表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あべこべ世界も大変です  作者: 川木
愛人編
122/149

文化祭について

 僕らの通う高校の文化祭は、近隣の高校より少し遅くて、11月の頭になる。夏休みが終わってすぐに話し合いがされ、それに向けて準備が始まる。と言っても出し物の内容によって、夏休みの間に準備をするところもあるらしいけど、一年生はいずれも教室をつかっての出し物と決まっている。

 漫画みたいな飲食店は禁止だ。と言うか、お金のやり取りはない。二年生は体育館を順番に使っての演劇、三年生はまた教室での出し物。そして別途部活別の出し物。そんな感じで、中学の時とそれほど変わらないみたいだ。


 僕らのクラスは一時間の話し合いと多数決の結果、プラネタリウムに決定した。なんでも、割と簡単に作れるらしい。事前にその装置をつくったり用意する班、前日に教室を片付けて暗幕はったり用意する班、当日にお客さんを案内する班に分かれる。終わった後の片づけは全員一緒にする。

 もちろん準備する班が一番人数が多い。準備班の中でも、装置作成、ポスター作製、買いだしの3グループに分かれる。


 僕らは無難に、前日に準備する班になった。だって作り方知らないし、正直あんまり興味ないし。星座とか、何となく格好いいけど、全然そんな形に見えないし、無理やりすぎじゃない? って思ってしまうので。


「てか、私、文化祭ってもっとすげーの想像してたわ」

「すげーって、例えば?」


 放課後、なんとなくぶらぶらしてファーストフード店に腰を下ろすと、自然に話題はホームルームで話し合った文化祭におよんだ。


「例えばって……いや、具体的にはないけど、こう、準備することとかたくさんあって、クラスみんなで協力し合って、青春する、みたいな」

「あ、わかる。私もそんなイメージだった。中学の時は先生が決めたことしてただけだし、なんか高校では凄いことすると思ってた」

「だよねっ」


 智子ちゃんの曖昧な発言に、市子ちゃんが相槌をうった。それに智子ちゃんは嬉しそうに身を寄せたけど、そんな二人に歩ちゃんはクールな感じで口を開いた。


「いや、そんなこと言って、二人は文化祭に対して青春捧げたい、みたいな熱量、どうせないでしょう?」

「ん? なんだ、歩、意外とクールなやつなんだな。結構そう言うの、私は嫌いじゃないんだけど」

「いや、歩は結構熱血型のはず……どうかした?」

「どうかしたって言うか、そんな熱血してたら休日出勤になるじゃないですか。私はともかく、二人は恋人がいるし、忙しいでしょう」

「あー、なるほど」


 あ、なんか傍観してたら一気に三人から見られた。さすがに馴染んだ三人とは言え、いきなり一斉に見られると、なんかちょっと恥ずかしいな。


「ぇへへ」


 とりあえず笑って誤魔化しておこう。


「う」

「ぐ」

「うっ」

「え、な、なに? 恐いんだけど」


 誤魔化した途端、三人は胸を押さえた。その妙に揃った動きにびびって、思わず隣のかなちゃんの服をつかんでひく。かなちゃんは普通に首をかしげている。


「どうかした?」

「いや、どうかしたってこともないけどさ…」

「うんまあ、なんでもないよ」

「そうですね。普通に卓也くんが可愛すぎただけです」

「え、今さら?」


 は? なにそれ、と思った歩ちゃんの言葉に、何故かかなちゃんが斜め上につっこむ。今さら? じゃないよ!

 かなちゃんのアホすぎる台詞に、市子ちゃんと智子ちゃんは苦笑して、歩ちゃんはやれやれと言わんばかりのオーバーリアクションで肩をすくめた。


「そりゃあ、可南子さんにとったらそうでしょうけど、私たちには違いますよ!」

「いや、もう何ヵ月も顔を合わせてるんだから、普通にたくちゃんが可愛いことはわかってるでしょ?」

「もちろんそうですけど、それでも改めて正面から笑顔みたら可愛すぎるんですよ!」


 もうやめて……なんだこの会話。可愛いとかなちゃんとかに思われるのはいいよ。でもそんな、世間的にも可愛いが当たり前みたいな会話はおかしい。身内贔屓もほどがあるし、ましてそれを公共の場で言わないで!


