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あべこべ世界も大変です  作者: 川木
友達編
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お弁当をつくろう

 どうやら僕にスケボーの才能はなかったらしいけど、別にそんなの、人生において何の損もしないし。全然気にしていない。

 それより今日は児童館だ。


 確か、小学校一年生になったばかりの子供たちを馴染ませるために、お花見をする引率ってことだよね。当日、子供たちよりは早めの10時半には集合する。班ごとに分かれて、子供たちについて公園まで移動。遊んだり持ってきているお弁当を食べたり……あ! お弁当のこと何も考えてない!

 やばいやばい。えっと、時間は、まだ8時過ぎだし、待ち合わせの児童館まで徒歩10分くらいだ。大丈夫。問題ない。落ち着こう。


 まずは顔を洗って着替えて、朝ご飯を食べて、お弁当の用意だ。最悪おにぎりだけでもいいんだから、時間なんてかからない。

 あ、そう言えばかなちゃんは用意してるのかな? まだだったら一緒に作ればいいや。


「おはよう、卓也」

「おはよう、お姉ちゃん、お母さんも」

「おはよ。いいんだけど、その、もってつけるのやめてもらっていい? お母さんは寂しがりやだから、何だかおまけみたいでいやだわ」

「え? ああ。ごめん。じゃあお母さん、改めておはよう」

「おはよ、たくちゃん」


 ハートマークがつきそうなテンションで言われた。ちょっと嫌だ。家族のことは好きだし、親孝行する気だけど、そういう猫なで声出されても。可愛い女の子ならともかく、母親だし。普通に気持ち悪い。

 こう思ってしまうのはどうなのかな、とちらっと思ったけど、お姉ちゃんもちょっと嫌そうな感じの顔になっていたから、セーフだと判断する。


「パン何が残ってる?」

「卓也の好きなベーコンエピ残ってるぞ」

「あー、でもあれ最近飽きてきたんだよね」

「そうなのか?」

「あれは? ウインナーの奴」

「食べた」

「えー、たまには食べたかった」

「そうか。じゃあ次は残しておく」


 しょうがない。コロッケパンでいいか。

 席について食べながら、二人と今日の予定について話す。二人とも予定はないらしい。


「今日は子供とお花見だったな」

「平たく言えばね」

「ふぅむ。暇だし、私もついていってやろうか?」

「やめてよ」


 急に来られても迷惑だろうし、ホントに暇で仕方ないとしても過保護っぽく思われるし、やめてほしい。

 却下するとお姉ちゃんはさほど残念そうでもなく、そうか、と相槌をうった。


「やぁねぇ、過保護で」

「む。母さんほどじゃないだろ」

「私のどこが過保護なのよ」

「全部だ、全部」


 食べ終わったので、じゃれてる二人はおいといて、かなちゃんに連絡を送る。そろそろお弁当を用意するなら、かなちゃんにも聞いておこう。

 すぐに返事はきて、途中で買うつもりだったので、すぐ来るように言っておく。これでよし、と。


 なにがいいかな。ていうか何があるかな?

 立ち上がってキッチンに移動して、食料の確認をする。炊飯器の中には昨日炊いたご飯が十分に残っている。お弁当だからできれば新しく炊きたいけど、時間が微妙だし、昨日の夜ご飯に炊いているので、セーフとする。次に冷蔵庫をあさる。


