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あべこべ世界も大変です  作者: 川木
愛人編
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兄弟姉妹

 9月は連休が祝日が二回、すなわち連休が二回来る。休み明けで、あんまり気が進まない学校において唯一の希望だ。

 とは言え、まだ連休までは日がある。智子ちゃんもいるし、生活は楽しいけど、何というか、やっぱり一日授業を受けるって疲れる。ついつい夜更かしの習慣が体についてしまって、寝不足気味だし。


「ふわぁ」

「たくちゃん、さっきの授業でもあくびしてたでしょ」

「う。気づいてた? 声は出てなかったよね?」

「声とまではいかないけど、空気音って言うか、わかるよ、さすがにこの距離だと」


 お昼ご飯を食べ終わって、ついつい眠たくなってきた。本当は4限目の時点で眠かったけど、お昼休み開始のベルで眠気が飛んでいたんだけど、また復活した。でも、別に指摘しなくてもいいのに。相変わらずかなちゃんにはデリカシーと言うものがない。


「卓也君、最近眠そうだよね。もしかして体調悪いの?」

「ん。そういうわけじゃないよ。でもありがとう、市子ちゃん」

「そう? ならいいんだけど」

「じゃあ、何か夜更かしでもしてるんですか?」

「そんなとこ。特になにってことはないけど、夏休みの感覚が抜けなくて」

「あー、私もそうだな。わかる」


 智子ちゃんが同意してくれたけど、かなちゃんは少し呆れたように眉を寄せた。


「もう二週目だし、そろそろ抜けてよ。あ、あと智子ちゃん」

「え、なに?」


 急にかなちゃんに呼ばれて、頬杖をついていた智子ちゃんは頭を少しあげて驚いたように返事をした。その仕草が、何となく警戒している野生動物みたいでちょっと受けた。

 でも他の人は何とも思わなかったみたいで、口元に手をあてて笑ってしまった僕をスルーして普通に会話が進む。


「今度の祝日、隣町で手作り市やるらしいから、4人で行こうかって、夏休みの間に話してたんだけど、智子ちゃんの予定はどう?」

「ん? あー、そうだな。もしかしたら、妹連れて行くかもだけど、それでもいいなら、私は全然、予定ないけど」

「あ、そうなんだ。妹さんがいいなら、私たちも大丈夫だよ。ていうか、この中で兄弟いるの、たくちゃんと智子ちゃんだけだし、結構興味あるんだよね。紹介してよ」

「紹介はまぁ、いいんだけど」

「4人姉妹何ですよね? 全員ですか?」

「まさか。上は生意気だし絶対ないんだけど、一番下が、暇だったら面倒見てって結構言われるんだよ。あと、三番目は友達としょっちゅう遊んでるんだけど、たまに絡んでくるから、どうなるかはわかんないけど」

「へー。この間、お祭りの時にいたのが、三番目と四番目と、友達だったよね」

「ああ、うん。市子がいたんだっけ」

「そうだよ。仲いいよね」

「まぁ、姉妹だし、年が離れてると、結構面倒みるしね」

「意外ですよねー」

「自覚はしてるけど、堂々と言うなぁ」


 すっかり、四人でいるのにも慣れた感じだ。最初こそ、智子ちゃんに気をつかっていた感じだけど、もうみんな普通に話している。僕は智子ちゃんと二人で話したりしたのでわかる。でもみんなはそうじゃないのに、もう普通に友達みたいだ。

 こうしてみると、改めて、みんなのコミュ力の高さに恐れ入るなぁ。かなちゃんも物おじしないし。僕だったら、例えば市子ちゃんの紹介で一人入ってきたとして、学校で顔合わせるだけじゃあ、なかなかここまで打ち解けられないと思う。


 この間の智子ちゃんの家に行ったときは、割とすぐ馴染めて自信持っていたけど。あれはすごい気をつかって歓待してくれたのが大きいよね。変に自信持たず、謙虚な気持ちでこれからも頑張らないと!