「ちょ、ちょっと、やめてよ。普通に迷惑だから」

「あ、すみません。つい。卓也君が可愛すぎるので」


 だからそれをやめろっつーの! あああ、恥ずかしい。


「まぁ、確かにそうだな。そろそろ私らも、卓也君の笑顔になれてもいいと思う」

「そうだね、つい」


 二人までしみじみと真顔でそんなことを言う。そんな慣れるとかってもんじゃないでしょ。僕は化け物か。ていうか、仮に、万が一、世間的にも可愛いにカテゴライズされるとして、そんな慣れるとか言うくらい可愛く感じるのは、みんなが僕を好きだからだよ! 惚れた弱みだよ! でもそんなこと言えるか!


「は、話がずれてるよ。戻そう」

「あ、そうだね。確か、文化祭の話だったよね」

「そうそう! 僕らのクラスのことはともかく、他のクラスの出し物もあるわけだし、楽しみだね!」


 強引に話を戻す。かなちゃんが促してくれたのもあって、すんなりとみんなの意識は文化祭に戻った。

 部活動ごとにも文化祭に参加するわけだけど、ボランティア部はいつも通りそれも自由参加だし、出し物ではない。なんでも、当日近くから老人ホームからお祖母さんが来るから、それのお手伝い、みたいな感じらしい。

 これは車いすの人を、階段移動時とかに手伝うのが特にメインらしく、僕は最初から戦力外通知をされている。一応、案内もするけど、普通に運ぶ人がそのまますればいいし、別に来るなとは言われてないけど、うん、そんな感じらしいので遠慮した。

 そんなに長い時間ではないらしいし、じゃあ全員やめたってなるのもなんか申し訳ないってことで、市子ちゃんと歩ちゃんは参加することになった。


「へー、てかボランティア部って楽しいの? 私は基本、家のことあるから、絶対参加ができないし、部活動とか興味なかったけど、そんな緩い感じなら、私も参加してもいいのかな?」


 智子ちゃんが興味を持ったように、肘をついて前にのりだすようにそう言った。


「んー。楽しいかと言われたら、掃除とかだし、僕個人としては、やりがいはあるけど。みんなでやるから楽しいって感じかな。全然気の向いた時だけでいいみたいだし、よかったら入る?」

「へぇ? うーん、でもまぁ、やめとくか。あんまりあれだし、卓也君を追いかけてみたいなのも、かっこわるいし」


 ちょっと考えるように顎に手をあてた智子ちゃんだったけど、僕の特にアピールしない紹介に、あまり興味はひかれなかったらしく、諦めた。


「そう? まぁ別にいいけど」

「いいけどって、強制されても嫌だけど、そっけないのもなんだかなー」

「我儘だなぁ」


 僕としては、入りたいなら全然強制はしないけど、でも入ってきたらきたで、部活の人にもしかして愛人候補ってことが知られたら、なんかあんまり嫌だし、あくまで部活は部活で、恋愛感情とは別なので、いなくてもいいっちゃいい。まあいたらいたで楽しいだろうけど。

 なので別にいいけどってのが、正直な本音だ。だけど智子ちゃん的には気に食わなかったらしい。


「じゃあ、智子ちゃんが入らないなんて残念だなー」

「棒読みだなぁ。卓也君、来年の文化祭になっても主役はしないほうがいいね」

「リクエストに応えたのに、失礼すぎる! ちょっとなんとか言ってやって!」

「え? ああ、主役って言うか、脇役でもたくちゃんには無理だって。舞台度胸とかないもん」

「そういう事言ってって言ってないよ!?」


 だいたい一年後のことなんだから、そんなのわかんないでしょ! いや、まぁ、主役とか言われたらさすがにびびるけどさぁ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