「たくちゃんどうしたの? ほかに何か食べたいの?」

「ううん。ただ、お弁当作ろうと思って」

「あ、お花見だから? へぇ、いいわねぇ」

「材料があるなら、二人の分もつくるし、どっかでお花見したら?」

「気持ちは嬉しいが、それはないな」

「そうねー、たくちゃんがいるならともかく、女二人でお花見してもねぇ」


 ありでしょ? と思ったけど二人とも嫌なら無理はしない。考えたら、親と二人は微妙かも。と、そこにピンポーンとインターホンが鳴った、


「ん? 誰だ? こんな朝から」

「かなちゃんだよ、呼んだの。はーい、はいってー」


 ダイニングは玄関から一番近い部屋なので、廊下のドアが全開の今なら聞こえるだろう。大きな声で促す。ドアが開く音がして、かなちゃんが入ってきた。


「お邪魔しまーす」

「あん? こんな早くに加南子を呼んでどうするんだ?」

「一緒にお昼作るんだよ」

「……」


 あれ? なんか二人ともちょっと嫌そうな顔してる? うーん、かなちゃん嫌われてるなぁ。まぁ、しょうがないか。

 僕はもう気にしないし許しているし、お互いさまとさえ思っているけど、正直そこは、しょうがないとしか言えないくらいの過去があるので、しょうがない。僕の向こうでしたことが可愛くなるくらいのことはしたわけだしね。


「み、みなさん、おはようございます。えっと、たくちゃん、それで何するの?」


 居間の入り口に顔をだしたかなちゃんは、お母さんとお姉ちゃんにひるみつつ挨拶して、こてと首を傾げた。おお、そう言えば携帯電話ではお弁当作るって言ってないや。さっきのも普通の声量だし聞こえなかったのか。え、逆によく来たね。何にも言ってないのに。


「ごめんごめん、言い忘れてたけど、お弁当作るから手伝って。もちろんかなちゃんの分も作るから」

「え、え、い、いいの!?」

「こっちからお願いしてるんだけど。とりあえずメニュー決めるし、こっち来てよ」

「うん!」


 冷蔵庫の中をあけて、ざっと確認していく。まず卵はある。卵焼きは定番だ。考えるまでもない。あとはお肉に何があるか。

 買いだめ派なので、我が家ではお肉類も冷凍のみだ。冷凍庫を開けると、ミンチが目につく。とりあえずこれでハンバーグでも作ろう。あとは、すでに切られているポテトがある。これを揚げよう。同じく揚げるだけの唐揚げもあるので、これも揚げよう


「今のところ、卵焼き、ミニハンバーグ、唐揚げ、ポテトフライだけど、他に何か希望ある?」

「え、そんなに?」

「うん、あ、キュウリとちくわはあるし、キュウリつめようか」


 あとハムも入れておこう。これで色身も大丈夫でしょ。普段なら茶色一色でもいいけどみんなの前で、かなちゃんも食べるのに、それじゃちょっとかわいそうだもんね。


「あ、あとせっかくだしおにぎりにしよう。多めにつくって、他の人に分ける分とかつくるの、どう思う? うざくない?」

「え、うざくはないと思うよ。一人前用意されたら困るけど、おにぎり一つくらいならもらっても困らないし。人数多いから、余っちゃうことはないだろうし」

「そう? じゃあ、5人前くらい作っておこうか」


 もしかしたら子供でお弁当忘れたとかあったら可哀想だし、多めにしておいて損はないよね。冷凍の唐揚げもポテトも、1kg入りでまだ半分ある。唐揚げは新品の味違いもあるし、スペースわけておいておけばよりたくさん食べるだろうし。


「いいんじゃない。私はなにすればいい?」

「うーん、ちなみに料理はできる?」

「んー、卵焼きは作ったことないけど、包丁は人並みに使えるよ」

「じゃあ、とりあえずちくわとおにぎりをしてもらおうかな。わかる?」

「ちくわを切って、キュウリも中に入るくらいに切って入れるんでしょ? そのくらいならできるよ」


 じゃあまずは全部材料を出してと。

 作業しつつ、終わったかなちゃんに指示したりしながら、お弁当を作った。予定よりちょっと多くなってしまったけど、最悪ボランティア部のみんなに二個ずつ唐揚げ食べてもらえばなくなるだろう計算なので、大丈夫でしょ。

 そんな大きなお弁当箱はないので、プラスチックのケースにいれて、お弁当は完成した。


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