 そうじゃないと、それこそ働くなんて無理だもんね! 最近調子に乗ってたかもしれない。今後も、今の状況に満足せず、色んな人とコミュニケーションとる努力をしないとね。


「てか、卓也君も兄弟いるんだ?」

「あ、うん。言ってなかったっけ? おね、姉がいるよ。三年生」

「へー、意外だなぁ」

「え、そう?」

「意外かな? 私からしたら、詩織さんがいるのは当たり前なのはおいといても、何ていうか、甘ったれた感じがいかにも弟って感じする気がするけど」

「ちょっと、なに、甘ったれたって。喧嘩売ってんの?」

「え? いや、ごめん。言葉間違えた。普通に甘えん坊だし」

「あ、甘えん坊じゃないし。普通だし」


 え、なにこの人。普通に僕のことディスってくるのなんなの? 確かに、僕は世間知らずで甘ったれたところがある、と思うよ。まぁ、自分でもさ。でもそれってお姉ちゃんがいるからじゃなくて、かなちゃんに頼り切ってたからで、つまりかなちゃんのせいでもあると思うんだけど。いや、人のせいにするのがまた、甘ったれた性根だって言うならそうかもだけどさぁ。


「だいたい、僕はお姉ちゃんに甘えたりしないし」

「あれ、そうなの?」

「そうだよ。お姉ちゃんとはむしろ喧嘩してるよ」

「え、喧嘩!?」

「えー、それはさすがにもってません? どう見ても仲良し兄弟だったじゃないですか」

「そうそう。頭撫でられてたじゃん」


 市子ちゃんと歩ちゃんが半目で突っ込みを入れてくる。ぐぐ。確かにこの二人が見たのはそういうところだったかもしれないけど。


「そうだよ。詩織さん、たくちゃんのこと甘やかしてくれてるんでしょ?」


 二人はしょうがないとして、かなちゃんの言い方。優しくしてくれてるんでしょ、とかならともかくさぁ。甘やかしてくれてるんでしょ、はないわ。僕を駄目な子とアピールしてなにを得するんだよ。


「そんなことないもん。テレビのチャンネル権とか、お菓子の最後の一個をどっちか食べるかとか、もめるもん」

「ちっさ……え、詩織さん、そんなしょーもないことでたくちゃんと喧嘩してたんだ……」

「け、喧嘩と言ったら、ちょっと大げさだったかな……?」


 勢いで言ってしまったけど、なんかかなちゃんが想定以上にひいていたので思わずフォローする。なんか、僕の方こそ、意味もなくお姉ちゃんの株をさげてしまったかもしれない。ごめん! お姉ちゃん!

 とどうしようと思っていると、智子ちゃんが笑いだした。


「ふはっ、そりゃ、ちっさいけど。でもそんなものだよ。兄弟って。私の家でも、しょっちゅうそういう事で喧嘩してるよ。むしろ、男女の兄弟でもそんなものかって、なんか安心した。そういう喧嘩は、自分で言うのもあれだけどさ、仲がいいからするんだよ」

「そうなの?」

「そうそう。相手に何言っても大丈夫だってわかってるから、しょうもないことで揉めるんだよ。卓也君のとこが仲良しってわかって、なんか、嬉しいな」

「へへ、さすが智子ちゃん、わかってるね」


 そうそう。あくまでこれは、仲がいいから起こるのだ。確かによく揉めて、なんだこいつーって思ったりするけど、お姉ちゃんのことは好きだし、お姉ちゃんが僕を好きなのも絶対だって思うから、遠慮なく言えるんだ。例えばクラスメイトのそんな親しくない人とお菓子食べても、最後の一個は譲り合って喧嘩になんてなりようがないもんね。


「そんなものなんだ?」

「そうだよ」

「てか、みんなは卓也君のお姉さん会ったことあるんだ? どんな人?」

「んー、結構カッコいい人でしたね」

「そだね。バスケ部で、なんか人望ありそうだった」

「そうだね。詩織さんは強くて、何というか、たくちゃんと正反対な感じかな」

「加南子、それわざと言ってんの?」

「え? なにが?」


 智子ちゃんの突っ込みに、かなちゃんは首を傾げたけど、何が、じゃないんだなぁ。頼りになるし、背も高くて格好良くて、性格もスペックも僕と正反対ってことは否定しないけど、二人のカッコよくて人望あるって発言の後に、正反対とか言っちゃダメでしょ。お姉ちゃんを持ち上げる分にはいいけど、僕のこと下げちゃってるよね。

 しかも、さっきからそうだけど、悪意なさそうで、完全に素で言ってるのが。本当に。かなちゃんじゃなかったら怒ってるから。


 怒るよりも呆れてきた僕は、かなちゃんに一応注意しようとして、それより先にお昼休み終了のベルが鳴った。


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