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あべこべ世界も大変です  作者: 川木
愛人編
132/149

滝沢先輩

「あの、滝沢さ、先輩。あの、○○大学って、どんな感じですか?」


 なんとか、おっぱいに目線がいかないように滝沢先輩の目を見つめながら声をかける。高校の先輩らしいのでそう呼ぶことにする。学校関係者って思った方が、気持ちエロ要素緩和される気がするし。


「ど、んな感じ、って言われると、難しいですね。うーん。結構自由、って言っても、私も他の大学知らないですし」

「あ、そうですよね。すみません、変な質問して」


 考えたら、僕だって高校について、どんな感じの高校って聞かれたら困るな。えー、難しいなぁ。なにを質問すればいいんだろ。……いや、うん。ほんとは質問したいこと、あるよ? むしろそればっかり気になって、全然他の質問思い浮かばないって言うか……。


 あー! あのおっぱい何カップなの!? まじで気になる! うーん、こっちだとそんなエロい象徴じゃないし、案外普通に聞いても許されたりしないかな? でも全然他人だし、親しいならともかく、みたいに思われるかな。靴のサイズとかの感覚でも、初対面で聞いたら変だもんね。あー、でも気になるっ!


「たくちゃん、もうちょっと具体的に聞こうよ」

「く。ちょっと、耳」

「え? うん」


 かなちゃんを指先で手招きし、近づいてきたので手で口元を隠して絶対聞こえないようそっと尋ねる。


「先輩、おっぱい何カップだと思う? 気にならない?」

「……いやまぁ、私も多少気になるけどさぁ。初対面で気になる?」

「気になるんじゃん。ていうか内緒話してるのに普通の声出さないでよっ」

「いや、気になるなら普通に聞いたら?」

「え、いいの?」

「別にいいでしょ」


 いいんだ……!? ほ、ほんとにいいの? 彼女の前で、ほぼ初対面の人のカップ数聞くとかいいんだ……!? なんか、ドキドキしてきた!!


 僕は胸を抑えながら、そっと滝沢先輩に改めて向きあう。滝沢先輩は僕とかなちゃんのやり取りに不思議そうに、でもほんわか微笑みながら、なに? と促してきた。


「あ、あのぉ……」


 う。変に口の中唾溜まってきた。き、緊張する。ごくりと飲み込んで、唇をしめらせてから何とか発音する。


「な、何カップ、ですか?」

「え? えっと……その、大きすぎて恥ずかしいから、内緒にしたいんですけど……言わなきゃダメですか?」


 ぐわっ。可愛い。

 うわ、うわ。なんかめっちゃ照れ顔になって抱き込むように胸を抱いて俯き気味になって滝沢先輩、年上だけど可愛い。それに、腕で胸潰されてるけど明らかにはみでてるし! エロい!


「あ、あああ、すす、すみません。い、嫌なら言わなくて、全然、全然いいですぅ」

「なに慌ててるのさ、すみません。デリカシーのない質問しちゃって」

「いえ、気になりますよね……よく言われます。すみません、隠すことないんですけど、その……実際に言ったらだいたい引かれるので」

「あー、まぁ、漠然としてることを数値化すると予想以上ってこと、ありますもんね。ただの好奇心何で、気にしないでください」


 僕がテンパり過ぎたのもあって、ちょっと気まずくなりかけたけど、かなちゃんがフォローなのかよくわからないことを言いながら、何とか場の空気を変えてくれた。


「いえいえ、大丈夫ですよ。その、私、恥ずかしながら男の子と話す機会がないので、その、戸惑ってしまって。失礼があったらすみません」

「気にしないでください。たくちゃんはちょっと変わってるので、失礼なことなんてありませんから」


 それはさすがに失礼じゃない? まぁ、気を取り直して、何か別の話題を振ってみよう。えーっと。カップ数以外で知りたいことか。


「その、おっ……えー、えーっと」


 駄目だ。今完全に、おっぱいってどんな感じですかって聞こうとしてた。漠然とし過ぎ、じゃなくて、まずいだろ。なんだ。どんな感じって。さすがにかなちゃんにも呆れられ……あれ、すでに凄い呆れ顔してる!


「たくちゃん、そんな気になるなら、とりあえず言ってみたら? 本人気にしてるっぽいけど、まぁ、聞くだけならそこまで失礼でもないだろうし」

「う、うん。すみません、おっぱいって触ったらどんな感じですか?」

「え? えっと……よかったら、触ってみます?」

「え!? いいんですか!?」

「たくちゃん、声、声」

「は、す、すみません。なんでもないですー」


 思わず立ち上がって大きな声を出してしまった。恥ずかしい。周りに謝罪しながら座りなおす。でも、しょうがなくない?

 滝沢先輩は戸惑ったようだったけど、なんとか笑顔を維持している。う。なんかいじらしい感じ、かなちゃんに似てるかも。悪い意味でドキドキしてきちゃうなぁ。単におっぱいだけなら別腹だからセーフなのに。いけないいけない。


「じゃ、じゃじゃ、じゃあ、じゃあ、そのー、お、お願いします」

「たくちゃん、引くくらい動揺してるんだけど、落ち着いてよ」

「ぐ、ごめ。あ、ていうかこんなとこじゃ嫌ですよね。移動しましょう。静かなところへっ」

「え、そんな大げさな。滝沢さん、大丈夫ですか? 引いてませんか?」

「だ、大丈夫です」


 お会計をすませる。僕がきっかけなので、ここは僕が持つ。かなちゃんにも言っておいたので、問題なくスルーされる。滝沢さんは何か言いかけたけど、お礼ですからと言うと頷いてくれた。おっぱいを触ることを考えたら、安いくらいだ。って、いやいや。あくまでお礼だし、全然世間的に後ろめたくない行為で金銭絡まないから。うん。


 とにかく僕らは喫茶店を出て、人目のつかないところへ。と言っても、家とか知られたくないし、どうしようか。


「えっと、この辺で人目につかないところとかあるかな?」

「えぇ、ガチすぎるんだけど……まあ、公園の隅とか?」

「あー、あの、よかったら、うち、一人暮らしなんですけど。あ、変な意味じゃなくて、コーヒー奢ってもらいましたし。一駅違いですけど、歩いていける距離ですし」


 え……うーん。知らない人の部屋は、ハードル高い。でも一人なら、かなちゃんと二人なら負けないし、いい人なんだから変なことないはず。それに、世間的に大丈夫って言っても、揉んでるのを人に見られたくないよねぇ。

 うーん。でもどうなんだろ。不安はあるので、タイムをもらってかなちゃんに小声で相談する。


「か、かなちゃん……行っても大丈夫だと思う?」

「うーん、まぁ、大丈夫でしょ。行きたいなら。さすがに、こんな事態を予想してしかけるとか無理だし、普通にいい人なんだろうし。この間届いたスタンガンも持ってきてるし」

「え、そんなのあるの?」

「自主練しただけの護身術だと、不安な万が一あるかもって思って、買ったんだ」

「ふーん? まぁ、じゃあ大丈夫だよね」


 相談を終えて、ちょっと離れた距離を戻して、なんだかもじもじして待っていた滝沢先輩に声をかける。


「すみません。お待たせしました。お邪魔します」

「そ! そうですか」

「はい。ところで、ずっと敬語ですけど、いいんですか?」

「あ、う。す、すぐにはやっぱり難しいので、徐々にでお願いします」


 よくわからないけど、とりあえず滝沢先輩の部屋に行くことになった。

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