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あべこべ世界も大変です  作者: 川木
愛人編
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旅行

 2人に加恋と言う愛人を紹介してからしばらくして、加恋が車を所持していたので、せっかくだしみんなで遊びに行こうと言うことになった。智子ちゃんと市子ちゃんも一緒で、紹介したのも二人だけなので申し訳ないけど今回は恋人だけだ。

 春休みになった、まだ少し寒い日。僕らは車に乗り込んだ。旅行をするにあたって、加恋のことも二人のことも家族と面通しすることになった。その時はみんなめちゃくちゃ緊張してて笑えたけど、なんか結婚前の挨拶みたいで僕も結局緊張した。

 流れで僕も加恋以外の家族にはあった。かなちゃんのお母さんとかめちゃくちゃ久しぶりだったけど、なんか、涙ながらにお礼を言われた。不出来な娘だけど、僕を好きなのだけは本当だからとか、まぁ、照れくさいからその辺はカットで。


 とにかく、みんな顔合わせたし、家族公認だ。旅行に行く障害はない。と言う訳で、お泊り旅行だ。

 正直めちゃくちゃわくわくしている。加恋の運転は、一回のったけど漫画みたいにスピード狂みたいなこともなく、普通に安全運転してくれている。むしろ僕を乗せるといつもより気を付けているらしく、完全に法定速度だ。


「わー! すごい! 見えてきたよ!」


 目的地は桜の名所として名高い、僕の親戚がいるのとは逆方向の隣県だ。遠目にも、山が綺麗な色をしているのが見えて、僕は歓声をあげた。

 高速道路をおりて、もうすぐ到着だ。わくわく。


「ほんとだねぇ。可愛いねぇ」

「え? ……あの、景色見なよ」


 聞こえた返事に振り向くと、かなちゃんは僕を見ていた。何が可愛いだ。何年僕の顔見てると思ってるの? 景色を見なよ。普通に引くよ。

 僕の指摘にはっとしたように、かなちゃんは慌てて身を乗り出した。


「わ、わー。すごーい」


 棒読みすぎる。でも面倒になったのでスルーする。


 とにかく、到着した。目的地の大きな神社についた。ちょうど車が出てそれほど待たずに駐車することができた。車から降りると、みんなして一斉に伸びをした。


「加恋、お疲れさま。ありがと」

「ああ、いえいえ。お気遣いなく。このくらい平気よ」


 加恋はにこっと笑ってそう言うと、そっと僕の手を取った。大人っぽくて、余裕ある感じだ。ふむふむ。こういうとこも、いいね。


「お疲れさまーっす。って、さりげなく卓也君と手ぇ繋いでるし」

「ありがとうございます。よし、じゃあ私は反対側の手を繋ごーっと」

「市子、お前ほんと、調子いいな。次私だからな」

「え、あの、私は?」

「あ、あの、私、次変わるわね」

「さすが加恋先輩! ありがとうございます!」


 うん、みんながギスギスせず仲良くしてくれているのは嬉しいよ。でもさ、僕の意見は無視か! 衆目の中、常に両手に花! ……いや、しょうがないけどさ。そりゃ一人と繋いだらそうなるよね。つまり犯人は加恋。

 個人的にも、夜に宿ではまぁ、そうなるかと思ったけど、常にみんなデートモードなのか。


 周りの視線が、いつもよりさらに痛い気がするけど、気にしないことにしてとにかく目的地へ向かう。

 桜は満開で、とても綺麗だ。と思ってると自然と両側が二人とも距離をつめてきて、腕組みをするみたいになった。あ、右側のおっぱいの存在感相変わらずすごいな。左右で比べるとやっぱ違う。

 ああ、いやいや。そんな、ねぇ。今は景色に集中しないと!


