表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜空色の青春  作者: 上永しめじ
第一章「入学と出会い」
45/106

第15話「防衛魔法と白銀の来訪」



 秋から冬へと季節が移り変わり始めた、ある金曜日の午後。空気にはすでに冬の冷たさが混じり始め、中庭の木々も少しずつ葉を落としている。


 キオは友人たちと一緒に、第三実技場へと向かっていた。今日の最後の授業は、ヘルムート・アイゼン先生の防衛魔法だ。


「おい、貴様ら! 集合だ! 」


 実技場に入ると、すでにアイゼン先生が待ち構えていた。赤みがかった茶色の髪と筋肉質な体格が、いつ見ても圧倒的な存在感を放っている。


「本日の授業は防衛魔法の基礎だ!  自分の身を守る魔法障壁について学ぶ! 」


 先生の豪快な声が実技場に響き渡る。生徒たちは一斉に姿勢を正した。


「いいか、貴様ら!  魔法とは攻撃だけじゃない!  自分や仲間を守る術を知らなければ、いざという時に役に立たん! 」


 アイゼン先生は拳を握りしめながら続ける。


「今日は一人ずつ、魔法障壁を張ってもらう。焦るな!  初めてで完璧にできる奴なんていない!  大切なのは諦めずに挑戦する心だ! 」


 その言葉に、生徒たちの緊張が少しだけ和らいだ。


「それでは、ネビウス、リンドール、フォルケ、マージェン、リンネル、モイヤーから始めるぞ! 」


 名前を呼ばれた6人が前に出る。キオは深呼吸をして、心を落ち着かせた。


「まずはネビウス!  やってみろ! 」


 キオは先生の指示に従い、両手を前に掲げる。意識を集中させ、魔力を感じ取る。


『シュバルツ』


 心の中で呼びかけると、すぐに温かい声が返ってきた。


『ああ、落ち着いて。お前ならできる』


 シュバルツの声に励まされながら、キオは魔力を放出した。黒色の光が両手から溢れ出し、目の前に透明な障壁を形成していく。


 それは、まるで星が散りばめられた夜空のような、美しい障壁だった。


「おお、見事だ!  さすがシュバルツ一族だな! 」


 アイゼン先生が満足げに頷く。


「次、リンドール! 」


 オーウェンが一歩前に出る。彼の手のひらから金色の光が溢れ出し、障壁を形成していく。キオのものと同じく、安定した美しい障壁だった。


 しかし、しばらくすると、オーウェンの額に汗が浮かび始めた。息も少し荒くなっている。


「リンドール、無理をするな。十分だ」


 アイゼン先生が気遣うように声をかけると、オーウェンは障壁を解いて、その場に座り込んだ。


「すみません......少し......」


「謝る必要はない。お前は十分にやった」


 先生の優しい言葉に、オーウェンは小さく頷いた。


「次、フォルケ! 」


 エルヴィンが前に出る。彼は少し緊張した様子で、手を前に掲げた。


 最初は光が揺らめいて不安定だったが、徐々に形を整えていく。黄色の光が、やがて透明な障壁へと変わった。


「よし、いい調子だ! 」


 アイゼン先生が励ましの声をかける。


「次、マージェン! 」


 カリナが元気よく前に出た。


「先生、精霊さんたちの力を借りてもいいですか? 」


「む?  精霊の力か......」


 アイゼン先生は少し考えてから、興味深そうに頷いた。


「よし、やってみろ!  どんな障壁になるのか見せてもらおう! 」


「はい! 」


 カリナは嬉しそうに微笑むと、両手を前に掲げた。


「メラメラちゃん、フワフワくん、アクアくん、お願い! 」


 彼女の呼びかけに応えるように、赤、緑、青の小さな妖精が現れ、カリナの周りを飛び回る。そして、三色の光が混ざり合い、虹色のしっかりとした障壁が形成された。


「おおっ! 」


 実技場にいた生徒たちから、思わず感嘆の声が漏れる。


「素晴らしい!  精霊との協力で、これほど美しく力強い障壁を作れるとは! 」


 アイゼン先生も目を輝かせていた。


 エルヴィンとセドリックも感心したように、カリナの障壁を見つめている。


「次、リンネル! 」


 ルイが少し緊張した様子で前に出る。両手を前に掲げ、魔力を集中させようとするが、なかなか光が現れない。


「焦るな、リンネル。深呼吸をして、自分の魔力を感じ取れ」


 アイゼン先生の優しい声に、ルイは深呼吸をする。


 しばらくして、淡い灰色の光が現れ始めた。しかし、障壁は小さく、すぐに消えてしまう。


「うまく......できません......」


 ルイが申し訳なさそうに俯く。


「いや、初めてでここまでできれば十分だ。次の授業で必ずできるようになる」


「はい......ありがとうございます......」


「最後、モイヤー! 」


 セドリックが前に出る。彼も緊張で手が震えている。


 両手を前に掲げ、必死に魔力を集中させる。茶色の小さな光が現れるが、すぐに消えてしまう。


「くっ......もう一度......」


 セドリックは諦めずに何度も挑戦する。しかし、障壁を形成するまでには至らなかった。


「モイヤー、よくやった。諦めずに挑戦する姿勢が素晴らしい」


 アイゼン先生が肩に手を置く。


「はい......ありがとうございます......」


 セドリックは悔しそうだったが、先生の言葉に少しだけ表情が和らいだ。





―――


「よし、今日の授業はここまでだ!  防衛魔法は練習あるのみだ!  諦めずに頑張れ! 」


 アイゼン先生の締めくくりの言葉に、生徒たちが拍手する。


「それと!  お前たちに一つ言っておく! 」


 先生が真剣な表情で続ける。


「魔法の強さは、魔力の量だけで決まるものじゃない!  心の強さ、諦めない気持ち、仲間を思いやる心、そういうものが本当の強さを生み出すんだ! 」


 その言葉に、セドリックやルイの表情が明るくなった。


「いいか!  それぞれに得意不得意はある!  だが、それぞれの良さもある!  それを忘れるな! 」


 アイゼン先生の熱い言葉が、実技場に響き渡った。



最後までお読みいただきありがとうございます。

面白い、続きが気になると思っていただけましたら、

下の☆マークから評価や、ブックマーク(お気に入り登録)をしていただけると、執筆の励みになります!

(お気軽にコメントもいただけたら嬉しいです)

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