでも、あくまでボランティアで、それぞれ職員がいた上でのお手伝い何ですから、平気でしょう?」

「そうなのかな、だったら私も綿菓子やりたいけど」

「えー、真似しないでくださいよ」


 この二人は完全に乗り気らしい。かなちゃんもふんふんと二人の意見を聞いて目を輝かせていて、やる気をのぞかせている。うーん。よし、僕もやるぞ!


「真似じゃないし―。とりあえずの希望なんだし、いいじゃん。二人は?」

「んー、確かに綿菓子を自分で作るのって、いいよね」

「ですよね!」


 市子ちゃんに促されたかなちゃんの言葉に、言い出しっぺの歩ちゃんが嬉しそうに声をあげる。

 確かにそれはわかる。でもここで僕まで綿菓子って言うのはあんまりに芸がないよね。んー。他に面白そうなものは。


「僕はじゃあ、かき氷とか? お店でするみたいな大きいやつだったら、してみたいかも」

「それもいいですね」

「んー、でも結構力いるんじゃない? 卓也君はたこせんとかの方が喜ばれそう」

「あー」


 確かに、簡単そうに見えるけど、大きい氷の塊だし、結構力いるのかも? 電気式ならできるだろうけど、それだったらぶっちゃけ僕もあんまりおもしろくないし。

 ん? でもなんでたこせんだと喜ばれるんだ? 力仕事以外にしても、綿菓子でも、あ、でもザラメの段ボールとか重いかな? スーパーボールとかも、準備と片付けを考えると大変かも?

 かさばるけど、重さがなさそうなたこせんがいいってことかな? 市子ちゃんはすぐそう言う意見でてすごいなぁ。


「えー、なんで卓也君がたこせんのほうが喜ばれるんですか?」

「え? それは……や、やっぱりなんでもない」

「えー、なんでですかー?」


 ん? 歩ちゃんは察せられなかったみたいだけど、なんで市子ちゃんは隠してるんだろう? でもここででしゃばって説明して、もし市子ちゃんが思ってるのと違っても嫌だし、歩ちゃんを揶揄するみたいになっても嫌だから言わないけど。

 とりあえず話をすすめよう。


「たこせん以外に、力仕事じゃなさそうなのって他にあるかな」

「んー、なんだろう。あ、受付は? 当日販売のチケットもあるし」

「あー、あと放送関係もあったよね。裏方になるけど、迷子の相手したり、親の呼び出しとか」


 色々と話してイメージを膨らませつつ、とりあえず夏祭りボランティアには参加することに決めて、みんなで部長に報告をした。


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