「あっちの山、すごいわね。桜の微妙なグラデーションがいいわぁ」

「あ、本当ですねぇ。はー、いいっすねぇ」


 いろんな山を楽しんで、僕らは宿へ向かった。今夜の宿は温泉宿だ。結構有名で、貸切風呂もあるいいところだ。もちろん、料金はちゃんと個人でだしている。みんなでどこの宿にするか話し合うのもとても楽しかった。


「わ、綺麗な宿だね。写真で見るより、ずっといいや」

「そうだねぇ」


 かなちゃんが何やら感激したように声を上げた。確かにいい感じだ。いかにも高級そうだし。中庭にも桜があって、雰囲気は最高だ。

 紅葉の小さい木も可愛い。秋にも来たいくらいだ。


 テンションを上げながら部屋につくと、宿の一室なんてものじゃない。5人で泊まれるだけあって広くて、テーブルのあるリビングを含めて三部屋もある。と言っても、襖が取っ払われているから実際には大きい一部屋って感じなんだけど。お布団を引いてみんなで一列で寝る予定だ。


「ひっろ。やべぇな。なんか、ドキドキしてきた」

「え、なに、ちょっと、やめてよ?」

「ちょ、市子、お前、変な意味じゃねぇよ!? むしろ変なこと言うなよ!」

「もー、ちょっと二人、せっかくのいい宿なのに大きな声出さないでよ」

「はーい。ほら、智子のせいで怒られたじゃん」

「てめぇ……ちっ」


 なんで僕、引率の先生みたいなことやってるんだろ。ちょっとテンション上がるけど、同時に悲しくなる。違う。僕の思ってた、お高め旅館でのデートってこういう雰囲気じゃない。

 智子ちゃんも、そういう言葉遣い、普段ならともかく、今は違うんだなー。自重してもらおう。


「もう、喧嘩しないの。智子ちゃん、テンション上がってるのかも知れないけど、口が悪いよ? レッドカード」

「ぐ。ご、ごめん」

「なに、その突然のカード制」

「うるさい、かなちゃんはイエローカードだよ」

「だからなんなの」

「まぁまぁ、みんな、まだ夕食の時間まで1時間くらいあるけど、どうする? 先にお風呂入る?」

「あ、いいですね! 共同の大浴場と、貸切風呂と両方入りたいですもんね」


 加恋の提案に市子ちゃんが元気よく乗っかった。むむ。確かにそれはそうだ。貸切風呂はまだ予約は開いているということだし、どっちも入りたい。


「じゃあ、まず大浴場で汗を流してからご飯食べて、ゆっくりしてから、貸切風呂でいいかしら? 卓也君?」

「あ、うん。それでいいと思うよ」

「はい、じゃあみんな用意して。あ、ごめんなさい。なんか、私が仕切っちゃったみたいになって」


 何故か僕に確認してきたので応じたんだけど、はっとしたように加恋はそうみんなを振り向いた。うーん。普通にしっかりしてるのに、妙に気弱なんだから。普通に、一番年長なんだからリーダーシップをとってくれても全然いいでしょ。


「あ、いえいえ。助かります」

「うんうん。別に、先輩ですし、仕切ってくれていいんじゃないですか?」

「そうだな。私もいいと思いますよ」


 みんなもうんと頷いてくれているし。よかったよかった。

 みんなで会うのは今日で三回目だ。みんな馴染んでくれて何よりだ。いい感じだ。僕が言うのもあれだし、仲良くなるのを強制するのはあれだけど、やっぱり仲良くなってもらうに越したことはない。僕がどれだけ気をつかうかが全然違うからね。


 僕は気分よく、かなちゃんに渡されたお着換えセットを持って大浴場に向かった。と言っても、男子用は女子用の隣なので、普通にみんなと一緒だ。絶対先に帰らないでよ。ていうか声かけるまで中で待っててよって念を押されてから中に入った。


 中は、正直、前の世界の方が大きい。でも種類はちゃんとあるし、何より、完全に貸し切りだ。他の男性客はいない。こんなの嬉しいに決まっている。

 手足を伸ばしてのびのびと入り、あんまり気持ちいいので軽く足でお湯を蹴ったりしても、当然誰も何も言わない。くく。ちょっと楽しい。

 ばしゃばしゃしても、通路にお湯を溢れさせても自由だ。はー、なんだか、気持ちいい。でもあんまりびちゃびちゃにして、危ないのは僕なのでそろそろ自重しよう。


 洗ったり、休憩したりしつつも全湯船を堪能する。おっと。きっちりしっかり洗っておかないと。後でまた入るとはいえ、その時はみんなで順番だとそんなに時間ないかもだしね。


 すっかりしっかり綺麗になって、僕は少しぼんやりしながらお風呂をあがった。そして一度廊下を見ると、かなちゃんと智子ちゃんがいた。残り二人はまだらしい。

 少し談笑していると、すぐに二人とも来たので、そろって部屋に戻って、豪華な夕食を堪能した。


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